軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第334話:楽しみと、クリスマスの小さな箱

豪華な手作りディナーとケーキでお腹を限界まで満たした俺たちは、それぞれ順番にお風呂に入り、さっぱりとした体で再びリビングのソファへと戻ってきていた。

暖房がしっかりと効いた部屋の中には、俺と凛のシャンプーの匂いが混ざり合って、ふわりと甘く漂っている。

「……んんぅ……そこ、すっごく気持ちいい……」

現在、凛はソファの上で横になり、俺の太ももの上に両足を投げ出した状態になっていた。

俺はボディクリームを手のひらで温め、彼女の細くて白いふくらはぎを、下から上へとなぞるようにゆっくりと揉みほぐしている。

いつもなら背中や肩のストレッチも入念に行うのだが、今日は足だけの特別メニューだ。

「痛くないか? 力加減、強すぎたら言ってくれよ」

「ううん、全然。……朝陽くんの手、あったかくて……すっごく、ちょうどいい」

トロンとした目で俺を見ながら、凛は完全に脱力しきった声を漏らす。

「明日はさ、結構たくさん歩くかもしれないだろ? だから、今日は足の疲労回復メインにしとこうと思って」

「そっか……。んふふ、……極楽……」

ふくらはぎから足首にかけて、親指でゆっくりとツボを押していく。

その度に凛は「んぅ……っ」と可愛らしい声を漏らし、クッションに顔を埋めてふにゃふにゃととろけていった。

マッサージを終え、足を拭き取った後。

俺たちは午後見ていたDVDの続きを小さな音量で流しながら、一つの毛布にくるまってソファでぴったりと寄り添っていた。

画面の中では登場人物たちが何やらシリアスな会話をしているが、俺たちの頭にはもうほとんど内容が入ってきていない。

ただ、隣り合って座るこの密着感と、静かに流れる時間が心地よかった。

ふと、俺の肩にコツンと頭を乗せていた凛が、上目遣いでこちらを見上げてきた。

「そういえば、朝陽くん」

「ん?」

「明日って、どうするんだっけ? 今日みたいに、お家でずっとゆっくりするの?」

凛の問いかけに、俺は少しだけ姿勢を正した。

実を言うと、明日の予定はずっと前から俺の中で決めていたのだ。

「……実はさ、考えてたところがあって」

「うん」

「クリスマスっていう、一つの節目だろ。だから……また、イルミネーション見に行きたいなって思ってるんだ。凛は、いいか?」

少し照れくささを誤魔化すように、俺はわざとらしく視線をテレビの画面へと逸らしながら言った。

すると、隣からパァッと花が咲くような、明るい気配が伝わってくる。

「——うんっ! 行きたい! 私も、また行きたいなって思ってたの!」

「ほんとか? よかった。ゆっくり歩きながら見よう、それから夜は外でご飯食べて帰ってくるかんじな。」

「えへへ……すっごく楽しみ。朝陽くんと見るクリスマスのイルミネーション、絶対に綺麗だもん」

凛は嬉しそうに俺の腕にギュッと抱きつき、そのまま頬をすりすりとしてきた。

明日の夜のイルミネーション。

それが俺たちにとって、どれだけ特別な意味を持つ帰り道になるのか。

この時の凜は、まだ知らない。

映画のエンディングを見届け、歯磨きを済ませた俺たちは、寝室のベッドへと潜り込んだ。

部屋の電気を消し、小さな間接照明だけの薄暗い空間。

分厚い羽毛布団の中は、二人分の体温ですでにぽかぽかと暖かくなっていた。

俺たちはごく自然に、布団の中でお互いの手を指先までしっかりと絡ませ合った。

「……なんか、ドキドキして眠れないかも」

暗闇の中、凛が小さな声でぽつりと呟いた。

「明日のイルミネーションが楽しみなのか?」

「それもあるけど……明日の朝の、プレゼント」

「ああ」

「朝陽くんが私に何を用意してくれたのかなって考えたら、ワクワクしちゃって。……ねえ、ちょっとだけヒント教えてよ」

甘えるように繋いだ手をキュッと握ってくる凛。

その期待に満ちた声が可愛くて、俺は思わず小さく吹き出した。

「だーめ。それは明日、目が覚めてからのお楽しみだ」

「えーっ、けち。……でも、朝陽くんがくれる物なら何でも楽しみ。」

「おっ、ハードル上げてくるな」

クスクスと笑い合う声が、静かな部屋に溶けていく。

クリスマス・イブの夜。

大好きな人がすぐ隣にいて、手を繋いで、明日の話をして笑い合える。

幸せな時間だ。

「……眠れるまで、こうして手、繋いでてやるから」

「うん……。朝陽くん、大好き」

「俺もだよ。……おやすみ、凛」

「おやすみ、朝陽くん……」

繋いだ手から伝わる温もりと、規則正しい彼女の寝息に包まれながら。

俺もやがて、深く穏やかな眠りへと落ちていった。

***

——チュンチュン、チュン。

冬の澄み切った朝の空気を切り裂くように、小鳥のさえずりが聞こえる。

カーテンの隙間から差し込む眩しい朝日で、俺はゆっくりと目を覚ました。

12月25日。クリスマス、当日の朝だ。

「ん……んん……」

隣を見ると、凛がまだ半分夢の中にいるような顔で、俺の腕にしがみついたまま気持ちよさそうに眠っている。

俺はそっと体を起こし、ベッドの脇のサイドテーブルの引き出しから『それ』を取り出した。

「凛。朝だぞ」

軽く肩を揺すると、凛は「んぅ……」と小さく呻きながら、ゆっくりと目を開けた。

「……あさひ、くん……? おはよぉ……」

「おはよう。メリークリスマス、凛」

「ん……メリークリスマス……」

寝ぼけ眼でふにゃりと笑う凛。

俺は深呼吸を一つして、右手に持っていた小さな四角い箱を、凛の目の前にそっと差し出した。

「これ。俺からの、クリスマスプレゼント」

「……えっ?」

凛の瞳から、一瞬で睡魔が吹き飛んだ。

パチクリと何度も瞬きをして、俺の顔と、差し出された小さな箱を交互に見つめる。

「開けてみてくれ」

「う、うん……っ!」

ベッドの上に起き上がり、少し震える手で、凛はその小さな箱のリボンに手をかけた。