軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第41話 勝つことは不可能です

『大波乱の挑戦者決定トーナメントもついに決勝戦だぁぁぁっ! 果たしてキングテイマーへの挑戦権を勝ち取るのはどちらの調教師なのかぁぁぁっ!?』

俺は五体の魔物を引き連れフィールドへと入っていく。

『無名の初出場ながら、ついにこの決勝まで来てしまったぞ! S級ギルド〝モンスターランド〟所属、アレル調教師の入場だぁぁぁっ!』

「アーレールッ!」

「アーレールッ!」

「アーレールッ!」

『凄まじいアレルコール! たった数試合で完全に魔物好きたちの心を掴んでしまったようだ! それもそのはず! なんとこれまでのすべての試合で、たった一体の魔物で制するというとんでもない力を見せつけてきた! そしてそれを可能にしたのが、三体の神話級の魔物たちだぁぁぁっ!』

随分な盛り上がりだな。

観客もこれまでの試合で最も多いそうで、観客席がびっしりと埋め尽くされている。

『昨年、惜しくもキングテイマーに屈したが、今年こそはとリベンジを狙う! S級ギルド〝ジハード〟所属! オーセン調教師っっっ! ここまで危なげない戦いで下馬評通りに勝ち上がってきた世界屈指の調教師は、この最強新人の快進撃を止めることができるのかっ!?』

そんな前口上を受けて姿を見せたのは、人のよさそうな中年男だった。

しかしなぜか魔物を引き連れていない。

「どうも初めまして。ご紹介に預かりましたオーセンです」

これから試合をするというのに、屈託のない笑みを浮かべて挨拶してくる。

「俺はアレルだ」

「いやいや、こうして近くで見ると、やはりまだまだお若い。そんな歳で決勝に残るなんて。私なんてここまでくるのに何年かかったことか……。って、貴方はもはやそんな次元ではありませんね」

「ふむ」

「まさか神話級の魔物の調教に成功する人間が現れるなんて、思ってもいませんでしたよ。それも三体も。私も以前、挑戦したことがあるんですけどね、引き連れていた護衛や魔物たち諸共壊滅しかけて這う這うの体で逃げ帰った次第で。だからこそ神話級を従えることがいかに凄いことか、誰よりも理解しているんです」

どうやら話好きらしい。

訊いてもいないのに一方的に色々としゃべってくる。

『こ、これは一体どういうことだ? オーセン調教師、魔物を一体も連れていないぞ? それどころかアレル調教師と仲良くおしゃべりを始めてしまった!』

「おい、なんで魔物がいねぇんだ?」

「早く試合を始めろ!」

観客がざわめき出す。

「正直なところ神話級の魔物が三体も相手では、到底勝ち目なんてありませんよ」

そう言って、オーセンはハハハと笑う。

「まさか棄権するつもりかっ?」

「ふざけんな! ちゃんと諦めずに戦え!」

あちこちから罵声が飛んできた。

「ええ、勝つことは不可能です。……先日までの私たちであれば」

そのときだった。

ドラゴンや巨人などの大型の魔物でも通れるよう広く設けられた入場口。

それがぱんぱんになってしまうくらい大きなソレが、奥から姿を現した。

「スライム?」

どうやらスライムのようだった。

ぶよぶよとした粘土のような不定形の身体。

だが表面は金属めいた銀の光沢があって、普通のスライムではなさそうだ。

しかも巨大だ。

どうやら入場口を通る際は身体を前後に伸ばしていたようで、実際には先日の五十メートル級の巨人を遥かに凌駕する大きさだった。

恐らく直径は百メートルに迫るだろう。

「御覧の通り、ただのスライムではありません。全身が特殊な金属でできているキングメタルスライムという希少種です」

金属なのに自在に形を変えることができるらしい。

それでいてアダマンタイト級の硬さを誇るとか。

『き、キングメタルスライム!? と言えば、言わずと知れたオーセン調教師の虎の子だがっ……この大きさは一体どういうことだっ? つい先日の試合に出ていたが、そのときはせいぜい十メートルほどの大きさだったはず……っ? それに、なぜ一体しかいないのかっ……?』

そこでオーセンが見せたのは、先ほどまでとは打って変わって、澱んだ笑みだった。

「ふふふ……一体しかいない? そんなことありませんよ。 こ(・) の(・) 子(・) の(・) 中(・) に(・) は(・) 私がこれまで手塩にかけて育ててきた沢山の魔物たちがいます」

『ま、まさか……』

オーセンは突然、気でも触れたように叫び始めた。

「ええ! そうです! このままでは神話級に勝つことなど不可能! そう思った私は一か八かの賭けに出たのですよ! 従えていた最高峰の魔物たちをこの子に吸収させてみれば、神話級に匹敵する魔物が誕生するのではないか、と!」

会場中が驚愕にどよめく。

「な、なんて非道なっ……」

「貴様に魔物への愛は無いのか!」

そんな罵声が聞こえてくるが、別に大した問題ではないだろう。

普通、魔物というのは討伐する対象だしな。

それに魔物料理だってあるくらいだ。

むしろ彼の勝利への執念に俺は感心した。

「やはり上質な〝餌〟を与えれば、それだけ成長できるようですねぇっ! 気づいたらこんなにも大きくなっていたのです! もはやこれは完全に別種! 進化と言っても過言ではないでしょう! キングメタルスライムを超えたエンペラーメタルスライム! それこそがこのスライムです! 神話級の魔物を打ち倒し、新たな神話を作り出してみせましょう!」