軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第213話:作戦会議と、親友たちの祝福

月曜日。

恋人になってから初めて迎える平日の朝、凛はいつものように俺の部屋で朝ごはんを食べていた。

メニューは、厚切りのトーストとベーコンエッグ、それに温かいコーヒー。

「……なぁ、凛。今日からの学校、どうする?」

俺が切り出すと、コーヒーを飲んでいた凛が小さく首を傾げた。

「どうする、っていうのは?」

「いや、その……登校とか。付き合い始めたわけだし、一緒に行くか?」

正直なところ、俺だって凛と堂々と並んで学校へ行きたいし、できることなら手を繋いで歩きたい。

けれど、俺の問いに凛は少しだけ考え込むような仕草を見せた後、静かに口を開いた。

「本音を言えばね、朝陽くんと一緒に登校したい。……でも、今日からいきなり二人で現れたら、いろいろ良く思わない人がいると思う。」

「……だろうな。特に凛は目立つし、俺との噂が立てば、せっかくの穏やかな今の生活が面倒なことになるかもしれない」

決して周りの目を気にして卑屈になっているわけじゃない。

ただ、今の俺たちにとって一番大切なのは、誰にも邪魔されずに二人で過ごす、この穏やかな時間だ。

「隠し通すつもりはないけど、一気に騒ぎになるよりは、少しずつ周りを慣らしていく方が俺たちらしいかなって思うんだけど、どうかな」

「……うん。私も、朝陽くんと同じ意見だよ。今はまだ、この幸せな空気を二人だけで大切にしていたいから」

方針は決まった。

「戦略的別登校」。

これが今の俺たちにとってのベストだ。

「じゃあ、学校でな。……何かあったら連絡しろよ」

「うん、またあとでね、朝陽くん」

凛は玄関で少しだけ名残惜しそうに、けれどもしっかりと微笑むと、俺より先に部屋を出ていった。

時間をずらして教室に入ると、俺が自分の席に鞄を置くよりも早く、二人の人影が近づいてきた。

時間をずらして教室に入ると、大輝と寺田さんがいつものように声をかけてきた。

「朝陽、おはよう!」

「瀬戸くん、おはよ」

「……ああ、二人ともおはよう。……なぁ、ちょっと時間いいかな? 話したいことがあるんだ」

俺が真面目なトーンで切り出すと、二人は「え、何?」と少し驚いた顔をしたが、すぐに頷いてくれた。

人が来ない廊下の隅へ移動する。

「……実は、報告があって。……俺、凛と付き合うことになったんだ。昨日から」

一瞬、沈黙が流れた。

その瞬間、大輝と寺田さんは顔を見合わせ、ホゥッと深く安堵の息を漏らした。

「……よかったぁ」

「マジか……っ。いや、本当によかったな、朝陽。おめでとう!」

「おめでとう、瀬戸くん!」

周りにバレないように声のトーンは抑えつつも、二人は自分のことのように心から喜んでくれた。

「おう、サンキューな。二人のおかげだよ」

「何言ってんだよ。……今度、なんかお祝い持っていくよ」

「ふふっ、楽しみにしててね」

二人の温かい気遣いに、俺は自然と頬が緩んだ。

その後、一時間目の移動教室の時のこと。

廊下を歩いていると、ちょうど凛のクラスの前を通りかかった。

ふと中を覗き込むと、凛の親友である佐藤さんとバッチリ目が合った。

陽菜は俺を見ると、ニヤニヤしながら「ほほう」とでも言いたげな顔でこちらを指差してきた。

どうやら凛からすでに報告を受けているらしい。

昼休み。

俺、大輝、寺田さんの三人は、人目につきにくい中庭の隅っこにあるベンチで弁当を広げていた。

「いやー、でも本当によかったな。安心したわ」

「俺もだよ。いろいろ相談乗ってくれて助かった」

そんな話をしていると、向こうから見覚えのある二人の人影が近づいてきた。

「瀬戸ー!」

陽菜に連れられるようにして、少し照れくさそうにした凛がこちらへ歩いてくる。

「こっちのグループ、ご飯一緒にいいかな? 五人で。二人に改めてお祝い言いたくてさ」

陽菜がそう提案し、俺たちの輪に二人が加わった。

人影がないことを確認して、五人で弁当を広げる。

「改めて……二人とも、おめでとう」

「おめでとう!」

親友たちからの言葉に、凛は顔を赤くして「ありがとう」と微笑み、俺も照れくさくて後頭部を掻いた。

弁当を食べ進めながら、大輝がふと真面目な顔で聞いてきた。

「でも、これからどうするんだ? ずっと内緒にするわけにはいかないだろ?」

「ああ。今日の朝、凛とも話し合ったんだけどさ……」

俺は、一気に公表して騒ぎになるのを避けるため、少しずつ周りに慣らしていくという今朝の方針を伝えた。

「なるほどな。確かに、いきなり『付き合いました』ってなったら、学校中ひっくり返るもんな」

「うん。私も、陽菜以外の仲良くしてる女友達には、折を見て少しずつ話していこうかなって思ってるの。すぐには言わないけどね」

「それがいいよ。二人のペースでさ」

寺田さんも優しく相槌を打ってくれる。

お互いの考えを共有し合えるこの五人の空間が、今はとても心地よかった。

午後の授業も無事に終わり、放課後。

帰りの準備をしていると、大輝と寺田さんが再び俺の席にやってきた。

「なあ朝陽、近いうちに五人で『お祝いパーティー』でもしようぜ」

「あ、それいいね! 週末とかに集まってさ」

二人の提案に、俺は少し驚いて目を丸くした。

「パーティーって……なんか大げさじゃないか?」

「いいじゃんか。めでたいことなんだからさ」

少し離れた席からこちらを見ていた凛も、陽菜から同じようなことを言われているのか、顔を赤くして困ったように笑っている。

「……まぁ、予定が合えばな」

少し照れくさいけれど、親友たちに祝ってもらえるのは素直に嬉しい。

俺たちの「秘密の恋人生活」は、こうして温かい日常の中で、静かにスタートを切ったのだった。