軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第32話 すぐに治してあげるね

逃げ出したウェアウルフは、アークが放った青魔法によって全滅した。

「貴様のことだからかなり鍛えたのだろうとは思っていたが……さすがにやり過ぎではないか?」

「そうか?」

今の戦いを見てもまだまだ詰めが甘いのは明らかだ。

もう少しで逃がしてしまうところだったしな。

しかしアークがしっかりフォローしたので及第点だろう。

何にでも積極的なレイラが猪突猛進タイプなのでミスが多いのに対し、アークは消極的だが冷静沈着で状況判断が的確だ。

二人合わせると良いコンビと言えるかもしれない。

レイラとアークが戻ってくる。

レイラは少し悔しそうだ。

さらにそこへ先ほど逃げていた人たちがやってきた。

「た、助かりました」

「まさかあの数のウェアウルフを倒してしまうとは……」

「私には子供が倒したように見えたんだが……いや、さすがにそんなはずないか」

「それにしてもこの船は一体……?」

話を聞いてみると、彼らは馬車での移動中にウェアウルフの群れに襲われたのだという。

護衛が戦ってくれている間に逃げ出したらしいが、追いつかれそうになっていたところにちょうど俺たちが通りかかったというわけだ。

その馬車のところに戻ると、ウェアウルフの死体が幾つか転がっている中に、何人か傷を負って倒れていた。

「うぅ……」

「おい、まだ生きている者もいるぞ!」

「だがこの傷では……」

「うわっ、痛そうっ!」

何にでも興味を示すレイラが、近づいていって顔を顰めた。

「あ、こら、お嬢ちゃんは見ない方がいい」

「すぐに治してあげるね!」

「え?」

レイラが回復魔法を使った。

万一、治癒の加護を失っても自力で傷を治せるように俺が教えておいたのだ。

実際に人に対して使うのは初めてかもしれない。

「な、治った……?」

「まさかお嬢ちゃん、白魔法を使えるのかい……?」

「でもまだ祝福を受けるような歳じゃないだろ……?」

どうやら上手くいったようだ。

それから彼女は他の生存者も治していくが、

「うー、この人、治したのに起きないよー」

「お嬢ちゃんのせいじゃない。死んでしまったら生き返らせることはできないんだ」

「いや、そうでもないぞ」

「パパ!」

俺はすでに事切れた人の傍にしゃがみ込む。

「まだ死んで間もないな。これなら生き返らせることができる」

「生き返らせるって……そんなこと不可能だっ」

「まぁ見ていな」

鮮烈な光が弾けた。

そしてそれが収まったときには、止まっていたはずの心臓が動き出している。

「お、俺は一体……?」

目を覚まし、不思議そうに周りを見回す。

どうやら成功したようだ。

「なっ……バカな……」

「まさか本当に生き返ったのか!?」

名づけるなら蘇生魔法といったところだろうか。

一度肉体から離れてしまった魂を呼び戻し、肉体と再び融合させる魔法である。

黒魔法の理論だけではどんなに頑張ってもアンデッドと化してしまうのだが、これに白魔法の理論を応用することによって、完全な蘇生を可能にしたのだ。

ただしあまりに肉体から長く離れてしまうと魂が変異し、生き返らせても人格がおかしくなってしまう。

今回は死んでからまだ時間が経っていなかったので上手くいったのだ。

「パパすごーい!」

レイラがぎゅっと抱き着いてくる。

「よしよし、レイラはいつも可愛いな」

「えへへー」

それから俺はすべての人を生き返らせることに成功した。

ただ、ウェアウルフに噛み殺された馬に関しては諦めるしかなかった。

人と違って動物の魂は変異が早いため、生き返らせたところで元のように馬車を引くことはできないだろうからだ。

「ところでこの一団はどこに向かっていたんだ?」

「剣の都市です。あそこに避難するために……」

「剣の都市?」

どうやら俺たちと同じ目的地らしい。

しかし避難とは一体どういうことだろうか。

「もしかしてご存じないのですか? 魔王が復活したという噂を……」

「魔王?」

「は、はい。すでに西方では幾つかの国や都市が魔王の手中に落ちてしまったと聞きますし、この辺りでも最近になって魔物が狂暴化しているんです。それで剣の都市に行けば安全だろうと考え、移住を試みる者が多く……」

初めて聞いた話だな。

辺境の町だから情報が伝わってくるのも遅いのだろう。

それにしても魔王か。

本当に復活したというなら大変なことだ。

邪神によってこの世界へ召喚されたとされる魔王と、その配下である魔族たちによって、人間世界が脅かされていた暗黒の時代。

女神様に選ばれた七人の英雄たちによって魔王が倒されるまで、幾つもの国や都市が滅ぼされ、多くの人間が犠牲になったという。

ただし諸説あり。

数百年も昔の話だし、伝承が色々と異なっているからだ。

「ともかく、目的地が剣の都市だというならちょうどいいな。うちの船で引いていってやろうか?」

「え? そんなことができるのですか?」

「ああ」

「四台もありますが……」

「問題ない」

馬を失った四台の馬車を縦一列に連結させる。

それからハーネスを船に繋いだ。

「よし、全員乗ったな? じゃあ出発だ」

全部で三十人近く乗っている馬車を引いているためかなり重たいが、それでもゆっくりと加速していく。

「ほ、本当に動いたぞ!?」

「あの船は何なんだ?」

「まさか神話に登場する魔法の船なのか!?」

いや、普通に俺が作った船だぞ。

「貴様の普通は普通じゃない」

ライナが呆れたような顔をしていた。