軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17 駆け引き②

リリアは、自室の中でウロウロと落ち着きなく歩き回っていた。

今までサイモンに手紙を出すと、すぐに返事が返ってきて、落ち合う場所が書かれていたのだが、今回に限っては全然返事が届かない。

メイドに、本当に手紙を出したのか問うたが、ちゃんと出したとの返答にて、もう暫く返事を待とうと思ったのだが、もう限界だった。

「もう一度手紙を書かないと。

早く相談しないと、もう時間がないのよ!」

リリアはサイモンに、会って早く相談がしたいとの内容を書いた手紙を、またメイド経由で出す事にした。

「確実に手紙を届けてね」

メイドにそう告げて、手紙を渡す。

しっかりと頷いたメイドは手紙を受け取り、届けに行った。

早くサイモン様に会わないと。

近日中にザルトヘル伯爵が顔合わせを兼ねて、我が家に訪問する予定となっている。

それまでに何がなんでも現状を回避しなくては。

リリアは、この現状に追い詰めたシンディを、より一層憎むようになっていた。

「あの女が面会を断るから!

黙って言う事を聞いていればいいのに、逆らうだなんて何様のつもりなのかしら!?

あの勘違い女に思い知らせなければ気が済まないわ!

ああ、早くサイモン様からの返事が届かないかしら」

そう言って、またリリアは自室内をグルグルと歩き回っていた。

****

「王太子妃殿下、これを」

ヴァルから渡された手紙を見て、私はクスリと笑った。

「あら。またなのね。

そういえば、この前の手紙の返答はなかったのかしら?」

私の質問にヴァルは頷く。

「最近、あの方はご自分の仕事に追われているご様子で、この前の手紙の返事を書く余裕もなかったようです。

今回もそのままこの手紙をお渡しするのですか?」

そう言って、ヴァルは私に渡してきた手紙に視線を送った。

私の手の中にあるのは、リリアがサイモン様宛に出した手紙だ。

リリアは学生時代より、あるルートを使って、内密にサイモン様と手紙のやり取りをしていたようだ。

しかし、この前私がヴァルに、サイモン様とリリアの浮気の証拠集めを依頼した際に、二人の連絡手段も手に入れてきた。

それによって、前回リリアがサイモン様宛に出した手紙を入手し、内容を確認してから、その手紙を複写したものをサイモン様に渡るようにしたのだ。

リリアからの本物の手紙は証拠として私が押さえてある。今回の手紙も同様にして、証拠として確保しておこう。

「ええ、内容はそのままに、複写したものを出してちょうだい。

そうね、サイモン様からの返事も手に入れたいから、返事を書けるくらいの時間の余裕は与えてあげましょうか」

私はそう言ってにっこりと微笑む。

ヴァルは心得たとばかりに、すぐにリリアの手紙の複写してサイモン様に渡るようにしてくれた。

****

「何時になったら、この書類の山は無くなるんだ!」

サイモンは今までにないくらいの疲労度で、イライラがピークに達していた。

腹立たしげに、そばに居る文官を睨みつけ、荒々しく書類を投げる。

そうは言っても、ちゃんと睡眠時間と3食しっかりと食べる時間は確保している。

ただ、自由になる時間を削減された事によって、不満を周りにぶちまけていたのだった。

そこに、侍従が手紙を持ってきた。

「王太子殿下、リー商会より手紙が届いております」

「あっ! ああ、そうか。わかった。

急ぎの手紙だ。お前たちは暫く出ていろ」

文官達を執務室から追い出し、サイモンは急いで手紙を読む。

そこにはリリアから、前と同じように早く助けて欲しいと訴えた内容と、早く会いたいという事が書かれてあった。

「まずいな。返事を出すのを忘れていた。しかし、今の状態では会う時間が取れないし……

今更仕事を他に回して、他の王子たちに気付かれたら、弱みを握られてしまう。陛下にバレる訳にはいかないんだ」

リリアの手紙を読みながら、サイモンは頭を抱えていた。

側妃腹の王子は何もサイモンだけではない。王子は自分を含めて四人いる。

王妃は残念ながら子宝に恵まれず、その結果、側妃を娶る事となった陛下だが、陛下は王妃を愛しており、なかなか側妃を娶りたがらずに選ばなかった為、候補者であった三人ともを側妃として召し上げる事になったそうだ。

王妃は、幼い頃に母を亡くしたサイモンを何かと気にかけてくれた。

そして第一王子でもあったサイモンは、エドワール侯爵を後ろ盾にして王太子となったが、三つ年下の第二王子を始めとした他二名も、王太子の座を虎視眈々と狙っているのだ。

足をすくわれるような真似は出来ない。

仕事が一段落着くまで、時間が取れそうにないが、そうしているとリリアがザルトヘル伯爵の後妻として嫁がされてしまうのではと、不安で仕方ない。

このままでは、思い描いていた未来が手に入らないと思うが、現状を打破する手が思い浮かばす八方塞がりだ。

「やはりここはシンディに仕事を回すしか……」

そう考えていた時、侍従よりそのシンディが訪ねてきたとの報告があった。