軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06 依頼の完了報告

俺は今日の依頼完了の報告をするため、冒険者ギルドに来ていた。

途中、奇妙な動きをする軽鎧姿の男達が追いかけてきたが、気味が悪いので撒いてきた。

おかげで少し、時間がかかってしまった。

辺りはもうすっかり暗くなっている。

「──おお、ノールか。心配したぜ。大丈夫だったか?」

ギルドの中に入ると、おじさんが声をかけてきた。

「何かあったのか?」

「お前、騒ぎに気がつかなかったのか? 迷宮の入り口の近くで深層の魔物が湧いたらしい。ここいらじゃそうそう見かけねえバケモノだ。大変な騒ぎになってるぞ。お前が派遣された工事現場の近くだったらしいから、心配してたんだが……見たんじゃねえのか?」

「魔物……? いや、それらしき奴はいなかったな」

俺が出会ったのは牛だけだった。

あんなものが街中にいるとは思いもしなかったが。

「そうか。そりゃあ、運が良かったな。その深層の魔物『ミノタウロス』は正体不明の何者かに倒されたって話だが、S級冒険者のパーティでも手こずるような化け物だ」

「そんな恐ろしい魔物が街中に……?」

俺が牛一頭と格闘を演じている間に、そんなことがあったとは。

「幸運だったな。街ごと壊滅していてもおかしくねえ。その通りすがりの男に感謝しなきゃな」

「ああ、世の中にはすごい人間がいるものだな」

やはり、俺はまだまだ、弱い。

それをよくよく自覚しなければならない。

「S級冒険者のパーティでも苦戦する化け物を、たった一人で……か。何者なんだ、その人物は?」

「さあな……それだけの実力が有れば名も通ってそうなもんだが、俺にも分からん。まあ、衛兵隊が総力を挙げて調べてるらしいから、いずれ分かるだろう」

「そうか」

おじさんはそんな風に俺と雑談しながら手早く依頼完了の処理を済ませ、俺に依頼料の入った革袋を手渡してきた。

「ほらよ、受け取れ。お前さんの働き分だ。結構稼いだじゃねえか」

「ああ、そうだな。ありがとう」

「──で、ノール。そろそろまともな仕事に就く気にはなったのか?」

「なんだ、まともな仕事というのは? 俺はもう、冒険者として働いているだろう」

「はぁ〜、前にも言ったけどな。お前、マージン取られてるんだぞ? 今日の働きにしたって、ギルドが噛まなきゃ三割増しぐらい稼げてる筈だ」

「それはまあ、知っているが」

「現場監督の親父も言ってたぞ。あいつは是非とも自分とこに欲しいって。他からも何件もお声がかかってる。お前、引っ張りだこじゃねえか。こんな幸せな状況、いつまでも続くと思うなよ? 今のうちに、いいところ見繕って、安定した所帯持つ準備をだな──」

おじさんのいつもの長い説教が始まってしまった。

もう何度目かわからない。

最近はわざわざ良い求人があった、と就職先の紹介までしてくれる。俺はそんなのはいらない、と何度も断っているのだが……。おじさんと俺の意見は全く合わないが、不思議と悪い気はしない。

俺のことを思って言ってくれているのが、少しわかるからだ。

まあ、俺は冒険者の道を諦めるつもりは無いし、最後にはすべて断るのだが。

俺がおじさんの言葉をいつものように笑顔で聞き流していると、ふと、背後から声が聞こえた。

「──やっと……見つけました」

振り返ると小柄な女性らしきローブの人物がそこにいた。

彼女がローブのフードを外すと、見覚えがある少女の顔が出てきた。

確か──。

「君は、あの時の……まさか、つけて来たのか?」

「……ええ、そうです。失礼かとは思ったのですが──どうしても、お会いしたくて」

この子は、牛に襲われていた女の子だ。

でも、なぜ俺の居場所がわかったのだろう?

つけてきた不審な男たちはちゃんと撒いたと思ったのに。

この子の気配には、全く気がつかなかった。

山の森に生息する野ウサギや狼程度の野生動物になら一切気づかれずに狩りをする程度には俺の【しのびあし】スキルも上達したと思っていたのに、こんな子供に気がつかないなんて……俺もまだまだだな……。

いや、違う。この子は多分、スキルを持っているのだ。

「そうか、【スキル】か。それでわかったんだな?」

「──はい。私も一応、養成所で【 盗賊(シーフ) 】系の訓練は受けましたから。失礼ながら、遠隔探知系のスキルで貴方を探させて頂きました。その方が早かったものですから……」

すごいものだ。

この歳でそんな有用スキルを身につけているとは。

「ということは、君は【 盗賊(シーフ) 】系の職業なのか?」

「……いえ、得意とするのは本来、【 魔術師(マジシャン) 】系で……他は一通り、六系統のスキルを満遍なく、といったところでしょうか」

「そんなに、か? すごいな」

「我が家の方針で、伝統のようなものです。身に付けられるものは全て身に付けよ、と……でも、どれも余技のようなものです。あなたのような方を前に、お恥ずかしい限りなのですが……」

「いやいや、十分に凄いものだよ」

この歳で幾つもの【スキル】、か。

見た目からすると彼女は俺が山を降りた時とさほど年齢は違わないはずだ。

今更ながら劣等感を感じずにはいられない。

「あの──人目もありますから、外でお話をしませんか?」

俺は、どうしていいか分からず、ギルドのおじさんに目配せをする。

するとおじさんは何やら渋い顔をしていた。

「……おい、ノール。お前、一体何やらかしたんだ……?」

「いや、俺は責められるようなことは何もしていないぞ」

「大丈夫です……今なら周囲に人はいませんし、【遮音】と【隠蔽】で外にお話は漏れないようにしますから」

それも【スキル】か。

すごいものだ。

そんなモノが余技だなどと、信じられない。

だが、何故そんなことをするのだろう?

「行ってこい、ノール……だが、相手が相手だ。粗相のないようにな」

「……? ああ、わかった」

粗相のないように……?

一体、どういう事だ?

よく分からないが、俺は言われるまま外に出た。