軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第247話:焼肉パーティー開幕

『ピンポーーン!』

十七時ちょうど。

チャイムの音を聞いて玄関のドアを開けると、そこには私服姿の大輝、佐藤さん、寺田さんの三人が笑顔で立っていた。

「おっす! 朝陽、お邪魔するぜ!」

「いらっしゃい! さあ入って入って!」

凛が明るい声で靴箱の上を指し示し、三人を中へと招き入れる。

大輝の両手には大きなコーラや烏龍茶のペットボトルが数本握られていた。

「あっ、これ駅前のケーキ屋さんで買ってきたの! 食後にみんなで食べようと思って」

「甘いものは別腹だからね! 色んな種類買ってきたよ」

佐藤さんと寺田さんが、可愛らしいケーキ屋のロゴが入った紙袋を差し出してくれる。

「うわぁ、ありがとう! すっごく嬉しい! 食べるの楽しみだなー、早速冷蔵庫に入れておくね!」

「二人とも、わざわざ気を使わせてごめんな。ありがとう」

凛が笑顔で紙袋を受け取ってキッチンへ向かうと、部屋の中に入った大輝が鼻をひくひくと動かして大声を上げた。

「うおーっ! 美味い焼肉屋の匂いがする! 」

「あははっ、大輝くんったら食いしん坊なんだから」

「わかったわかった。じゃあ、まずは乾杯するか」

俺が買っておいた紙コップに、各自持参したコーラやジュースを注いでいく。

全員のグラスが行き渡ったのを確認して、俺はコップを軽く掲げた。

「今日は来てくれてありがとう。肉はいっぱいあるから、思いっきり食べてくれ。乾杯!」

「「「乾杯ーっ!!」」」

カチン、と五つのコップが合わさる音を合図に、感謝の焼肉パーティーが幕を開けた。

「じゃあ、どんどん焼いていこうか。牛カルビにハラミ、豚バラもあるから好きなの取ってくれ」

「っしゃあ! 俺は絶対カルビからいく!」

「じゃあ私たちは、こっちの豚バラを焼こっと」

十分に温まったホットプレートの上に、思い思いの肉を並べていく。

『ジューーーッ!』という豪快な音とともに、タレと脂の焼ける暴力的なまでにいい匂いが部屋中に弾けた。

「よし、焼けた! 豚バラには、この『特製ネギ塩ダレ』を乗せるんだよね?」

「ああ、たっぷり乗せて食べてみてくれ」

小皿に取り分けた豚バラ肉を、佐藤さんと寺田さんがさっそく口に運ぶ。

その瞬間、二人の目がこれ以上ないくらいに丸くなった。

「んんっ!! なにこれ、めっちゃくちゃ美味しい!!」

「本当だ……! お肉の脂が甘いのに、ネギとレモンの風味がすごくさっぱりしてて、これいくらでも食べられちゃう!」

「えへへ〜、でしょでしょ!」

二人の大絶賛に、なぜか作った俺よりも凛の方が自慢げに胸を張っている。

その様子がおかしくて、俺は思わず小さく吹き出してしまった。

「朝陽、俺もカルビ焼けたぞ!」

「ほら大輝、お待ちかねのやつだ」

俺は立ち上がり、キッチンから湯気を立てる大ぶりの丼を持ってきた。

中には、炊飯器からよそいたてのほかほかの白飯が、これでもかというほど山盛りに盛られている。

「うおっしゃああっ!! 朝陽、お前マジで神かよ……!」

大輝が丼をひったくるように受け取り、ちょうど焼き上がったタレたっぷりのカルビを箸でつかむ。

そして、その肉を純白の白飯の上に『ポンッ、ポンッ』と二回バウンドさせ、ご飯ごと勢いよく口の中へとかき込んだ。

「んぐっ……、う、うめぇぇぇっ!!」

大輝が天井を仰いで叫ぶ。

「肉すっげぇ柔らかい! なんだこのタレ、マジでヤバい! このタレが染みたご飯だけで、あと三杯はいけるぞ!!」

「あははっ、食べっぷり良すぎ!」

「ご飯はまだまだ炊飯器に入ってるから、遠慮せずおかわりしろよ」

「おうっ! 朝陽、お前将来定食屋でも開けよ!」

冗談交じりに笑いながら、俺も自分の分のお肉を白飯と一緒に頬張る。

すりおろしたリンゴの自然な甘みと、特製ダレの風味が食欲を刺激して、我ながらなかなかの出来栄えだった。

「ちょっとお肉休憩しよっと。朝陽くん、このナムルいただいてもいい?」

「ああ、どうぞ。横のたたききゅうりもさっぱりして美味いぞ」

寺田さんが、テーブルの端に置いていた『ピリ辛もやしナムル』を小皿に取り分けた。

「ん……美味しい! ごま油が効いてるけど、重くなくてちょうどいい箸休めになるね」

「本当だ。お肉のタレもだけど、ニンニク入ってるよね? なのに全然匂いがキツくない……」

佐藤さんが、不思議そうに首を傾げた。

すると、隣で肉をモグモグと噛んでいた凛が「あ、それね!」と嬉しそうに口を開いた。

「朝陽くんがね、『佐藤さんたちが来るから、女の子が気にならないようにニンニク少なめにしておく』って、わざわざ調整してくれたんだよ!」

「えっ、そうなの!?」

「……まあ、せっかく来てもらうのに、翌日とか匂い気にさせたら悪いだろ」

俺が少し照れくさくて視線を逸らすと、佐藤さんと寺田さんは顔を見合わせて「ほう……」とニヤニヤ笑いを浮かべた。

「朝陽くん、あんたどんだけスパダリなのよ。料理もできて気遣いも完璧とか」

「本当だよね。冬月さん、こんな彼氏捕まえてマジで幸せ者じゃん」

「えへへ〜、でしょ! 朝陽くんは自慢の彼氏だよ!」

「お、おい凛、ハードル上げるな……っ」

俺が真っ赤になって突っ込むと、大輝が「ひゅーひゅー!」と冷やかしの声を上げ、部屋の中にドッと笑い声が響き渡った。

美味しいお肉と、遠慮のない軽口。

気心の知れた友人たちと囲む賑やかな食卓は、あっという間に夜の時間を溶かしていくのだった。