軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

国境を越えた軍艦は、陣形を保ったままの竜騎士団たちの前に、一応停止した。

しかも甲板に出てきたのは、リステアードがサーヴェル領で見た顔だった。ルーファス・デア・クレイトス――クレイトスの前国王。

(これで見間違いの線は消えたな)

ここにきてそれはないと思っていたが、可能性は最後まで手放さない。

ここから戦争が始まるなら、なおさらだ。

「やあ、竜帝の兄君。リステアード、だったかな?」

「頭上から挨拶する無礼をお許しください、ルーファス前国王陛下」

「気にしないでくれ、クレイトスの船は竜を運べるようにできていない。甲板におりてきてもらうわけにもいかないだろう」

手綱を握ったまま、リステアードは一呼吸だけ置いた。年の功だとでもいうのか、ルーファスは笑顔でこちらの出方を待っている。

「上陸許可を出すことはできません」

「アルカ討伐のためだよ。レールザッツから連絡がきてないかな?」

「あいにく、まだ」

「ふむ、困ったね。だが急ぎなんだ。君も知っているだろうが、とにかくアルカは姿を消すのがうまい。このまま通してもらえないかな。そうだ、お茶でもどうかな。僕は一度、竜帝の兄である君とも話をしてみたかったんだ」

「もちろん、竜帝の許しがあるならば最高級の茶葉を用意して両国の未来について話し合いましょう」

槍を握り、リステアードはその切っ先を突きつける。

つかみどころのなさ、底の知れなさ――どこか、弟に似た隣国の前国王に向けて。

「だが今は、その時間ではないようだ。引き返していただこう、そうすれば追わない」

「ははは。君、もっと自分の命を大事にしたほうがいいよ。敵わぬとわからないほど、愚かではないだろう?」

「敵わぬことは引く理由にならない」

切っ先は動かさない。ひるみもしない。

死ぬとわかっても皇太子になった、兄のように。

「僕のうしろには、守るべき祖国がある」

ルーファスがまばたいたあと、組んでいた両腕をほどいて、一歩前に出た。

「いいね、竜帝の兄君。君が初戦の相手であったことに、感謝しよう。きっと君が死ねば戦争がはかどるよ」

一度、ルーファスが瞳を閉じる。

それは祈りの時間――これから先、失われる命や、愛や、理への。

「総員、戦闘開始。対空魔術、展開。我らに女神クレイトスの祝福があらんことを!」

「散開!」

一閃、まるで祝福のように空へと魔力の光が奔っていく。旋回する竜の手綱を握りながら、リステアードは声を張り上げた。

「応戦せよ――我らに竜神ラーヴェの加護ぞあらん!」

竜騎士たちの呼応が、竜の咆哮が、翼のうなる音が、戦争と音と一緒に海風にのって舞い上がった。