軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15話 (株)やまと商事 中松あつ子②

-------(中松あつ子 視点)-------

半パニックでぎゃーぎゃー騒がしかったフロアが波が引くように急に静かになった。

え?

南の非常口から変んな集団が入ってきた。

なにあれ、コスプレ集団?

一瞬静かになったのも束の間、今度は南の非常口近くにいた人達がキャーキャーと悲鳴をあげ、机の間をぬって押し合いながらフロアのこちら側へと流れてきた。

100人近くがフロアの西側に、机や椅子を押しのけてギュウギュウに集結した。

あまりに密集したため目の前の人の頭や背中で前方がまったく見えなくなった。

さっきの集団を確認したいのに見えないよ。

さっき見えたのは、何かヘルメット?いや、鉄の兜かな?を被った数人。

えーと、中世の鎧兜みたいな金属的な頭とか服だったような?

「この中にあなた方をまとめる世話役かリーダーはおられるか」

すごくデカイ声が聞こえた。

「急いでいるのだ! こちらの言葉がわからぬのか!」

大きな声に皆んながビクっとすくみ上がる。

言葉って日本語……に聞こえるけど、あれ?外国語?耳に入った瞬間は外国語っぽけど瞬時に日本語になってる。

普通に理解できる……瞬間同時通訳?耳の穴に指を突っ込んでみたけど通訳機なんて入ってないよね???

「言葉が通じぬのか!」

さらに焦ったように怒鳴ってきた。

「私が…この団体の長です」

答える部長の声が前方から聞こえた。

部長、副部長とあちらの日本語に聞こえる外国語が何やら話し始めた。

さっきよりボリュームを落としているのでこちらまで内容は伝わってこなかった。

部長が机に乗り、みんなに聞こえるような大声で話し始めた。

「今すぐここから離れる事になりました!第一係から第六係までそれぞれ集まって、各係長は人数の点呼を行ってください!5分後には出発します。副部長を先頭に第一係から順に、最後第六係の後ろに私が付きます。急いで!各係、点呼開始!」

何かよくわからないけどここからどこかへ行くことになったみたい。

ギュウギュウの人混みの中、それぞれの係長の点呼がそれぞれ始まった。

第一係は50人だから大混乱みたいね。

うちの第六係は10人なんだけど島係長どこ行った?

うちの点呼どこでやってる?

モタモタしているうちに、結局点呼が済んだ係から出発し始めた。

人数が多くて点呼に時間がかかっている第一係を待てなかったみたい。

第二係、第四係、第五係が北非常口から出ていき、室内の人数が減ってきたあたりでようやくうち第六係の島係長から点呼がきた。

第三係が出て、置いていかれると焦った第一係とうち第六係がごっちゃに南非常口に殺到した。

「押さないで!」

「ちょっと!痛い痛い痛い!」

「早く出て」

「やだ!置いてかないで!」

「一係が先だから!」

きちんと並ぶマナーの良い日本人、どこいったー。

近くにいた大森ちゃんとはぐれないように手を繋ぎ、何とか非常口の扉を潜った。

そこには非常階段があるのだが、下へ向かう階段は土に埋もれていて、上へ向かう階段は天井がなく外が見えていた。

踊り場まで行くと皆んなはそこからぶら下がって外へと飛び降りていた。

困ったなー。

こんな高い場所から飛び降りて、お腹大丈夫かな。

実は現在、妊娠四ヶ月なんだよね。

やっと安定期に入り、部長、副部長、大森ちゃんと鹿野さんの4人に報告したばかり。

階段を上がってきた部長が気がついたみたいで、その後ろからきた謎のコスプレ男性と何か話してると思ったら、突然その人に抱き抱えられて、ジャンプで飛び降りたよ!

び、びっくりしたぁ。

ついでに大森ちゃんも抱っこジャンプで非常階段の踊り場から降ろされてた。

先に出ていた人達はすでに森の中、樹々の合間を行列になって小走りに進んでいるのが見えた。

後ろを振り返り、やまとビルを見た。

22階じゃなかったんだ。

と、ぼんやり思いつつ、みんなに遅れないように走り出した。