軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7.おやすみ(一部ルヴィン王子視点)

ウェイド辺境伯はちらりと時計を確認する。そして、私の方に向いて優しげな声音で言った。

「そろそろ帰ろうか。まだ少しだけ時間はあるが、ギリギリを攻めるとなると万が一のことがあったら困るからな」

「そうですね。ありがとうございます」

「礼を言うのは、俺の方なんだがね」

ウェイド辺境伯はエリックに手を振った後、くるりと踵を返す。私もエリックを見て、軽く頭を下げた。

エリックも軽く手を振ってくれた。

「今度、機会があったら依頼でも一緒にしようぜ! あんたの戦闘能力、この目で見てやるからよ!」

「う、うん!」

あまりにも不器用すぎる返事を私はして、ギルドの外に出る。やっぱり私は昔からそうだったけど、友達みたいなものはいなかったから、どう接すればいいのか分からなくなる。

だけど、ここから慣れていけばいいか。きっと上手く行く気がする。

私の様子を見て、ウェイド辺境伯はくすりと笑う。

「ほらな。人見知りでも、案外いけるだろ?」

からかうような視線に、私はむすっとする。

「別に人見知りじゃありません」

「あら、違ったのかい? まあでも、友達っていうものはいいものだよ」

そう言いながら、ウェイド辺境伯は笑う。

全く、本当にこの人には色々と見透かされてしまうな。多分、隠し事も通じない気がする。

家に到着した私は、軽くストレッチをした後に与えてくれた自分の部屋に向かおうとしていた。そんな時に、ウェイド辺境伯が歩く私を止める。

「今日はお疲れ。シセのおかげで、もう本当に助かってばかりの日だったよ」

私を褒めてばかりするので、少しばかり気恥ずかしく思えてくる。今はその褒めに対して、一つ一つ大きな幸せを覚えている。

この感情も、いつかは慣れてしまうのだろうか。

……いや、きっと違う。私はこれからも、今日からずっと幸せを感じ続けるようになるのだろう。

「どうしたんだい、ぼうっとしちゃって。もしかして、一人じゃ寝られない子だったかい?」

からかうように言うウェイド辺境伯に、私は全力で首を横に振る。

「違います!」

「ははは! そうかい、それはよかった。今後も精一杯頼ることになるだろうけど、俺も精一杯君が快適に暮らせるよう努力するからさ。んじゃあ、おやすみ」

「……はい」

私は頷いて、もう一度寝室へと歩き始めた。

◆◆◆

ルヴィン王子は、顔を真っ青にしながら宮廷内の廊下を歩いていた。シセリアを追い出したことによって生じた結界の問題。

また、それに伴う責任問題にあらゆる立場の人間から申し立てられ続けていたからだ。

ともあれ、今ルヴィン王子が顔を真っ青にしているのにはもう一つ理由がある。

それは、自分の父である国王から呼び出されたからだ。

「大丈夫……大丈夫だ。母も父も、アンナとの婚約は納得してくれていた。だから、また別の用事を伝えようとしているだけなんだ……」

国王が待つ部屋の前に立つルヴィン王子。ごくりと唾を飲み込み、扉を押し開いた。

眼前に、国王が座って待っている。その表情は怒りに満ちていた。

「ルヴィン。今回の件、私は重く受け止めている。貴様、よくもやってくれたな」

国王の言葉に、ルヴィン王子は焦る。

「ま、待ってください! だって、アンナとの婚約は認めてくれたじゃないですか!」

「黙れ!! 私は『結界の維持はアンナでも可能』だと聞いて許可したのだ!」

「そ、そんな!?」

ルヴィン王子は泣きそうになる。確かにそうは言ったが、国王自身もシセリアである必要はないと言っていたのだ。

これじゃあまるで、ただ自分が嘘を吐いたということになるじゃいか。

「アンナでは、結界の維持は不可能だ。よって、多額の資金を投じて複数人の聖女を集め、結界の維持を試みようと動いている」

その言葉を聞いて、パッと顔を明るくするルヴィン王子。これで、結界は維持されてアンナとの婚約も上手く行く。

しかし、そう上手いことにはならなかった。

「だが、この金額を動かし続けるともなれば、我々も贅沢はできなくなる。よって、貴様にはシセリアを連れ戻すよう動いてもらうことにした」

「え!? シセリアを……ですか!?」

ルヴィン王子は汗を滲ませる。今更、彼女を連れ戻すなんてなかなかにできないことだ。それに、アンナとの関係も複雑になってくる。

「僕は……嫌だ——」

言いかけた刹那、国王が怒号をあげる。

「黙らんか!! それが今の貴様の命だ! 十二分に分かっているだろう!!」

ルヴィン王子は泣きそうになるのを堪えて、ただ頷くことしかできなかった。