軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37話 市場

「次はね、市場とか屋台があるとこ知ってるか?」

「うん。こっち」

アリサに手を引かれてさっきの大通りまで戻り、今度は大通りの向かい側の細い道に入った。

細い道を道なりに進んでいくとひらけた場所に出た。

そこにはお祭りの屋台のようなお店がたくさん並んでいて、いい匂いをさせていた。

ぐぅぅぅ

俺とアリサの腹が同時に音をたてた。アリサは恥ずかしそうに顔を赤くして俯いた。

「美味しい店とかオススメの店ってあるか?」

初めての場所は地元民の意見に従おうと思いアリサに聞いたのだが、俺はすぐに後悔した。

アリサは俯いたまま小さく首を横に振った。スラムに住んでいる孤児の子供が屋台で買い食いなんて出来るわけがない。

なんて無神経な質問をしてしまったのだろう。俺のバカバカバカ。

ここは俺の鼻を頼りにクンクンと進んでいった。

香ばしい匂いをさせた屋台を覗くとそこには串焼きの肉が並んでいた。

よし、まずはここだ!

「おっちゃん! 小さい子でも食べられる柔らかい肉くれ」

「ひと串鉄貨5枚だよ」

ふ〜む、鉄貨5枚が高いのか安いのかもわからん。

が、この暴力的な香ばしい匂いにハズレはないはず。とりあえず買おう。腹へったからね。

「ふた串くれ」

そう言って銅貨を1枚出した。

おっちゃんは「ほれ」と串をふたつ差し出した。

1本をアリサに渡してから俺は肉にかぶりついた。

もぎゅ。

もぎゅもぎゅもぎゅ、ごくん。

串焼き肉は柔らかくジューシーでかつちょこっと焦げたとこが香ばしく、何のタレかわからないけどニンニクのように後を引く味!

これ、マジ、美味いわぁ。

「う、まぁい! おっちゃん、毎日買いにくるぜ!」

そう言われておっちゃんはドヤ顔になった。

ふとアリサを見ると、アリサは串肉を持ったまま一口も食べてなかった。

「アリサ? 肉、嫌いだったか?」

アリサは顔をふるふると振って小さい声で言った。

「これ、持って帰っちゃダメ……ですか? マルクとダンにもあげたい…から…」

さっき歩きながらしたアリサの話の中に出てきたマルクとダン。

弟のマルク、2歳(くらい)、兄貴のダン、10歳(くらい)。血は繋がっていないけど、一緒に住んでいると言っていた。

昼間、ダンとアリサはお金を稼ぎに街中に出て、マルクはスラムで留守番をしているそうだ。

10歳と8歳が働かないといけない世の中もなんだけど、2歳児がひとりで留守番してるこの世界って……。

日本って本当に恵まれた世界だったな。ちょっとしんみりしてしまった。

「ふたりにはあとでお土産を買ってあげるから、それは冷めないうちにアリサが食べな」

アリサはばっと顔を上げて俺を見たあと、串肉にかぶりついた。

すごく美味しそうにハグハグ食べていた。

それから木の実がたくさん入ったパンを買って食べて、リンゴのような果物を食べた。

パンもリンゴも美味しかったので多めに買ってアイテムボックスにしまっておいた。

そう、アイテムボックスの性能を確かめたかったので、さっきの串焼き屋にもう一度行って、串焼き肉を10本買い、ボックスに収納した。

アイテムボックスは時間が進まない、暖かいものは入れた時のまま冷めないって機能がこの世界でもあるのか確かめるつもりだった。

異世界転移小説ではほぼほぼそうだから!期待してるぞ、アイテムボックスよ!

それからこの町の事をアリサに聞いた。

この街は東西南北に大通りが走っており、南北(縦)の大通り沿いには色々な商店があり、東西(横)の大通り沿いには店の他に宿屋が多くあるそうだ。

街を円に例えると、十字にぶった切った大通り中央から右上と左下に市場が集まった広場があるそうだ。

中央左上にはギルド、右下には神殿や教会などがあり、東西南北それぞれ細い路地を進んでいくと家や農地があり、街を大きく囲む塀の門の近くの内外にスラムができているそうだ。

オススメの宿屋もわからない、という事だったので、だったらアリサが住んでいるところに一番近い宿屋に案内してもらことにした。

アリサ達は西門近くのスラムに住んでいるそうで、その日俺は西門近くの宿屋に泊まる事にした。

ちなみに俺が今日この街に入ったのは南門である。

宿屋の前でアイテムボックスからパンとリンゴ、串焼き肉を取り出してアリサに持たせた。

アイテムボックスは思った通り時間が止まっているようで、串焼き肉は今焼いたばかりのように熱々だった。

それから今日いろいろ案内をしてくれたお礼に銀貨1枚を渡そうとしたら、

顔をブンブン振って断られた。

ふむ。

これからもちょくちょく何かを頼むかもしれないので、頼みやすい値段(?)で、とりあえず銅貨を1枚渡した。

それでもアリサはあたまをペコペコと下げていた。

俺が宿に入るまでペコペコ頭を下げ続けていた。頭がもげちゃうんじゃないかとちょっと心配になったよ。