軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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気分が持ち直せば、視野が広くなる。

ジークは竜騎士の適性があると判断されるだろう。竜と相性がいいなら、竜の厩舎に出入りするとか、竜と接触する機会が増えるはずだ。反対にジルは騎士団の補助的な雑務に回されるだろう。持ち場が離れることで、自然と二手に別れられる。

よく考えると、情報収集にはちょうどいい展開ではないだろうか。

喜ぶジルにジークは仁王立ちで言った。

「だったら俺も補助に回る。当然だろう。俺はお前の騎士なんだ」

「わたしは陛下の妻です。そろそろ竜騎士見習いだって、陛下の捜索にも駆り出されるかもしれません。竜騎士団の戦力や帝都の情報も手に入れましょう」

「聞け。俺は、お前の、騎士だ」

「わたしは、陛下の、妻です。ということでお願いしますね。万が一正体がばれたとき、ジークのほうが危険な場所にいるんですよ。竜騎士団の内部に入っていくんですから」

両腕を組んだジークは長考した末に、諦めたように後頭部をかいた。

「わかった。だが無理はするなよ。昨日の一件で、隊長をなめる馬鹿が絶対出てくる。多少腕が立とうが、竜騎士になる適性がないってな。扱いも変わるかもしれん」

そのジークの懸念は、ある意味で当たった。

「本日午前は街の巡回でありますか」

「ああ、君には本日、街の警邏に当たってもらう」

「はい、教官。わたしは訓練に参加できないということでしょうか?」

「そうだ。街の中央にある噴水広場に別班が待機している。彼らの指示に従うように。見習いの腕章を目印にするといい」

竜騎士の適性がないと判断されると、見習いでも別の任務が課されるらしい。

(竜騎士になる人物から先に竜の扱いを教える。当然の判断といえばそうか)

全体行動を叩き込むために見習い期間中は平等にしごくのが軍だが、ここは竜騎士団だ。勝手が違うのだろうと、ジルは唇を引き結ぶ。

うしろで忍び笑いが聞こえたが、背筋をのばして、慣れた敬礼を返した。

「拝命致しました! 警邏に向かいます」

「午後の座学に間に合うよう、正午にはこの場に戻るように。――次!」

名前を呼ばれた人間が、びくっと体を震わせたあと、青ざめる。おそらくジルと同じで、竜からの反応が芳しくなかった人間だろう。

何か言いたげなジークに小さく首を横に振り、ジルは訓練場から出た。

座学を受けられるということはクビではない。だが何人かは今日、もう正午までに戻ってこないかもしれないと思った。

(竜騎士団の情報はジークにまかせよう。わたしは市井の情報収集だ)

問題は噴水広場に何が待っているかだ。別班がいるということだが、おそらく竜騎士の適性が低いと判断された者達の集まりなのだろう。

まさか精鋭とうたわれる竜騎士団で、くだらないいじめや穀潰し部署が横行しているとは思わないが、上から下まで清廉潔白な組織など存在しない。窓際部署はどこにでもある。

(まあその辺はクレイトスだろうがラーヴェだろうが一緒か)

見習いには制服は支給されない。腕章のみが目印だ。噴水広場にたどり着いたジルは、周囲を見回して、まばたいた。

この間の試験で竜に踏み潰された噴水の縁に座り、本を読んでいる人物がいる。左腕にはジルと同じ見習いを示す水色の腕章をつけていた。

「あの」

話しかけると、噴水に座っていた人物が顔をあげた。

白い肌に、白金の髪。くわえて簡素な白のシャツを着ているせいで、青みがかった瞳の色が冴えて見える。青年というには早く、少年というには大人びている仕草でこちらを見た。向けられた柔和な笑みに、騎士の豪胆さはまったくない。だが物静かな眼差しは深く、鋭い。

「ああ、君がこの間入団したっていう女の子か。噂には聞いてるよ。その年でずいぶん腕が立つとか」

少し高めの声が優しく響く。

だが決して油断してはならない。ジルは、その理知的な目を、よく知っていた――今から六年後に、いやというほど知り尽くしていた。

「俺はロレンス。よろしく」

差し出された手を、握り返す。どうしてここに、とは問わない。

「ジルです。よろしく」

「ジルか。いい名前だね」

ジルの正体に気づいていてもおかしくないのに、彼はそれをみじんも感じさせず笑う。

そういう腹芸ができる人物だ。よく知っている。

なぜなら彼は、かつてのジルの副官。そして今は、ジェラルド・デア・クレイトス王太子殿下の部下のはずである。