軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

166話 ダンジョン最上階?

朝が来た。

昨夜はキングさんに警戒を頼んだが特に何も起こらなかった。

『39F』も、ただのセーフティゾーンのようだ。

軽く朝食を済ませて不要な荷物はアイテムボックスへ。

「この上の階、『40F』はおそらく、いや、間違いなくボス部屋だろう」

ゴルダは皆んなが聞こえるような音量でトツトツと話し始めた。

身支度をしていた皆んなもいったん手を止めてゴルダに注目する。

「ここまで来れたのも皆の協力があってのものだ。礼を言う。これから40Fへ上がるが、ボスを倒すためでは無い。40Fがこのダンジョンの最上階か確かめるのが目的だ。そしてここまで来た誰ひとり欠ける事なく帰還する」

皆んなが帰還スクロールをしっかりと確認している。

ここまでサモン頼みで何となく上がってこれたが、ボス部屋はそう簡単にいかないだろう。

「ボス部屋に入って魔物を確認したら各自即帰還でいいん?」

「いや、帰還の合図は出す。皆は即時スクロールを使えるように持っていてくれ」

「ボスは倒さないんですか?」

「この人数じゃ無理だろう」

「そうね。通常なら少なくても8人パーティが4つは必要ね」

「今回は地図作成が目的だった。この短期間でここまで来れたのは僥倖だ」

「そうね。カオの召喚獣のおかげね」

「だな」

「あの、ボスの確認だけなら僕らは先に帰還した方がよくないですか? 足手まといにならなくて」

「うむ。それも考えた。が、ボス部屋でなかった場合、地図作成にヤマカー達は必要だ。悪いがこの先も付き合ってもらいたい。ただ、危険を感じたら即帰還してほしい」

なるほど。そうだよな、やまとのビルと同じ階数と断言は出来ないもんな。

俺たちが中にいる間にまたニョキニョキと伸びてる可能性もある。(嫌だが)

「カオ、一応念のため召喚獣を出しておいてくれ。ボス部屋で何が起こるかわからん」

「わかった。あ、そうだ。今日は違うのを出す」

昨日はオークキングだったが、俺が出せるサモンモンスターで1番レベルが高いのはキングバグベアーだ。

それを召喚しようと思う。

キングバグベアー。そもそもバグベアーが何なのかよくわからんが、ベアーというからには熊の一種か?

しかしゲームの画像は全然クマっぽく無かったんだが。毛が生えてなかったし?

いや、PC画面が小さくてよく見えないだけでもしかしたら体毛はあったのかも知れん、知らんが。

「サモン、キングバグベアー!」

ドスン!!!

三体のデカイやつ出た。巨漢の熊?いや、これ、熊なん?

体長3、いや、4メートル以上ありそうだ。

この世界に転移したとき、やまと商事の資料庫の中で出さなくてよかった。出したら天井ぶち破ってたな。

ゴルダ達も目を剥いていた。ゲームじゃそんなに大きく見えなかったんだよ。俺のキャラクターの2倍くらい?

あ、そっか、キャラの身長が180センチだとしたらKBBは360センチ以上か。うん、納得。

そして俺たちは『40F』へ向かった。

俺はサモンを一旦消した……。39Fの扉を潜れなかった。

ボス部屋に入ったら出すよ。

ゴルダを先頭に階段を登る。

壁に『40F』の文字。

しかし岩の扉は今までと違い、凝った彫刻で縁取られていた。しかも扉のサイズがデカイし、扉の前も広い。

いかにも、だな。ボス部屋確定。

俺はここでKBBを出した。うんうん。潜る事が出来るサイズだ。

ゴルダのすぐ後ろにフィルとラルフ、その後ろに俺、山さん、キック、の3人が密集して立ち、その後ろにナオリンとリザイア。もちろんKBB3体も扉の近くに立たせている。

サモンを前面に立たせたのには訳がある。

実はゲームで、とあるダンジョンのボス部屋に入った時、俺が入った途端にドアが閉まりサモンがドアの外に置き去りになった事がある。

弱WIZひとりで戦えるわけないじゃん、即エンドしたよ。

ボス待ちしてた次のグループに大笑いされてワールドチャットで晒し者になったよ。

『サモン置いてひとりで入った強気のウィズがいるぞwww』

『サモン置き去りwwww』

『飼い主を罠に嵌める召喚獣wウケる』

く、くっそぅ。

ゲームだからエンドしても神殿でリセット出来たけど、ここでは同じ過ちは犯さないぜ。

KBBくん達よ、扉が開いたら俺より先にゴーだからな。

ゴルダが皆んなを振り返る。

帰還スクを握る手に力が入る。

ゴルダがナオリンに視線を向けたのが気になり振り返った。ナオリン?左手に帰還スク、右手にスマホ?ボスの動画撮る気満々か!

「行くぞ」

低く響くゴルダの声、床を踏むと扉が左右に開いた。

離れないように全員が中に入る。もちろんKBBも。

何も無い広場だが、セーフティゾーンよりは狭い。つまり、そんなに逃げ場は無いって事か。そして自動扉が勝手に閉まる。(自動だからな)

ボスは、ボスはどこだ?

中央にいた。

ドラゴンやゴジラを想像していたので思ってたより小さくて見逃した。10メートルよりは小さそうなオオトカゲ?結構デカイかw

「バジリスクか!」

「バジリスク!」

ゴルダとラルフが同時に叫んだ。

ふと見るとKBBがバジリスクに向かって走っていったところだった。突入前に攻撃命令を出しておいたからな。

ゴルダの案だが、サモンがボスの目を引いている間に俺たちが帰還をする予定だった。

体長4メートル越えのKBB3体vs10メートル弱のバジ。

あれ?何かいけそうじゃないか?

ゴルダから帰還の声はかからない。

バジが口から黄色いブレスを吐いた。

KBBの一体が石化した。

そうだ!バジリスクは石化魔法を使うんだった。

いや、俺のゲームと全く同じとは限らないから油断は禁物だが。

「カンタマ!」

念のため自分にもう一度かけた。

バジが他の2体の方を向いた瞬間、俺は石化したKBBに近づき石化解除の魔法を放った。

「カーズリムーブ! ヒール! ヘイスト!」

解除のついでに回復と速度上昇をかけ、そしてダッシュで戻った。(←ここ大事。近くにいるとウッカリ死ぬ)

バジは石化のブレスを連続では出せないようで、2体のKBBに殴られていた。

一体が尻尾を掴み、もう一体が背中に乗り殴りまくっている。そこに石化が解けたもう一体がヘッドロックのように顔を押さえ込み口を開かないようにしていた。これで石化ブレスは出せない。

あとはKBBのやりたい放題である。

バジリスクはそう時間はかからずかなり弱っていった。

それを見た俺は俺はアイテムボックスからオークボウと矢をドサッと床に出した。

「ゴルダ! たぶんあのままいける、と思う。KBBがボスを倒す前に一矢当てておいた方がいい。サモンのみでボスを倒すとドロップがどうなるかわからん」

「どうなるんだ」

「知らん」

ゲームではだが、ボスに全く触らなかったプレイヤーにドロップや経験値は入らなかった。

が、今それを説明している時間はない。

俺は直ぐにハンターボウでバジの横腹に一矢を射った。キックが弓を拾いバジリスクに向けて射った。それをキッカケに皆が弓矢を拾い、射始めた。

全員が1回ずつ矢を射ったとき、背中に乗っていたKBBがジャンプしてバジリスクの頭を潰した。

KBBがバジから少し離れた。

どうやらボスを倒したようだ。バジリスクが地面にゆっくりと吸い込まれていく。

そこまで見た途端、俺たちは強制的にテレポートさせられていた。

一瞬で目の前の景色が変わった。

ボス部屋の広場だったはずが、目の前にはダンジョンの塔の入口、背後は森、どうやらダンジョンの外に追い出されたようだ。

慌てて振り返ると皆がポカンとした顔で立っていた。

山さん、キック、ナオリン、ゴルダ、ラルフ、フィル、リザイア、そして3匹のKBB。KBBはフンガフンガしていた。『攻撃』から『待て』に変更をした。

「死霊の森か…」

「ダンジョンの外ですよね」

「何で追い出されたんだろう」

「それ…」

キックが指差した地面には15センチくらいの膨らんだ布袋が落ちていた。

ゴルダが拾い上げて中を確認するとそこには金貨が入っていた。

「金貨だ…」

「ボス討伐完了って事か」

「ねぇ、これ…」

リザイアが自分の首にかかった金の鎖を服から引っ張り出した。

鎖の先には五百円硬貨くらいのメダルが付いていた。

「ん? それが何だ? アクセサリーがどうした?」

「ああ? 俺もある!」

「え? 何だ? リザとお揃いか?」

フィルが自分の首にかかった鎖を引っ張り出す。それを見たラルフが冷やかした。

「あ、僕もある」

「……自分もあった、ペンダント…」

山さんとキックも自分の首にかかった鎖に気がついた。ラルフが慌てて服の中を探る。俺もローブの襟元を探った。

ゴルダもナオリンも首元からペンダントを出して見ていた。

皆んなが無言になっていた。無言になったのには理由がある。

いつのまにかかけられていた鎖の先のメダルの部分に触れると心の中に文字が浮かんだのだ。

『移動する階を選んでください 21F 22F 30F 39F』

はあああああ?

これ、まさか、ダンジョンのテレポート用のメダルか?

40Fのボスを倒すと貰える報酬のテレポートメダル。

30F、39Fってセーフティゾーンにテレポート出来るってことか!

22Fは地上1階部分だ。帰還用か……。

って、いやそれより!21Fって何だよ!

この塔ダンジョンって1階が22Fから始まってるのだ。

22Fから上へ向かって塔が伸びていた。

下へ行く扉や階段は無かったぞ?

テレポート先に21Fがあるってことは、あるってことはあああああ。

このダンジョン、下にも伸びているのか?

「このダンジョンはまだ下へも続くのか」

ゴルダの眉間の皺が深く深くなっていった。