軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

血縁?

それから王太子暗殺計画の立案が本格的に進んでいって……基本的な方針はジェミィとロックが二人で考え出してくれた案で行くことになった。

元々反貴族として王都で活動をしていて、同じような目的を持つ仲間や知人も多く、王族暗殺計画まで立てていたこともあり、王都のことをあまり知らない俺達よりも現実的かつ地に足ついた内容となっていた。

更にそこにエドラン王子という切り札を得たことで確度が上がり、ライデルやフィリップも納得の仕上がりとなっていった。

……それで何もかも順風満帆と行けば良かったのだが、相応にトラブルとはあるもので、その一つがフィリップに関することだった。

今回の計画は内容が内容だけに、その中身は信頼出来る人物にしか明かすことが出来ず、家の中の者達にすら今何をしているのかを教えていなかった。

フィリップには全てを教えているが、他の者には教えておらず……そこでちょっとした軋轢が生まれてしまったらしい。

重要な局面だというのに何故自分が外されるのか、何故フィリップだけが重用されるのか。

屋敷の内外からそんな視線を向けられてしまっていたらしい。

まさか我が家にそんな不届き者がいるとは驚かされたが、エドラン殿下が言うには、

「それだけ貴公に対する忠誠心が高いのだろうよ」

とのことだった。

忠誠心があり、長年応援をしてきて、だからこそ重要局面において役に立ちたいという気持ちが逸ってしまっているとかなんとか。

そしてそこら辺の解決策を出してくれたのもエドラン殿下だった。

歓待から数日後、昼前の鍛錬の時間、もうしばらくはこちらに残って様子を見守りたいと言ってくれた兄上やエドラン殿下と剣でもって打ち合っているとフィリップがそんな報告と言うか愚痴を投げかけてきて……それを受けて殿下はフィリップの前に進み出て、その顔をじぃっと見つめてから声を上げる。

「フィリップ、お前は確か孤児だったな?」

「え? うん、そうだけど?」

一国の殿下に対する態度とは思えないフィリップの言葉に、殿下は機嫌を悪くすることなく笑みを浮かべて、肩を組んで声を張り上げる。

「あはーっはっは、それで良い!

……まさかこんな所で生き別れの、母違いの弟に出会えるとは思っていなかったぞ!

よしよし、今日からはこのエドランの名の下に動くが良い、それでお前を侮る者はいなくなるだろう!!」

「はい?」

「え?」

「はっはっは!」

俺とフィリップが間抜けな声を上げる中、狙いを察したらしい兄上だけがそう笑い……それから兄上が説明をしてくれる。

「コプラン国の王城は落ちて、ほとんどの史料が焼け落ちたか略奪にあった。

最早公的な記録も家系図も残ってはおるまい。

そんな中でエドランがそうだと言えば、それが唯一絶対の証拠よ、誰もそれが嘘や間違いであると指摘することは出来まい!

良かったなフィリップ、今日からお前は我らの上を往く王族となるのだ」

「え? いや、え?? えっと……えーっと、あの、アレだ、アレアレ。

そんなことをしてエドラン……殿下に何の得が?」

突然のことに困惑しながらフィリップがどうにか言葉を紡ぐと、エドラン殿下は嬉しそうにしながら言葉を返す。

「ウィルバートフォース家と確かな繋がりを得られるのであれば、得しかあるまいよ!

そもそもとして、今回の作戦を成功させたいのは余も同じだ、そのための多少のコストの支払い、躊躇などしていられんだろう。

更に言うのであれば、全てを失った余としても偽りであれ何であれ血族が増えることはありがたいことだ! よって今日からお前は余の弟だ!

件のジェミィとロックとやらは陽動作戦のために既に王都に向かったのだろう? であれば弟よ、この場においてはお前が踏ん張らなければな!

さて、早速細かいすり合わせをするぞ!!」

そう言って殿下はフィリップをどこかへと連れ去っていく。

……フィリップが嫌がっているようなら止めるべきかとも悩んだが、本気で嫌がっているのなら抵抗するなり逃げるなり俺に助けを求めるなりするはずで、フィリップも悪くない話だと思っているようだ。

それを見送ったなら兄上と向き合って、さて鍛錬の続きだと言う所で、

「ブライト!」

と、聞き慣れた声が響いてくる。

それはお祖父様の声だった、計画のことを聞きつけてやってきたのか、真面目な顔つきでこちらに近付いてくる。

最近は貴族への工作やら社交やらで忙しくしていたらしく、顔を見せることは稀で久しぶりの挨拶を返していると、兄上もまた丁寧で……どこか余所余所しい挨拶を返す。

「相変わらずの可愛げのなさだな」

「相変わらずの悪党っぷりで」

お祖父様がそう言うと、すぐさま兄上が返す。

「もう結婚はしたのか? アレとの繋がりを断つような真似をするなよ」

「まだ準備が整っていないので式はまだですが、仲良くはさせてもらっていますよ。

その仲の良さから仲間内では既に妻であるものとして接してくれています」

「生ぬるい、すぐにでも押し倒せ」

「お断りします、貴方と違ってロマンチストなので」

……これで仲が悪いって訳ではないんだからなぁ。

相性が悪いと言うか、根本が違うと言うか……それでもお互い家族としての情は一応持っているらしい。

俺へのそれとは全く別種のものとなっているようだが……。

「……ふんっ、本当に可愛げのない男だ。

そしてブライト、それはお前も同じことだ……本当にやるのか? まだ早いのではないか?」

と、お祖父様。

俺に向けて厳しい態度と言葉を放ってはいるが、その目はお前のことが心配だと、そう語りかけていて……真っ直ぐに視線を返した俺は、言葉を返す。

「はい、一国を滅ぼしたとなっては放ってはおけません。

今はまだそこまでの騒ぎにはなっていませんが、追々各国もなんらかの反応を示すはずで、ここで対応を間違えば世界全てが敵になる可能性もあります。

今であればエドラン殿下も味方についてくれていますし、このままアレの首を落とせば各国との交渉が多少は楽になるはずです。

そもそも現時点で王や他の貴族が何もしていない方が異常なんですよ、首を落とすまでいかなくとも拘束するくらいはしなければ、話にもならないでしょう」

「……ふむ、まぁお前はそう反応するか。

実を言うとな、動きを見せていない貴族の多くがお前に期待を寄せておる。

……責任を押し付けようとしていると言っても良いが、お前がしてくれるのだから余計なことはしなくて良いだろうと、そんな考えで動きを見せておらんのだ。

実際にいくつかの家からは不干渉を貫き、事後に責任追求を行わないとの確約を得ている。

証書もしっかりとあるぞ……協力を取り付けるまではいかなかったがな、それでも協力的な態度を示している家もある。

流石に今回ばかりは我が家も協力はしよう……そこまで前に立つことは出来んがな。

王城内部にもかなりの協力者がおる、クロスビー男爵家の面々も王都で何かを画策しておるようだ。

当然野心を漲らせ王太子の首をと画策する者もいる、あるいは今こそ傀儡を、なんてのもな。

まぁ、後者二つ口だけの能無しだ、相手にする必要はないだろうな」

……なるほど。

他力本願、日和見、口だけなど様々な貴族がいる中、動いている者達もいる……と。

まぁ、実際王太子殺しとなったら怯む気持ちも分かる、我が家のように直接的な恨みがなければ動きも鈍るものだろう。

通すべき筋の一つクロスビー男爵家とはどうにか連携したい所だが、未だにどこでどうしているのかが分からず、全く連絡が取れないのがなぁ……。

ポーラ嬢や騎士ケランとも話してみたのだが、あったはずの伝手は既に消滅してしまっていて連絡の取りようがないとのことだった。

彼女達なりに手を尽くしたが駄目だったというのなら仕方ないのだろう。

……また、彼女達は復讐には参加しないそうだ。

ポーラ嬢はお腹の子のことと今を生きるので精一杯、ケランもポーラ嬢を守るので精一杯、復讐までは手が回らないそうだ。

……いや、本当は復讐をしたいはずなのだが、今のこの暮らしというか、ここで落ち着いた暮らしをしたことで、復讐の気持ちよりも今を守る気持ちの方が大きくなったのだろう。

その決断はとても前向きと言えて、素直に応援したいと思える決断だった。

もし今回の作戦のなかで男爵家の誰かを発見出来たなら、どうにかポーラ嬢の下に連れ帰りたいものだ。

他の通すべき筋である地方法院は静観の構え、王家どうこうは地方法院が扱うには話が大きすぎるというのが、一応の彼らの理屈だった。

そして司教様と大司教様は……やめて欲しいと、そう手紙で伝えてきている。

伝えてきてはいるが、本気で止めたいとは思っていないようだ。

と、言うか教会は今、それ所ではなくなっているらしい。

保護すべき国家の消失、王家の壊滅、その後の荒廃をどうにか防ぐために大忙し、支援策の策定や各国との連携、橋渡しなどで多忙を極めているようだ。

ここで動かなければ、存在感を見せなければ教会の威信は傷つくことになる訳で、総力を挙げて動くと同時に、王太子に対する非難の準備もしているようだ。

破門するかどうかまではまだ行っていないらしいが、破門にすべきという意見も根強く議論は紛糾しているらしい。

王太子を破門してしまったなら当然後継者争いだの教会との関係だので荒れに荒れて、内乱にまで発展する可能性があり、そこまでは教会も望んではいない。

しかしやらかしている事が事で無罪放免にも出来ない、教会として守るべきラインはどこにあるのか、どう動くべきなのか……連日会議が開催されてだが結論は出ず、ただただ無駄とも思える時間を浪費しているんだそうだ。

そんな状況に呆れた一部の司教様は会ったこともない俺に『さっさと始末してくれ』と意訳出来ないこともない手紙を送ってきたりもしていて……結果として教会は、俺が何かをやらかしたとしてもやりすぎない限りは黙認をしてくれるそうだ。

セリーナ司教様も、ポープ大司教様もそんなことを望んではいないのだが、コプラン国をいち早く救済するためにはそれも致し方ないと、そう考えてくれているようだ。

本気でそんなことは望んでいないはずで、悔しい思いをしているはずで、悲しんでいるはずで……それでも尚、感情を飲み込んで仕方ないと伝えてきてくれたセリーナ司教様と、ポープ大司教様にはただただ感謝と尊敬の念あるのみだ。

……これで障害らしい障害はほぼ無くなったと言える。

軍務伯や王妃という最後の筋も残ってはいるが、もうそこも問題にはならないだろう。

あえて言うのなら王太子本人が最後の障害ではある。

何がしたいのか、何をしようとしているのか全く見えない上に、遺跡の盗掘は最近になっても続けていて何を所有しているかが全くの不明。

保有している武器は? 戦力は? 忠臣はいるのか? 利用しようとしている派閥は今どうなっているのか?

見えないことが多すぎて、なんとも厄介な障害となってくれている。

だからと言って諦めるとかはあり得ない話で、その障害ごと粉砕するしかないんだろうな。

……と、そんなことを考えているとコーデリアさんが様子見に来たのかやってくる。

そしてお祖父様に挨拶し、兄上に挨拶し、それから俺に手紙を差し出してくる。

……わざわざコーデリアさんが手紙を書くとかはありえないから実家、ロブル国からの手紙なのだろう。

一旦執務室に戻ってから開封すべきなんだろうけども、コーデリアさんはすぐにでも確認して欲しそうで、無礼ではあるが手で封を破って中身を確認する。

「……ロブル国から援軍の申し出です。

鍛え上げたドルイド族の戦士100人、こちらに送っても構わないと。

正直ドルイド族がここまでの大人数となると目立ちすぎる気がするのですが、お祖父様、兄上、何か良い考えはないでしょうか?」

俺がそう言うと二人は驚きながら顎に手を当てて、なんとも似通った仕草で悩み始め……そして俺はとりあえずコーデリアさんにお礼をすべきかと剣を兄上に預けてから、コーデリアさんの手を取り、二人きりになれる場所へと足を向ける。

それから建築中の屋敷の庭園へと向かった俺は、コーデリアさんにお礼を伝えながら二人きりの時間を過ごすのだった。