軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27 ヴァル視点①

予定通り孤児院を辞去し、シンディ様を馬車に乗せて王宮に戻る道すがら、俺はシンディ様に気分転換してもらいたいと、少し寄り道をする事にした。

王宮までの道のりは長い。

しばらくすると、馬車の中でシンディ様はウトウトされているようだ。

俺は馬車に横付けになる形で、馬に騎乗しながらその様子をチラリと確認する。

日頃からお疲れのご様子なのに、それでも空いた時間に孤児院を訪問するとは、やはりシンディ様は 以(・) 前(・) と変わらない。

「シンディ様、着きました」

目的地に着き、馬車越しにシンディ様に声をかける。

同乗していた侍女に、軽く揺り起こされてシンディ様は目が覚めたようだ。

「何処に着いたの?」

その疑問には答えず、エスコートして馬車を降りてもらう。

降りるとすぐ目の前に広がる大きな海を見て、シンディ様は目を見開いた。

「これは海? 実物を見るのは初めてよ! こんなに広くて大きいだなんて!」

シンディ様はどうやら海を見るのは初めてだったらしい。

良かった。この場所を選んだ甲斐があった。

俺は車椅子に乗ったシンディ様を押しながら、海がよく見える場所に移動した。

「シンディ様、あそこ。港が見えると思います。あそこを含め、ここの領地はシンディ様の物です。そしていまはエドワール侯爵がシンディ様の代理で管理をされております」

「あ、そう言えば陛下より結婚のお祝いを兼ねて、結婚式の時のサイモン様の非礼のお詫びとして、王家の管轄であった領地を、一つ私に譲ると聞いたわ。そのまま管理は父がすると……ここがそうなのね」

シンディ様は目を細めながら、そう呟いた。

結婚式の時の事、王太子とあの女との関係をエドワール侯爵は、上手く利用したようだ。

以前から流通経路に海路を開通したいと考えていた侯爵は、名義こそシンディ様だが、代理として自由に使える権利を手に入れた事に満足している事だろう。

しかし、あくまでも代理なのだ。実際の所有者であるシンディ様が、その領地の事を全く知らないとはどうかと思い、いい機会なので、帰路に少し遠回りしてこの領地を通ることにした。

全くシンディ様は人が良すぎる。

今までの 回(・) 帰(・) で、何度侯爵夫妻から見捨てられきたことか……

きっとシンディ様も覚えているだろうに、それでも侯爵夫妻を切ることが出来ないのは、本来持つシンディ様の優しさなのだろう。

私はシンディ様が今まで五回、回帰を繰り返して来た事を知っている。

そして今は六回目の回帰だ。

何故私がそれを知っているかというと、その回帰の力こそ、本来私の持つ能力だから。

正確には【時戻し】の力。

この力が私を聖騎士へと導いた力だった。

女神様からのお告げを受けた教皇様が、私が生まれたと同時に親元から引き取り、私を教会で育てた。

他の聖騎士メンバーも同じ。

その時代の教皇様に見いだされ、赤子や幼少期の頃から親元より引き離され、教会で過ごす。

なので、聖騎士メンバーとは幼い頃から一緒に育った兄弟同然だった。

皆、それぞれ女神様からの 恩恵(ギフト) を受け、色んな能力を持っていた。

幼い頃はそんな事も分からず、ただ色んな訓練を強いられながらも、それなりに楽しく暮らしていたように思う。

しかし、歳を重ねると共に色々な能力に見合った頭角を現すようになり、個々の能力に落差が出始めた。

そんな中、私の能力は一向に開花せず、お告げは間違いであったのではないかと教会内部でも囁かれ始めた。

仲間たちは気にするなと言ってくれる者が何人もいたが、それでも中には露骨に疑いの眼差しを向ける者もいた。

何のために赤子の時に親元から引き離され、ここで訓練しているのか。

ここは自分の居場所ではないのではないか。

そんな思いを日々募らせていく中、私はシンディ様と出会ったのだ。

教会に隣接していた孤児院に、王太子妃様として慰問に来ていたシンディ様を初めて見た時は、特に気にしていなかった。

しかし、聖騎士の仕事の一つとして、色んな孤児院を見て回る際、度々色んな孤児院に慰問しているシンディ様を何度も見かけた。そしてその内に少しずつ気になる存在となった。

慈善活動に熱心な貴族はあまり居ない。そんな中、王族である王太子妃が熱心に活動をしている事により、影響を受ける貴族も多かった。しかし、そんな王太子妃を妬んでか、偽善者だという噂が徐々に広まっていった。

そんな噂がある中でも、毅然とした態度を取り続けている王太子妃の力になりたいと、何度もお会いするうちに、そう考えるようになった。

その頃には、能力の開花しない自分は聖騎士を辞す決心を固めており、王宮騎士となる事を希望していた。

聖騎士を辞す許可を得て、改めて王宮騎士として配属された私は、配属先の希望を聞かれた時に王太子妃様の騎士を志願したのだった。