軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第309話:昼休みの中庭と、友人のアドバイス

翌朝、火曜日。

俺は朝一番で修正済みの動画をギガ便にアップし、しょうさんたちのグループLINEへ『お手すきの時にご確認よろしくお願いします』と送信してから、凛と一緒に学校へ向かった。

そして、昼休み。

いつものように、中庭の隅にあるベンチで、俺、凛、大輝、寺田さん、佐藤さんの五人で集まってお弁当を食べていた時のことだ。

俺はお茶を一口飲んでから、少しだけ居住まいを正した。

「みんな、ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど」

「ん? どうした朝陽、改まって」

大輝がお弁当の唐揚げを咥えたまま、不思議そうにこちらを見る。

俺は凛と一瞬だけ視線を交わし、コクリと頷き合ってから口を開いた。

「実は……俺、一人暮らしの人向けの料理動画を作っててさ。もうすぐ、動画投稿サイトにアップしようと思ってるんだ」

「「ええっ!?」」

俺のカミングアウトに、大輝と寺田さんが目を丸くして驚きの声を上げた。

「マジで!? 動画投稿すんの!? すげぇじゃん朝陽!」

「朝陽くんのご飯、すっごく美味しいし手際もいいから、絶対見やすい動画になると思う! 投稿したら絶対見るね!」

二人は驚きつつも、すぐに笑顔になって背中を押してくれた。気心知れた友人たちの反応に、俺はホッと胸を撫で下ろす。

「サンキュ。でも、まだ始めたばっかりで、これからどうなるかわからないけどな」

「ねえねえ、どんな動画なの? 動画の時間ってどれくらい?」

寺田さんがお弁当箱を置いて、身を乗り出して聞いてくる。

「時間はだいたい10分くらいかな。自炊をしたことがない初心者向けに、スーパーで安く買える食材を使って、フライパン一つで簡単にできる料理とかを紹介していくつもりなんだ」

「へえー! すごい、本格的じゃん! 記念すべき一本目の料理は何にしたの?」

「最初はやっぱり、ご飯が進む大定番の『豚の生姜焼き』だよ。お肉を固くしないで柔らかく焼くコツとか、タレの黄金比とかを丁寧に解説してる」

「うわ、絶対美味いやつだ……! 俺、大学入って一人暮らし始めたら、絶対に朝陽の動画見て自炊するわ!」

大輝が興奮気味に言うと、隣に座っていた凛がえっへんと少し得意げに胸を張った。

「朝陽くんの動画、すっごく分かりやすくて、見てるだけでお腹が空いてくるくらいの出来だったよ」

「冬月さんが言うなら間違いないね! ますます楽しみになってきた!」

みんながそう言ってワイワイと盛り上がってくれている中。

いつも冷静で情報に敏い佐藤さんが、少し真剣な顔つきになって、俺に視線を向けてきた。

「料理動画の投稿、すごくいいと思う。内容も初心者向けで需要がありそうだしね」

「ありがとう、佐藤さん」

「でも……瀬戸。本編の動画だけじゃなくて『ショート動画』は出さないの?」

「……ショート動画?」

俺が聞き返すと、佐藤さんは手元のスマホを軽く振って見せた。

「今の時代、最初から10分もある長い動画をじっくり見てくれる新規の人って少ないんだよ。だから、客寄せの意味も込めてショート動画版も出した方がいいと思う。本編のハイライトや、料理の完成シーンとか、サクッと見られる部分を1分以内に切り抜いて出すの。それがおすすめに流れてバズれば、本編への強力な導線になるはずだよ」

「あ……」

佐藤さんの的確すぎる指摘に、俺はハッと目を見開いた。

「ショート動画か……。新規の人に見てもらうためには、確かにそういう入り口が絶対に必要だよな……」

「でしょ? 瀬戸の料理の手際の良さなら、ショートのテンポにすごく合うと思うな」

佐藤さんの言葉を聞いて、俺は慌てて自分のスマホを取り出し、しょうさんたちとのLINEのやり取りを見返した。

『——このフル動画はこれでバッチリ! あと、動画サイトに投稿するなら、客寄せの意味を込めてショート動画版も出した方がいいよ。今ある動画の大事なところだけを切って、ダイジェストっぽく作ってみたらいいと思う!』

「……すげぇ。二人とも、全く同じこと言ってる」

俺が呟くと、隣でLINEの画面を覗き込んでいた凛も、「ほんとだ……!」と目を丸くして驚いていた。

プロとして最前線で活躍するクリエイターの翔さんたちと、一人の視聴者として鋭い感覚を持つ佐藤さん。

その両方から、全く同じ「ショート動画の重要性」をアドバイスされたのだ。

これは間違いなく、やるべきことだ。

俺は感心したように佐藤さんを見つめ、そして隣に座る凛へと視線を移した。凛も「なるほど……!」というように、真剣な顔でコクコクと頷いている。

ようやく第一弾が完成したと思った矢先だったが、落ち込むどころか、不思議とやる気が湧いてきた。

「ありがとう、佐藤さん。プロの人にも全く同じこと言われたよ」

「えっ、プロの人? そっか、じゃあ私の感覚も間違ってなかったんだね」

「ああ。家に帰ったら、さっそくショート動画の方も作ってみようと思う」

俺は力強く頷き、新たな作業に向けて決意を新たにした。

動画を一人でも多くの人に見てもらうために、やれることは全部やってやる。

昼休みを終え、午後からの授業に向かう足取りは、新しい挑戦への期待で少しだけ軽くなっていた。