軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9.初めての依頼

依頼、と言っても遠く離れた場所には行かない。あくまでウェイド辺境伯領付近のところである。

と言っても、ウェイド辺境伯領は直近まで魔物の被害に晒されていたわけで、結界の外は決して安全とは言える状況ではないようだ。

「いや〜。みんな俺より若いから、頑張って負けないようにしないとね〜」

ウェイド辺境伯は、ケラケラと笑いながらそんなことを言う。ウェイド辺境伯の腰には剣が下げられていることから、恐らくは剣メインで戦うのだろう。

ちなみにエリックは弓だ。私と同じであまり身長は大きくないから、かなり弓が巨大に感じる。

「ウェイド辺境伯なら大丈夫ですよ! 僕こそ、辺境伯に負けないように気合い入ってるんですから! それに……シセにもな!」

「わ、わたし?」

エリックが急に私の名前を呼んだのでびっくりしてしまう。これってつまり、私をライバル視しているということだろうか。

「い、いや。私は戦ったことないから、エリックには勝てないよ」

私はどうにか説明する。ライバル視……っていうのは、少しばかり友達感あって嬉しいのだけれど、しかし戦闘経験がない私にはその期待に応えられる自信がない。

「いーや! 僕は確かにシセの力を知らないけど、強い人間ってのは勘で分かるんだ。冒険者の勘ってやつでな!」

「は、はあ……」

熱い想いをぶつけられている中、ウェイド辺境伯が「さて」と言う。

「ここから依頼で指定されている場所だから、注意していこうね。今回の討伐対象は、ゴブリンの群れだ」

ゴブリン……実物では見たことないが、低級の魔物だ。そこまで脅威にはならないものだが、しかしそれは冒険者にとっての話である。

私のような一般人にとっての脅威度はかなり高く、死者も数多く出ている。

少し怖いから、探りを入れておこう。

「魔物の位置、私が調べるので少し待ってください」

私がそう言うと、二人は目を丸くして驚く。

「今、位置って言ったのかい!? そんなものが分かるのか!?」

「そんな能力聞いたことがないぞ!?」

ウェイド辺境伯とエリックが叫ぶが、私は冷静に答える。

「わりと、こういうのは専門だったので」

そう、聖女は結界を張って維持するのを仕事としている。ともなれば、常に結界周辺を探っているわけで、何かを探知して場所を把握するのは得意な仕事なのだ。

私は目を瞑り、集中する。

…………分かった。

「このまま前方、六体のゴブリンがいます。負傷などはなし、万全の状態のようです」

私の言葉に、更に驚く二人。しかしウェイド辺境伯はどこか納得している様子で、少しばかり苦笑してしまっていた。

「ああ……まあ確かにな。坊主、これもシセの能力だよ」

「ええ!? そんな能力があるのか……」

ウェイド辺境伯は私の素性をなんとなく把握しているだろうが、エリックは恐らく何もしらない。だからまあ、驚かれるという点ではある意味納得する。

「移動するかもしれないので、早めに向かいましょう」

私が言うと、二人はこくりと頷いた。

件の場所まで進み、茂みをかきわけていると六体のゴブリンを発見する。探知通り、やっぱりいた。

「いたようだね。俺たちが……と言いたいところだけど、ここは一度シセに頼んでみよう。実力も見たいしね」

「そうですね! シセ、お前の力見せてくれ」

そう言って、二人が期待を寄せてくる。戦闘経験はないが……まあある程度の攻撃魔法は知っている。せっかく期待を寄せてくれているわけだし、頑張ってみよう。

私は集中し、そして唱える。

「《豪焔》」

刹那、ゴブリンの足下に巨大な赤い魔法陣が出現する。ゴブリンは動揺するが、それよりも先に私の魔法が発動した。

轟音とともに、業火が魔法陣から溢れ出る。メラメラと燃えたぎり、一瞬にして全てのゴブリンを灰にした。

「あ……意外と戦えるかも……」

私は初めての勝利に、嬉しくて仕方がなくてバッと後ろにいる二人を見た。

「私勝てましたっ……あれ?」

何故か二人がぼうっと佇んでいた。私は不思議に思い、もう一度声をかける。

「あ、あの。倒せました」

二人はやっとハッとした様子で私を見る。

「シセ……君は……すごい努力をしたんだね」

「ぼ、僕……これからシセのこと師匠って呼んでもいいか……?」

私は困惑を隠しきれず、「え……?」という言葉が漏れた。