軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

繁華街

結論としては叔父上のことはボコボコに殴った。

いや、殴る必要は無かったのかもしれないけども、王妃からの使いを戦車に押し込んだ件などがトドメとなってついつい手が出てしまった。

為政者として感情で動くことは許されないと思いながらも、一度くらいやっちまった方が良いだろうという感情が勝ってしまった。

結果としては良い罰となり見せしめとなり、かつ公的な罰を与えた訳ではないので家族喧嘩の範疇に収められると、そう地方法院からのお達しもあったので、悪くはない選択だったのだろう。

当然ながら叔父上としては不満そうではあったが、抵抗をせず受け入れてその後文句も言わずに大人しくしていた。

捕縛も受け入れ、地方法院への移送も受け入れて……地方法院での手続きが終われば我が家に戻ってくることになる。

その後、王都に返してやるかは現状なんとも言えない。

出世を望む叔父上としてはその方がありがたいんだろうけども……我が家にとっては貴重な戦力でもあるので、使い所は考えたい所だ。

我が家で重用しても良いし、兄上の下に送っても良い、特に兄上の下であれば活躍次第では一国レベルの領土を貰えるだろうし、お望みの出世も叶うというものだ。

家を興して新たな家名を名乗って、伯爵かそれ以上の爵位を戴いて……叔父上的にはその方が良いんだろうなぁ。

……そして二人の女性。

ポーラ嬢のメイドについては扱いは簡単だ、ポーラ嬢の下に送り、ポーラ嬢の世話を頼む、それだけ。

……どうやら男爵家に関する情報を持っているようなのだが、まだそれをこちらに明かすつもりはないらしい。

メイドなりにこちらを見極めたいとかで……まぁ、こちらとしては急ぐ話ではないので好きにさせることにした。

言ってしまうと男爵家がどうなろうとも我が家に大した影響はないからなぁ……そこら辺の判断は好きにしたら良い。

保護した以上は一定の世話はするし、最後まで面倒を見るつもりだが、そこまでの話でしかない。

そして王妃関連は……正直判断に困っている。

王妃に関しては情報を持ってなさすぎる、その人格や立場がよく分かっていないので、密書の内容が本気なのかすら判断がつかない状況だ。

密書の内容をそのまま真に受けるのなら、王妃は反王太子派ということになる。

母としてよりも王妃として……いや、母だからこそ我が子のアレさに頭を抱えているようで、殺意すら感じる文章となっていた。

そして王朝交代にも意欲的で、既に次期王朝の選定まで考えているようだ。

その上で俺に手伝って欲しいとか考えているようで……なんとも言えない話となっていた。

真に受けるのならば良い話のように思えるが、結構な責任をこちらにおっかぶせようとしているとも言えて厄介だ。

しかもだ、次期王朝の選定にはどうやら王妃の実家の思惑が関わっている気配がする。

俺に面倒事を押し付けた上で実家が望む王朝を立てて、その後は好き勝手……というのが透けて見えていて、真に受けたとしてもロクな話ではないように思える。

真に受けないのであればもうただの罠でしかなく、相手するだけ無駄でしかない。

ただそうやって俺が疑うことは王妃も分かっているのだろう、ただ密書を送っただけでは相手にされないと思ってか、密書の中にはいくらかの情報も書かれていた。

まず王太子につく貴族が増えているという情報。

これは王太子に忠誠をとか心酔をとかではなく、王太子が愚か者だという噂が広がって、それを利用してやろうという者達が集まってきたからということらしい。

元々そういう貴族は近くにいたし、既に何人か集まってもいたのだが、その流れが加速しているとのことだった。

王が暗愚であればこそ臣下が輝くと、そういうことなのだろうが……新聞などがある今、そういう時代でもないと思うんだがなぁ。

もう一つの情報、こちらはかなり重要な内容だった。

大陸事情についてで、兄上に自領地を追われた貴族達が大陸各地に散って、そこでロビー活動のようなことをしている……というものだ。

反兄上同盟を起こそうとしているというか、兄上をこのまま放置するとそのうちこの国にも攻撃を仕掛けてくると、そんな情報をばら撒いて不安を煽り、兄上を攻撃させようとしているとか。

そんな動きは王城にも届いているとかで、王太子派はこれを利用しようと画策しているとのことだった。

まぁ、当然の反応かもしれないなぁ、突然大陸に侵攻してきて、勢いのままに一国を攻め落としてしまい、挙句の果てに統治に成功してしまっているのだから、近隣国としては大問題だろう。

しかし反兄上同盟なんてものが本当に出来上がるかは懐疑的だ。

兄上にそこまでの野心はないだろうし、俺よりも伝統と文化と常識を大事にする話の通じる人だ……近隣国とのトラブルがあったとしても話し合いで解決出来る人だろう。

隠せない野心があるとか話が通じないとか、伝統なんかを破壊してくるとなったら各国一致団結する可能性があるかもしれないけどなぁ。

……王太子が干渉することで何かが起きるってのはありえるかもしれないが、それでも兄上の方が上手のはずで、心配はしていない。

前世のナポレオンのような大暴れをした時には大変なことになるだろうけども、それはない……はずだ、うん。

……いや、でも、父上はどうだろうなぁ。

父上は野心も欲望も人一倍ある人物のようだからなぁ……やらかす可能性はあるかもしれない。

特に今はなぁ……兄上が指揮権を握って色々と自重させているようだから、不満を募らせているかもしれないなぁ。

母上の話によると父上のアレな欲望は結構なものらしい。

……俺達には気付かれないように上手くやっていたようだけども、それだけ隠蔽が上手かったということでもあり、隠蔽のためにヤバい手段を使っていた可能性も否定出来ない。

それはそれで貴族に必要なスキルかもしれないが、その辺りは俺や兄上とは相容れないのだろうなぁ。

父上のことを安易に否定するつもりはないが、同じ道を進むつもりもない。

……兄上もまたそう考えて父上のことを抑えつけているようだけど、それで大人しくしている父上とは思えない。

俺に甘い父上だが、兄上にはそこまでではない……うん、後で俺の方から父上にそれとなく釘を差しておこう。

ただ釘を刺すだけでは良くないから、なんらかの方法で父上の欲望を解消してやる必要もあるだろう。

息子達に否定されてばかりで理解されないというのは、それはそれで辛いものだろうしなぁ。

と、そんなことを今日は寝室で考えていた。

諸々の事後処理が終わり、浴室で汗を流し、後は寝るだけとなってのひととき。

ベッドに腰掛けてあれこれと考えて、考えを整理するために簡単なメモを取っていると、後ろから覗き込んできたコーデリアさんが軽く寄りかかりながら声をかけてくる。

「……そう言えばこちらでは歓楽街というものがあるんでしたか。

領内にもあるんですか?」

淡々としつつも何か意味を込めてそうなその声に、一瞬固まった俺だったが素直に答えを返すことにする。

「私が整備したものがありますね。

徹底的に法や病院を整備し、専属の警備隊も派遣して……できる限り安全性を高めてある形です」

「……えっと、具体的な内容とかも監督しているのですか?」

「全く触れないという訳にもいきませんから、法整備の際などに確認はしています。

ああいう店はグレーゾーンの存在かもしれませんが、全く無いでは困ったことにもなりますから……これからも整備はしていくつもりです」

言い訳のようなセリフになってしまったが、現状無くせるものではないからなぁ、せめて行政側が徹底管理して様々な面での保証をするしかないだろう。

そこで手を抜くとマフィアのような存在がのさばるし……ロクなことにならないはずだ。

「あとはまぁ、健全な店を活発化させることで、そちらの方に需要が傾かないかなどの実験を、学者達と行ったりもしていますね。

歓楽街の管理と状況改善の研究のようなものですかね」

シックな雰囲気な店で、静かに酒を飲んでみたり、あるいは歌姫の歌や踊りを楽しみながら飲んでみたり……そういう遊びで満足出来る人が増えればという、そういう意図の実験だ。

そう簡単に行く話ではないけども、まずは研究をしていかなければならない話で、前世とは全く違った発想や状況が生まれるきっかけになるかもしれないと、それなりの予算をかけていたりする。

ああいう産業は結構な儲けとなる、その大半を職員の福利厚生に回したとしてもそれなりの予算が余る。

それでもって研究や改善をという訳で……そこら辺には教会も協力をしてくれている。

教会としてもどうにかしたいと思ってはいたようだがどうしたら良いかが分からず放置していた問題で、俺のような取り組みは評価をしてくれるらしい。

「……それは他の方には任せられないのですか?」

……うん?

「適任がいれば任せることも出来ますが、今は人手不足ですから、中々難しいですね」

「分かりました、では実家に頼んで適任者を送ってもらいます」

……うん、なるほど。

コーデリアさんは俺がそういう産業に関わることを快く思っていないようだ。

と、言うか嫉妬のような感情を抱いているようだ、振り返って目を見てみると瞳から光が失われている。

……まさかこのレベルで嫉妬されるとは思わなかったが、まぁコーデリアさんからすると気分の良い話ではないのは確かだろうからなぁ。

「分かりました、適任者であればお任せしたいと思います。

ただその際にはコーデリアさんも視察に行ってみてください、そんなに悪い店ばかりではないですから……。

そしてコーデリアさんの視点から思いつく改善点があれば遠慮なく言ってください、そうやって可能な限り良いものにしていければそれに勝ることはないと考えています」

「……分かりました。

叔父様のこととか、しばらくはお忙しいでしょうから、どこかお暇なタイミングでそうしましょう。

それまでは決してお一人で向かいませんよう、お願いします」

「……いや、一人で行くようなことはないですよ? ほとんどが手紙での指示ですし、行くとしてもライデルなどの護衛と一緒に行きますよ?

まぁ、今更行く用事もないのでコーデリアさんの言う通りにしますけども……」

「はい、絶対にそうしてください」

そう言ってコーデリアさんは腕を回し強く抱きしめてきて……そのまま俺は引き倒される。

こうなったらもうやられたい放題と言うか、コーデリアさんペースと言うか……俺に出来ることはない。

されるがままとなり……翌日。

いつも通りの朝を迎え、政務に励み、やるべきことを終えた俺は、叔父上や王妃、父上など様々な問題に対処していくため、いつものメンバーを執務室に呼びつける。

そうしていつも通りの時間が始まり……俺達はいつものように話し合いを始めるのだった。