軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

189話 王都の女神へ

王都に来れば、この世界に来た謎が解けるのではと思っていた。だが、謎は深まるばかりだった。

俺として謎は謎のままでいいのではと思ってもいるのだが。

魔法一覧を書き出した事で解ったのは、俺とレモンさんがこの世界で覚えている魔法に多少の違いがある事だった。

俺にあってレモンさんにない、レモンさんにあるが俺にない魔法があった。

同じシステムのゲームをやっていたのに何故違いがでるんだとタウさんは頭を抱えていたが、ここは異世界であってゲーム世界ではない。

同じシステムで俺たちが動いていなくても不思議じゃないと思うんだがな。

俺が面倒臭がりでアフォだからそう思うのかも知れない。

悩んでいるタウさんを引っ張り出して王都の神殿にある女神像へ向かった。

血盟加入には加入する血盟の盟主が必要だからだ。

アジトから外に出て周りを見渡し驚いた。やはり俺がいた街とは規模が違う。

店の多さ、人の多さ、それから神殿の大きさもかなり違う。

神殿の前の道は登り坂になっていて、その坂の先はぐるりと塀で覆われている。

「あの先は貴族街になっていて最奥が王宮だ」

なるほどぉ、あっちは近づいたらダメな場所だな。

山の手だし立派な建物も多いから、方向音痴の俺でもうっかり踏み込む事はないだろう。

「門があって門番の騎士もいるからカオるんが迷い込む事はない。あ……レモンさんはたまに門の騎士に道を聞いてるらしい」

俺も気をつけよう。

血盟加入の女神像は神殿の中にあった。

俺の街の女神像は神殿と教会で囲まれた中庭にあったが、ここ王都は神殿の部屋に並んでいる十体の女神像のうちの一体だそうだ。

女神像の頭上に小さな王冠があった。

タウさんと同時に女神像に触れると目の前に文字が現れた。

『血盟月の砂漠に加入しますか YES/NO』

俺はYESに触れた。

タウさんの方にも何か表示されているようで、空中で手を動かしていた。

俺のステータスの『クラン』の欄に『月の砂漠』が表示された。そこに触れると画面が切り替わって血盟員一覧が表示された。

タウロ[盟主]

パラルレンダ

カンタ

ミレイユ

アネッサ

ゆうご

リンダ

リドル

レモン

自分を入れて10人か。

10年前俺がやってた頃はもっといたはず、血盟員は50人がMAXなのだが、満員で断っていると聞いた事があった。

「今は10人なんだ…」

「ええ。この10年でゲームも大分廃れましたからね。カオるんは一番盛り上がってた頃にやめたでしょ? ここ数年はずっとこのメンバーですよ。レモンさんの加入に皆驚いたくらいです。この時期から?ってねw 僕らは経験値稼ぎにリアル人生を費やしているからやめるにやめれないって感じですかね」

「そうか……。この世界では増やさないん?」

「そうですねぇ、色々悩んだんですが、今のところはこのメンバーでいくつもりですね。パラさんやリンダさんの配偶者の方を入れようかという話も出たのですが、家族は家族として別にしました。ああ、リドル君は行く所に困っていたので全員の賛同を得てから加入してもらいました」

「そっかぁ、なるほど。弁当屋仲間もクランに入れて貰おうかと思っていたけど、あっちはあくまで弁当屋主体だからな。あれ? ちょっと待って、ゲームの流れで俺クランに入ったけど本業は弁当屋が主体だからな」

「はい。カオるんは昔からダンジョンや狩りよりまったりが好きだったでしょ? 皆もわかってますよ」

「そっか、それなら。うん。あ、そうだ、あっちの仲間は弁当血盟を作ってもらうって手もあるか。血盟を作るのに条件とかあるん?」

「ありますね。血盟アジトを持っている事が条件です」

「血盟アジトって何処かから購入するん?」

「いえ、本人名義の建物をギルドに申請するだけです」

「ムゥナの街の申請も王都で出来るんかな」

「出来ますよ? 王都に住んでいないクランでも申請していました」

なるほど、この件は持ち帰ってやまと屋会議案件だな。山さんあたりが盟主で弁当屋クランを作ってもらうか。

「血盟って稀人だけか? この世界の冒険者とかは無理なんか?」

「ああ、ステータスが見えないから無理みたいですね」

そりゃそうか。

そうなると、山さん達に態々血盟を勧めるメリットってあまり無いか。

やまと屋の中でも山さん、ヨッシー、ユースケ、あっちゃん、ユイちゃんの5人しか血盟に入れない。

開拓村の元やまと社員達と今更またグループを作るのもな。皆自分の道を進んでいる今、やまと商事に拘って集めるのも意味ないな。

何となく感じていた、女神さまは公平ではない。けれど、色々な『助け』はくれている。

貰った『助け』を各自がどう活かすかだよな、いや、貰いすぎの俺が言うのも何だけど。

やまと屋は稀人も現地人も一緒になって上手く行っている。血盟なんていらないな。

「王都に、血盟多いんか?」

「そうですねぇ。アジトを持てなくてパーティを組んでいるだけの所も多いです。あとはやはり人数の問題ですかね。血盟同士で稀人の取り合いをしていますね。うちのメンバーにも勧誘があったみたいです。まだダンジョンに夢を求めているんでしょうかね、ほら、王都の近くにもダンジョンありますから」

「ダンジョンのための人数集めか?」

「ゲーム感覚が抜けないんでしょうね。うちはメンバーの年齢も高いしそれぞれリアルもしっかりした社会人が多かったですから」

そうだな、若くて異世界転移したら「俺TUEEE」になっても仕方がないか。

けれどそんな血盟は怖い、生き残れない気がする。

話しながら神殿の女神像案内をしてもらった。

女神像は左右の壁に間隔を空けて合計10体が立っていた。

右奥が王冠をつけた血盟加入の女神、こちら側が魔法の女神、左奥に三体、倉庫女神と鍛治の女神とポーション作成の女神が並んでいる。

残り5体は触っても特に何も起こらないそうだ。

タウさんは用が済んだとアジトへ戻って行く。

俺は王都の要所をブックマークして歩くと言ったらここで待つように言われた。

「王都で迷子になるのは目に見えていますからね。カンさんかミレさんを寄こします」

そう言って帰って行った。直ぐにテレポートでふたりがやって来た。

「カオるん、王都ブクマするんだって? 俺らが登録してる場所でいいかな」

「おう、助かる。全然わからんから適当に頼む」

「じゃあ観光案内しながら行くか」

「王都は広いですからね。反対ならよかったですね」

「ああ、カオるんならエリアテレポート使えるもんなー」

「レモンさん誘ったんですけど、まだエリアテレポート覚えてないそうです」

そんな話をしながら王都の街を歩き回った。

王都に市場はいくつもある。そのうちのひとつ、アジトと神殿の間くらいにある市場で休憩を取った。

いやぁ、俺たちオヤジ3人だからすぐ疲れる、と言ったら「俺はまだ36歳だ!」とミレさんが怒った。

流石に王都程の広さになると歩いてのブックマークはかなり大変だった。

昨日入った北西端の門はブクマした。アジト、ギルド、神殿もした。今いる市場も。

次はどこにするかと話しているとミレさんが顎に親指を当てながら提案して来た。

「ちょっと気になってるとこがある。他のクランから聞いて行ってみたんだが。東南の市場よりもっと先の、商店が集まっている通りにある店、名前がなひょうえ」

なひょうえ?

うちの近所にあった焼き鳥屋と同じ名前だ。あ、日本の家の近所の事だけど。あそこチェーン店だったのか?個人経営っぽい小さい店だったけどな。

ミレさんが俺をジッと見る。

「ゲームでさ、カオるんやめる一年前くらいに店出さなかった?」

はっ?俺?

…………! 出したわ。

商店システムが始まって、課金だったけど買った、店舗。1番安い、小さな店舗買った!あ、それで店の名前が思いつかなくて近所の焼き鳥屋から…。

「やっぱりカオるんの店かぁ。ずっと閉まったままだからカオるんはこっちの世界に来なかったのかって思ってた」

「あ、うん、俺の店。ナヒョウエ。右隣がゴンザエモン、左がええと……」

「スケサンカクサン」

「そう! それ。WIZが3人並んで店出したんだ。それから少しして俺ゲームやめたから忘れていた。俺が消耗品の矢や料理で、ゴンザがスクロール屋だっけか? で、スケカクがPOT屋だ」

「スケサンカクサンのWIZは亡くなった。店はギルドが転売してた」

「え……あの人、亡くなったんだ」

「うん」

「ゴンザエモンは?」

「ゴンザエモンは紙不足で店を閉めてる」

スケカク、亡くなったのか。名前が思い出せない。そんなに絡んでなかったからな。ただ、会うと挨拶はしてたっけ、あ、そうだ、弥七さんだ。

水戸黄門が好きでキャラ名は風車の弥七から取ったって言ってた。

スケサンカクサン、亡くなったのか。

「どうする? 行くのやめとく?」

ミレさんに気を遣わしてしまった。

「あ、ごめん。行ってみたい」

「ここからちょっと遠いけど、カンさんもいい?」

「ええ、暇ですから」

3人で俺の店、ナヒョウエに向かった。

あった、三軒並んだ小さな店。

店と言ってよいのかってくらい狭く、客はふたりも入るといっぱいだ。店員側は立って接客、直ぐ後ろの扉を入ると倉庫と制作台になっていたはず。

スケサンカクサンの扉には『売』の羊皮紙が貼られていた。

うちとゴンザエモンはクローズの札がぶら下がっていた。俺は裏口から中に入り、店側に回って扉の鍵を開けた。

ミレさんとカンさんが入ってきた。

店の棚に置いてあるのは矢だ。シルバーアロー、ミスリルアロー、オリハルコンアローが、それぞれ10本ずつの束だ。

「普通の矢は置いてないんですか?」

「うん、あのゲームのさ、弓職の人は大概無限の矢筒を持ってたからな。普通の矢は売れないだろうと作らんかった」

「そうですか。僕は剣エルフですが、この世界に来て弓に変えようかと思ってるんです。やはり接近戦は怖い」

「わかるー。カンさんはエルフだからいいよなー。俺はDEだからツブシが効かないよなー。俺も正直、接近戦嫌なんだ…。結構みんな真剣に考えてるよ。遠距離にしようかって」

「ゲームは近くで叩いた方が経験値が良かったから、前衛職ばかり残りましたね。WIZ職はカオさんがやめたのと同じ頃にグッと減ったみたいです。」

「皆はセカンドとかないの? 倉庫に別キャラの武器装備とか」

「最近まで続けて来た人は1キャラ集中で育てている廃人ばかりだったからなぁ」

「レモンさんみたいに途中で来て、続く人は珍しいですね」

「そっかぁ」

「矢以外は? 何を置いてるんだ?」

「ああ、バフ付き料理置いてる。これがメニュー」

ふたりはメニューを覗いて盛り上がっていた。

「うわ、バジスープとかあるw」

「ゲームだとワンクリックで食べてバフ付きますけど、実際戦ってる最中にスープ飲んだりステーキ食べたりって出来るんですかね」

「いや、普通に無理だろうw」

「バフ時間短かったですよね? 狩り前に食べてもすぐにバフ切れになりますね」

俺はアイテムボックスの中の料理に触れてみた。やはり詳細が見れる。

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バジリスクスープ

効果:MP回復速度上昇

効果持続時間:120分

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「うおっ、効果時間延びてるぞ、バジスープ2時間だって」

「え? 2時間? 長すぎじゃないですか?」

「ゲームじゃ、30秒とか、よくて5分だったよな? 料理使えねぇって声が多かったぜ?」

「システム変更とかあったのか?」

「いえ、無いですねぇ」

じゃあ、この世界に転移した時に変わったのか。魔法とかの持続時間やMP消費もかなり変わったからな。

「使えるバフ付き料理ならかなり売れそうですね」

「今日から開店するの?」

「いや、街の弁当屋もあるし、こっちは週一で短時間オープンって感じかな。うちの街のダンジョンで果物採れるし、果物を置いてもいいなぁ。バフとかないけどw」

そうして、ナヒョウエをブックマークしてからアジトへ戻った。