軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第194話:日曜と、放課後の作戦会議

「ん……いてて……」

10月4日、日曜日。

リビングのソファで目を覚ました俺は、少しだけバキバキになった首と肩を回した。

昨夜は、おじさん・おばさんの来訪という大役を終えて完全に力尽きた凛にベッドを譲り、俺がこのソファで寝たのだった。

時計を見ると、時刻は朝の八時半。

「そろそろ起こすか」と立ち上がり、俺は自分の部屋のドアを静かに開けた。

ベッドの上では、凛が布団にすっぽりと包まり、すやすやと幸せそうな寝息を立てている。

「おい凛、朝だぞ。起きろ」

「……んぅ……」

肩を軽く揺すると、凛は薄く目を開け、とろんとした視線を俺に向けた。

そして次の瞬間、布団の中から両腕をヌッと伸ばし、俺の首にガシッと巻きついてきた。

「……あさひくぅん……おはよぉ……えへへ」

「っ!? お、おいバカ、何して……!」

全体重をかけてすりすりと頬を擦り付けてくる凛。

柔らかさと、シャンプーの甘い香りが至近距離で押し寄せてきて、俺の心拍数は一気に跳ね上がった。

いくら寝ぼけているとはいえ、これは心臓に悪すぎる。

「起きろっての!」

「ふにゃっ!?」

俺がベリッと彼女を引き剥がすと、凛はベッドの上に転がり、ぱちぱちと瞬きをした。

そこでようやく自分が俺の部屋のベッドにいること、そして今自分が何をしたのかを理解したらしい。ボンッ! と音がしそうなほど、顔が真っ赤に染まっていく。

「あ、わ、私……っ! ご、ごめんなさい! また寝落ちしちゃって、その、ベッドまで……っ!」

「まあ、昨日はいろいろあって疲れてたからな。ほら、顔洗ってこい。朝飯にするから」

「う、うん……っ!」

顔を隠して逃げるように部屋を出ていく背中を見送り、俺は深くため息をついた。

その後は二人で遅めの朝食をとり、この日はお互いゆっくりと体力を回復させて過ごした。

昨日の今日ということもあって、二人の間にはいつも以上に穏やかで温かい空気が流れていた。

翌日、月曜日。

昼休み、自分の席で何気なくスマホを眺めていた俺の目に、一つの広告が飛び込んできた。

『10月24日開幕! 光の森イルミネーション ——隣町の森林公園が光に包まれる』

タップして詳細を見ると、隣町の大きな公園で、かなりの規模のイルミネーションが開催されるらしい。

スマホの画面に映る光のトンネルや幻想的な森の写真は、ため息が出るほど綺麗だった。

(……ここ、凛を連れていったら喜ぶかな)

凛の誕生日は11月1日。その前日の土曜日、ここなら静かにゆっくり過ごせそうだ。

最近いろいろと忙しくて疲れさせてしまったし、誕生日の前夜祭として少しでも彼女の癒やしになればいい。

俺はそのページを保存して、放課後を待った。

放課後、帰る準備を整えて教室を出ようとすると、いつものように大輝と寺田さんがこちらへやってきた。

「おーい朝陽、一緒に帰るか?」

「あ、ちょうどよかった。二人とも、この後ちょっといいか? 相談したいことがあって」

俺が改まって言うと、二人は顔を見合わせた。

「どーした、朝陽。なんか悩み事?」

「うん。……ちょっと場所変えないか? 聞かれたくないから」

俺たちは学校の近くにある、学生がよく利用するカジュアルなカフェへ移動することにした。

「で、相談って?」

注文した飲み物が運ばれてくると、大輝が身を乗り出してきた。

「今月の31日……凛の誕生日の前日に、隣町のイルミネーションに連れていこうと思ってるんだ。最近いろいろ頑張ってくれたから、少しでも喜ばせたいなと思って」

「お、いいじゃん! イルミネーションとか、女子は絶対好きだよ」

寺田さんが嬉しそうに頷く。俺は保存していた広告を二人に見せた。

「車はないから、駅からのバスで行くつもりなんだけど……。こういう時、何に気をつけたらいいかな。ほら、二人ともよく出かけてるから詳しいだろ?」

「あー、バス移動か」

大輝が少し考えるように顎をさすった。

「移動時間がそこそこあるなら、酔い止めとか飲み物とか、さりげなく持ってるといいかもな。あと、バスって意外と静かだから、喋るネタも考えておいた方がいいぞ」

「なるほど……」

俺がメモを取ろうとすると、寺田さんが「一番大事なのはこれよ!」と指を立てた。

「10月末の夜の公園は、ガチで冷えるからね! 凛ちゃん、お洒落して薄着で来ちゃうかもしれないし、ホッカイロとか絶対準備しておいた方がいいよ。あとは、瀬戸くんがさりげなく貸してあげられるようなストールとか、ひざ掛けとか車内に持ち込めると完璧なんだけど……」

「ストールか……。確かに、外を歩く時間も長そうだしな」

俺は二人のアドバイスを真剣に聞きながら、当日の流れをイメージした。

大げさなことはできないけれど、凛が心から「楽しかった」と笑ってくれるような、そんな一日にしたい。

「ありがとな。助かるよ」

「いいってことよ! 成功したら報告しろよな?」

大輝と寺田さんの頼もしい助言を受けて、10月31日に向けた俺の「恩返し」の計画が、少しずつ形になり始めていた。