軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9 サイモンの突撃訪問

「さて、サイモン様。お話とは何でございましょう?」

私が質問すると、サイモン様は待ってましたとばかりに口を開いた。

「君が階段から落ちてしまった時に、助けられなかった事は本当にすまないと思っている。

まさか君まで階段から落ちそうになっていただなんて気づかなかったんだ。

リリア嬢が階段から倒れてきたのを目にして、慌てて支えただけなんだよ。

君とリリア嬢は親友だろ? だから今回の事は私もとても遺憾に思ってるんだ。

君がもし噂を鵜呑みして、私とリリア嬢との仲を疑っているのなら、早く真実を知ってほしくて。

ようやく君に伝えられてホッとしたよ。君は私を信じてくれるよね?」

にっこりと微笑むと、私の手を取って握りしめながらそんな事をほざいてくる。

私もにっこりと微笑みながら、やんわりとその手を押しのけた。

「噂? わたくしはずっと寝込んでいたので、あまり噂を耳にしておりませんの。どういった噂なのでしょう?」

「いや、知らないんならそれでいいんだ。私はあくまで善意でリリア嬢を助けただけに過ぎない事を君に知っていてもらえばそれでいい。君は私を信じてくれるだろう?」

“信じて”と二回目。

そんなに信じろと言われても、無理に決まっているのに。

私はその言葉を敢えて無視したまま会話を続ける。

「今日はその事を伝えに来られましたの?」

そう聞く私に、サイモン様は少し言い淀んでから、言葉を発した。

「いや……それもあるけど、実は今回の事で、友人である君をわざと階段から落とそうとしたという、あらぬ疑いがリリア嬢に掛けられているんだ。

でも、君なら友人であるリリア嬢がそんな事をするはずがないって分かるだろう?

リリア嬢は今、貴族牢に入れられて尋問されていて、とても疲弊しているんだよ。だから、君からリリア嬢がそんな事をするはずないって証言してほしいんだ。そうすればリリア嬢への嫌疑も晴れるだろう?」

そう言うサイモン様に、過去の記憶のない私なら、多少の複雑な気持ちはあってもすぐにサイモン様の言われるがままに証言してリリアを助けただろう。

でも、今は違う。

リリアに復讐する気持ちはあれど、助けたい気持ちなんてあるわけがない。

そんな気持ちを表に出さないように気を付けながら、困惑表情でサイモン様を見た。

「わたくし、あの時は何が何だか分からないままに階段から落ちましたのよ? リリア様がわざとか、わざとでは無いかだなんて、わたくしには判断出来ませんわ。

ただ……後ろから急に突き飛ばされて体勢が崩れた事と、エスコートしてくれていたサイモン様が“リリア”と叫んで、わたくしの手を振り払った事だけは覚えております」

「なっ……!」

私の発言にサイモン様は目を見開いて呆然としている。

まさか私にこんな事を言われるとは思ってもみなかったのだろう。

「あぁ、この事は調査官の方にもお話し致しましたのよ?

あの 事(・) 件(・) の調査に当たってらっしゃる方が先日来られて、それはわたくしの体調を気にされながら、申し訳なさそうに聞いてこられたので、こちらとしても調べて下さっているのにベッド上からの証言で申し訳ないって思いましたもの」

続けてそう話す私に、サイモン様は更に顔色が悪くなる。

証拠がなく、王太子が庇っているため、このままではうやむやになりそうだと聞いた私は、調査官が私の証言待ちをしている事を知って、身体を起こせるようになったと同時に、わざわざ王太子妃室まで出向いてもらったのだ。

王太子妃室に入るなどと調査官はとても恐縮していたが、リリアとサイモン様への心象が悪くなってくれるなら、そんな些末な事、どうでもよかった。

「き、君は調査官をこの部屋に通したのか!? 私の面会は断っていたくせに!」

怒るサイモン様に、平然と私は頷く。

「わたくしのせいで調査が進まないのでしたら申し訳ないと思いましたの。事件の究明がわたくしにとっては最優先事項ですもの」

そう言う私をサイモン様は憎々しげに睨んできた。

「 お(・) 前(・) はリリアの事はどうでもいいのか!? なんて冷たい奴だ! 可哀想だとは思わないのか!?」

サイモン様は立ち上がって、私に掴みかかるような勢いで私に叫ぶ。

いち早くヴァルが私を護るように、私とサイモン様の間に割って入ってきた。

「ありがとう、ヴァル。わたくしは大丈夫よ」

そう言ってヴァルを下がらせ、改めてサイモン様に向き直る。

「貴方様は一体、誰の夫なのでしょうね? 先程からわたくしの事を睨みながら責めてばかり。これではまるで、結婚したばかりの妻がリリアで、その妻の仇の憎い女、この場合はわたくしですが、その憎い女と対峙しているように感じますわね?

わたくしが 貴(・) 方(・) の(・) 妻(・) であり、被害者ですのにね?」

その私の発言に、ハッとしたサイモン様は、慌てて取り繕う。

「い、いや、すまない。もちろんシンディの事を一番心配しているよ。しかし、疑われているリリア嬢がとても気の毒に感じてしまったんだ。リリア嬢は君の大切な友人だと知っているからね。

シンディ、済まなかった。今日は疲れただろう? また落ち着いたらゆっくり話そう。今日はこれで失礼するよ」

そう言ってサイモン様は部屋を出ていこうとする際、

「お前ももう部屋の外に出ろ。王太子妃の部屋に留まる事は許さん!」

と、ヴァルに当たっている。

ヴァルは私に一礼すると、サイモン様が出てから、そのまま後をついて部屋を出た。

「さぁ、王太子妃様。お疲れでございましょう? しばらくお休み下さいませ」

ジュリア達に促され、私はベッドで横になる。

思ったより疲れていた私は、そのまま眠りについてしまった。