作品タイトル不明
195 六聖と巨人
「……おいおいおい!? なんだよ、あの馬鹿デカいのは。聞いてねえぞ、あんなの!?」
長耳族(エルフ) から『黒い剣』を取り戻して以来、現地のロロの指輪に向けて放たれる光を頼りに王女たちと合流しようと急いでいた【六聖】の視界に、なんの前触れもなく砂色の巨人が現れた。
商都の中央を我が物顔で闊歩するかのように見えるその異様な物体に、ダンダルグは戸惑い、思わず声を荒げた。
「な、何がどうなってやがる!? 王女は!? イネスは。皆は無事なのか!?」
「昔、どこかでサレンツァの都には王都のように迷宮が中心にある、と聞いたことがあります。となると、あの辺りが『忘却の迷宮』でしょうか?」
「まさか迷宮ごと動き出した……なんてわけじゃないだろうな!?」
「何にせよ、王子の悪い時にばかり当たる勘がまた当たったようだ」
「ねえ、オーケン。あれも 長耳族(エルフ) の仕業?」
「……わからんが。いかにも、奴らが好みそうな手口じゃのう」
都市の中央に聳え立つ、威容の砂の巨人。
それは砂嵐の中で不気味に多量の砂を吸い上げ、尚も膨張を続けているように見える巨大な怪物の周りで、六人は黒い竜の背に乗って飛びながら必死に自分達の救助対象を探していた。
そうして頼りのオーケンの指輪が指し示す細い光を追っていくと、砂嵐の向こうに誰かがいるのを見つけた。
「いた。王女だ。ちょうど指輪の光の先に、ロロといる」
「……おいおい。よりによって、アレの進行方向かよ!?」
王女たちも魔竜の姿に気がつき、【六聖】に向けて手を振った。
「王女とロロは無事のようだ。シレーヌもいる。イネスとノールの姿が見えんが」
「……なんか、周りにロロに似てる子供もいるな?」
「どうやら、目的の『レピ族』の救出には成功したらしいが」
「……このままじゃ、あの子たちもどうなるかわからないわ」
「ああ。思ったより進むスピードが速い」
六人は不安な面持ちで砂の巨人がその巨大な足で進行方向を踏み均していくのを眺めていた。だが、地上を見下ろしていたセインがふと、意を決したように顔を上げた。
「……仕方ありませんね。ダンダルグ、私たち二人であの巨人をくい止めましょう」
「ああ、わかった。この際、仕方な……ん? あれ、ちょっと待って。今、お前なんつった? 聞き間違いかな? 俺とお前の二人であれを止める、って聞こえたんだけど」
「いいえ、聞き間違いじゃないですよ。むしろ、他の誰ができるというんです?」
ダンダルグが水平方向を見渡すと、空を飛ぶ魔竜の上にいて尚、見上げんばかりの砂の巨人が蠢いている。
「……いやいやいや。待て待て、おかしいだろ。あれを止めるとか、どうやって? どう考えても人間が敵う相手じゃないって」
「でも、貴方は普通の人間じゃないでしょう。ほら、しのごの言わず、我々の使命を果たしに行きますよ。ではお先に」
「えっ? あっ、おい!? ちょっとセイン!?」
戸惑うダンダルグの前でセインは笑顔のまま、一人で魔竜の背中から飛び降りた。
「……いやいや。マジかよ、あいつ。なんの迷いもなく飛びやがった」
「どうする、ダンダルグ。あのままではセインが犬死にだが」
「ああ。お前なしではひとたまりもないだろうな」
「……お主、案外薄情じゃのう? お主を信じた仲間を見捨てるとは」
「もう、いいからさっさと行きなさいよ。そこにいられると邪魔」
「──────ちっくしょおおお!!!! どいつもこいつもッ!!!」
結局、ダンダルグはセインを追って飛び降りた。
そうして、着地直後の衝撃と痛みでしばし身体を震わせるダンダルグに、セインは普段と変わらぬ穏やかな微笑みを見せた。
「来てくれると信じてましたよ、ダンダルグ」
「……無理やり、降ろされた感じだがなぁ? だが、改めて眺めると、こいつ────」
地上に降り立ったダンダルグは改めて頭上の巨大な人影を見上げると、その巨躯を震わせた。
「……うん。絶対無理だろ、こんなの。なあ、セイン。やっぱり正面衝突なんて無謀なことやめて、もっと現実的な対応を────」
「さあ、来ますよ、ダンダルグ! 衝撃に備えて!」
「ちっくっしょおおおおおおお!!! 誰一人、俺の話を聞きやがらねェッ!!!」
セインはダンダルグの背中に手を置き、ダンダルグは身構えた。
直後、その頭が雲を貫かんばかりの巨体がその巨大さに見合う拳を振り上げる。
そして、そのまままっすぐ直下に振り下ろすとダンダルグの身体を圧し潰し、無惨な物言わぬ肉塊へと変えた。
「【身体強化】」
「【 超常回復(エクス・ヒール) 】」
────かのように、見えた。
実際、途中まではその通りだった。
巨人の拳の大質量にダンダルグの肉と内臓はほぼ潰され、全ての骨は砕かれた。
だが、それらはダンダルグの背中に手を押し当てたセインの回復術で瞬時かつ強制的に回復させられ、同時に、ダンダルグは頭上で静止した巨人の拳をしっかりと受け止めていた。
そうして両腕に思い切り力を込め、全身全霊で身体を捻り。
自らの全ての 筋肉(にく) が悲鳴をあげ、千切れていくのにも構わずに、膂力に物を言わせて強引に拳を持ち上げた。
そして────
「ダッシャあああああああああ!!!!」
ダンダルグはそのまま、受け止めた巨人の拳を力任せに真後ろに投げ下ろした。
するとダンダルグの叫び声と共に、砂の巨人が轟音を立てて地面に転がった。
空を覆わんばかりだった巨体が地に転び、広範に砂埃を巻き上げるのを見て魔竜の背に残った四人は皆、一斉にため息をついた。
「…………あいつ、投げたな。受け止めるのではなく」
「…………ああ。誰もそこまでやれとは言ってない」
「…………やっぱバケモンじゃのぅ、あいつ」
「その自覚がないのが、なんともね……まぁ、正確にはあの二人がおかしいんだけど」
地上ではダンダルグが両腕で己の身体を押さえ、遅れてやってきた激痛に耐えていた。
一方、大男が絶叫をあげて地面で転げ回っている様をセインは笑顔で見守っている。
「────い、いっでええええええ!!!? こんなの、当たり前のようにやらされる身になってみろよ!?」
「ご苦労様でした、ダンダルグ。やっぱり、大丈夫でしたね」
「だ……大丈夫なわけないだろ!? 今ので俺、軽く十回は『死んだ』んじゃねえのか!?」
「いいえ。私の感覚だと、蘇生回数は『125』回です。一撃で『死んだ』数では間違いなく、今までの最高記録ですね」
「……ああ、くそっ。全然嬉しくねえ記録だ……! なんで、そうなるとわかっててやらせるんだよ、お前らは!?」
「だって。貴方のことを昔からよく知る私たちは、貴方のことを誰よりも信じていますから」
「そんな綺麗事で片付けられると思うなよ……? ああ、痛えし、辛えし。俺、もうやめよっかなぁ……? この 役職(ロール) 」
「大丈夫ですよ。ダンダルグならあと一万回だって余裕でしょう」
「そこまで俺の 精神(メンタル) が持つワケがねえんだよなぁ……? あー、首が痛え。まだどっか折れてるかも」
そう言って肩をぐるぐると回すダンダルグと微笑むセイン。
そんな二人の前で、横たわっていた巨人が何事もなかったかのように両腕をついて身を起こそうとしている。
「……ま、だよなぁ。 地面(ゆか) に転がしただけじゃ」
「ですね」
二人は起き上がる巨人を、ただ呆然と見上げるばかりだった。
そんな様子を空を舞う魔竜の上から見守っていたシグは、隣に佇むカルーに声をかける。
「最前衛が仕事をした。そろそろ、俺たちも行くぞ」
「いや。俺はもう、斬撃だけ 置いてきた(・・・・・) 。【朧刀】」
カルーが手元で幾つかの印を結ぶと、巨人の肩に 設置(・・) された数十の『 罠(トラップ) 』が一斉に発動し、巨大な腕を切断した。
胴体から切り離された砂色の巨大な腕が、轟音を立てながらゆっくりと地に沈んでいく。
腕を地について起きあがろうとしていた巨人はバランスを失い、再び地に崩れ落ちていくが────
「なるほど。敵意に反応し、形を変えるタイプか」
巨人は瞬時に脅威を見極め、残った一本の腕を即座に魔竜に向けて振った。
その太い腕にはまるで剣のような鋭く硬質な突起物が無数に生じており、それは砂嵐を裂きながら、自らに害をなした者をも切り裂かんと、カルーの元に迫ってくる。
それを見たシグは静かにカルーの前に一歩、踏み出した。
「剣の再現度も、仲々だ。だが────」
シグは腰の鞘に手を添え、小さく息を吐く。
「剣は、そのように扱うものではない。【千殺剣】」
シグは己も認識できない 速度(はやさ) で剣を抜いた。
するとその瞬間、優に千を超える斬撃が巨人の腕を襲い、表面を覆うように生成された無数の『剣』をへし折った。そのまま誰の目にも留まらぬシグの斬撃は太い腕を細かく切り裂き、刻み、細切れにし、結果、魔竜を打ち落とさんと力任せに振られた巨大な腕は瞬く間に砂の塵と変じて、その攻撃対象をすり抜けた。
だが────
「……やはり、再生するか」
「ああ。近接戦では一番相手にしたくないタイプだな」
程なくして辺り一帯に強烈な風が巻き起こり大量の砂塵が舞い、巨人の破壊された部位に砂が吸い付くようにして修復を始めた。見る間に、失われた二つの巨人の腕は何事もなかったかのように元通りになり、そればかりか、さらにその体躯はより太く巨きくなっていく。
「……オーケン、そっちの準備はまだか? 可能な限り全力でぶち込んでほしいとは言ったが……」
「長い。いつまで詠唱にかかっている」
「うるさい! こっちだって必死にやっとんじゃい! あとちょっとだけ待っとれい! 良いか。ほれ、よ〜く、見ておれ。これがワシが長年の研鑽の末に極めし、【11重詠唱】。そして、この生涯で最高、最強の秘儀にして────!」
「前置きが、長い」
「ええい! もう、完成したわい! さあ、ともかく刮目せい! ほれっ!」
「……まずい。シグ。ミアンヌ。 魔竜(ララ) に身を隠せ。これは────」
オーケンの手から小さな光の球が放たれる。
それは巨人めがけ、激しい嵐の中でふらふらと頼りなげに飛んでいった。
だが、眩ゆく輝く球体が砂の巨人の胴体に僅かに触れる。
「【 灼熱爆裂(エクスプロージョン) 】」
────瞬間。
眼を灼く極大の閃光が商都を襲う。
同時に誰も直視できない眩い光の中で全てが溶解し、蒸気と化した。
唐突に発現した灼熱の劫火の余波で、周囲の木々、宮殿群の建造物が軒並み薙ぎ倒され、周囲に吹き荒れる砂嵐ごと悉く吹き飛んでいく。
しばらくして鳴り響いた轟音と揺れが落ち着いた頃にカルーたちが見回すと、砂の巨人の身体のおよそ半分、上半身が丸ごと消し飛んでいる。
「……オーケン。やりすぎだ。異国の首都だぞ」
「そっちが全力でやれ、っつったんじゃろうが!? そもそも、あんなの相手に加減なんかできるわけがなかろう?」
半分の大きさになった巨人だったが、もう既に、周囲の大量の砂は蠢き、失った上半身を再生しようとしているように見えた。
「案の定、強力な自己再生持ちか」
「体の半分が消し飛んでも平気なようだな……見た目からも予想はできたが。さて」
「ねえ、オーケン。今の、もうちょっと強く打てたりする?」
「ホッホウ。何、無茶なことを言っとる? あんなのがポンポン打ててたまるかい。今のは使い切りの切り札じゃよ。ま、このワシの技術を以ってすればそんな補助魔導具なんぞなくとも、二倍の詠唱時間さえ掛ければ、今の六割ぐらいの威力で何度でも────」
「じゃ、もうあれ、役に立たなそうね」
「……ホウ?」
ミアンヌとオーケンの視線の先で再生する砂の巨人の皮膚がより硬質化し、溶岩の鎧のような見た目になっていく。
「……ん? もしや、ワシの魔法、対策されとる?」
「そのようだ」
「耐性強化つきの再生、か。これでは不用意に刺激も与えられん」
「ホ、ホッホウ? こりゃあ、いよいよ雲行きがよろしくないのう。これじゃ、せいぜい進行遅延が関の山じゃし、何かするたびにより強力になるとなると……? ん?」
オーケンがふと彼方に眼をやると、空に浮かぶ巨大な船のような影が見えた。
それは神聖ミスラ教国が誇る反重力船、通称『箱舟』だった。
『げ、猊下ァ!? ご無事ですかァ────!?』
『聖敵は何処ぞ!? 我らの聖敵はどこにィ────!?』
『おのれェ! 蛮人どもめ! わ、我らの猊下に、あのようなことを! そ、それだけでなく、も、もしや。あ、あのようなことや、そのようなことまで……!?』
『お、おのれェ!!! おのれェ! おのれェ! おのれェッ!! 猊下に仇なす者、許すまじィ!!』
『……ね、ねえ、みんな? も、もうちょっと落ち着いて……? 一旦、冷静になろ……?』
船の下部に設けられた拡声器らしき魔導具から、複数の声が響いている。
内部からであろう声のいくつかは非常に興奮している様子だった。
「……なんじゃ、ありゃあ?」
「ミスラの『反重力船』が、なぜここに」
「どうやら、救援に訪れたのは俺たちだけではないようだな」
「ちょっと待って。また、ララが」
「上空に行こうとしているな」
「……まっ? まさか、また暴走かのう!?」
「違うわ。指輪の光の先にノールがいないことがわかって、自分で探しに行こうとしてるんでしょ」
「……ああ。なるほどのう。お主はよく、竜の気持ちなんかわかるのう? やっぱ、同類……?」
「では、ララに頼るのはここまでだな」
「ああ、帰りはあの船を借りるとしよう」
「ほら、さっさと降りるわよ、オーケン。早くして」
「ホウ? え? 今? そ、そうは言っても……ふぎゃあ!?」
そうして、四人は王女たちがいる場所目掛け、魔竜の背中から飛び降りた。
そして四人のうち三人は難なく地上へと降り立ったが、ミアンヌに蹴落とされたオーケンだけは地上ギリギリで【 浮遊(フロート) 】を詠唱し、その体をふわりと浮かせ、冷や汗をかく。
「な、なんてことするんじゃ……ミアンヌ!? もうちょっとで危うく、死ぬとこだったじゃろうが!?」
「でも、早く飛び降りないともっと悲惨なことになってたわよ?」
「……ホウ?」
ララが自ら激しい砂嵐の中を突き抜け、遙か上空で羽ばたいている。それは少しでも見通しの良い位置で 主人(ノール) を探そうという意思の表れのように見えたが。
「オーケン先生!」
「おお、お嬢! 無事じゃったか……ん?」
「オーケン。貴方も来たんですね」
「アスティラか。ま、ウチのお嬢のピンチらしいと聞いてはな。ロロもどうやら無事なようじゃの」
「うん。指輪、作っておいてよかったね」
「じゃな」
「ミアンヌ団長」
「……シレーヌ。アレ、なんなの?」
「それが、私たちにもさっぱり……?」
集った皆は不穏に再生を続ける砂の巨人を眺めながらも、合流できたことに一旦、安堵する。
王女とアスティラの横には、ティレンス皇子とシレーヌ。そしてロロと、ロロによく似た姿の子供たちが大小の魔物の背中に寝かされている。
だが、そこにいても良いはずの二人の姿が見えない。
「あいつらはどうした。ノールとイネスの姿が見えんようじゃが」
「それが……私達も、わからない状態で」
「まあ良い。あやつらのことじゃ、心配いらんじゃろ。それより、ここはワシらで引き受ける、お主らは、このまま避難を────」
「────あァ? なんで、こんな賑やかなことになってンだァ?」
王女たちは不意に背後で声を発した不気味な男に振り返った。
「貴方は────ザドゥ?」
再会を喜んでいた面々は、予期しない介入者の登場に凍りついた。だが、そんな緊張には我関せずとばかりに、男はその状況を楽しむように周囲の顔をぐるりと見回した。
「……おっかしいなァ? なんで、クレイス王国の奴らがこんなにゾロゾロと揃っているんだァ? 王女がいるらしいってのは聞いてたが。しかも、お前ら、例の【六聖】って奴じゃねえのかァ? それもミスラの教皇まで一緒とは。不思議だなァ?」
そう言ってニタリと笑う男、ザドゥに対し、その場の全員が身構えた。
「────皆、コイツは危険だ。警戒しろ」
「別に、俺はお前らを殺しにきたワケじゃねえんだがなァ……でも、お前らを放っておいて、今後の仕事に支障きたすと、ちょっと面倒臭えんだよなァ? ……なら。今、ここで殺っとくのもアリだなァ?」
「こんな時にコイツに絡まれるなんて、最悪ね」
「おいどうすんだよ、コレ。こんなことしてる場合じゃねえだろ」
「なんにせよ、放置はできん相手だ」
「仕方ない。この際、戦力を二つに割り────」
「お〜い! ちょっと、待ってくれ!」
と、同時に。
その場の誰もが知る男の声がする。
「……ノ、ノール先生!?」
「待ってくれ。そいつは今、敵じゃない」
「え?」
「……遅かったじゃねェかァ、 依頼人(クライアント) サマァ? 危うく、金にならない殺しが発生するところだったぜェ?」
「悪い。ちょっと道に迷った」
「「「…… 依頼人(クライアント) ?」」」
遅れてきた男へのザドゥの呼び方に、その場にいる皆が一様に首を傾げた。
「……あんなクソでかい目印があるのに、どうやったら迷えるってんだァ……?」
「てっきり、近道になるかと思ったんだが。逆方向だった」
「……余計なことしてるんじゃねェよなァ?」
「ノール先生、ご無事で」
王女は脇で笑う黒い布を顔に巻いた男に油断なく視線を注ぎながら、遅れてやってきた男に歩み寄った。
「……彼が、敵ではないとは?」
「ああ、今は俺が雇ってるんだ。ちょっとの間だけだが」
「や、雇った? そ、それではもう、『黒い剣』も……?」
「いや。そっちは残念だが盗まれてしまった。そいつに」
「???」
「本当は返して欲しいんだがな?」
「だから、もう渡しちまったって言ったろ?」
「ノール。その話だが」
シグが空を舞う魔竜に眼を向けた。
「今、『黒い剣』は 空(あそこ) にある。ララが取り返した」
「……えっ?」
「────あァ?」
「あ、本当だ」
『────グァ』
集った皆が砂塵の舞う空を見上げると、そこでは主人との再会に喜んでいるらしい 魔竜(ララ) が大きく弧を描き、飛んでいた。