軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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――交易都市レールザッツ。

クレイトス王国に対する第一かつ最大の窓口でもあり、ノイトラール公爵領とフェアラート公爵領をつなげるラーヴェ帝国一大きな駅がある、人と金が行き交うリゾート地だ。

さぞ金を注ぎ込んだ派手な都市なのだろうと思っていたカミラは、歴史を感じさせる造りを空から見おろしてまばたいた。

中央の広場にあるのは、竜神ラーヴェを思わせる大きな竜の像。その周囲を重厚な歴史的建築物が美しく取り囲んでいる。海に流れ込んでいく川にはいくつかしっかりとした橋が架けられており、街の隅々まで整備されていた。

一方で、技術の向上を示すように、街端の駅と港に向けて新しい建物が増えていく。白い砂浜にはいかにもといったリゾート地らしいホテルがいくつも並んでいた。

白い砂浜から途切れさせる川の向こう、少々盛り上がった丘陵を切り開いた場所に、レールザッツ公爵邸は建っていた。その敷地は、空から見下ろしても広大だ。街の門から長々と噴水まで続く前庭、鐘楼のついた尖塔がいくつかあり、屋敷というよりもはや城館だ。周りには東屋や小川がある手入れされた広い庭、竜舎と竜の発着場まで広々ともうけられている。ノイトラール公爵邸は竜騎士団の運用を重視し防衛に特化した実用性重視の造りで城塞都市と一体化していたが、こちらは一国の主のような構えだ。

内装も、庶民のカミラから見ても素晴らしかった。華美ではない、かといって安っぽくもない。調度品ひとつとっても上品で重厚な、けれど明るい色合いのものが多く、調和がとれている。訪問客の緊張をほぐすためだろう。レールザッツ公の方針がうかがえる。

とはいえ、竜妃が行方不明なんて聞いたら何を言われるわかったものではない。

(おじいちゃんはいつの間にか消えてるし、も~~!)

レールザッツ公の実弟だ。言い訳してくれると思っていたのに、気づいたときにはロルフは見事に姿を消していた。

「……どうする」

「どうするもこうするもないでしょ、誤魔化せやしないわよ」

案内役に先導されながら尋ねてきたジークに、カミラは開き直る。そうだよな、とジークもやけくそ気味だ。

ジークと共に案内された応接間は、大きな硝子窓から日光を多く取り入れられるようになっており、明るかった。さわやかな風も入り込んで居心地がいい。部屋の隅に積み上げられた衣装箱などのいかにも竜妃への贈り物らしき品々が威圧感を放っているが、深呼吸をして、まずは部屋の奥で待っていた人物に敬礼をしようとした。

が、その顔を見た瞬間、固まってしまう。

「やあ、ちょっとぶりだね。竜妃の騎士たち」

座り心地のよさそうなソファに長い脚を組んでゆったり腰かけて、この国の皇帝が笑う。

「遅かったね。もうひとりは? 逃げたのかな」

「……へ、陛下……なんで、ここに……!?」

「君たちならわかってるでしょ? ジルはどこ」

底光りする金の目に問われ、ジークとカミラはそろって回れ右をする。が、待ち構えていたかのように、レールザッツ公イゴールが入り口を塞いで立っていた。

「ようこそおいでなすった、竜妃の騎士殿。どうなされた、そんなに真っ青になって。旅の疲れが出ましたかな? どうぞ、お座りください」

杖をついた細い老人の体から、絶対に逃がさないという気迫が立ちのぼっている。逃げ腰にカミラは応じた。

「お、お気遣いなく……」

「そうはいきません。愚弟も世話になっておりますでな。さて、弟はどこに?」

「知らん。気づいたらいなかった」

腹をくくったのか、ジークがぞんざいに答える。

「ほう。では竜妃殿下が行方不明というのは? 竜帝陛下がそう言って突然、訪問の先触れと一緒に転移してこられましてなあ。私としてはわけがわからずお迎えした次第で」

なるほど、ハディスがここにいるのは転移してきたからか。先触れと一緒に皇帝にやってこられたイゴールは、さぞ大変だっただろう。こめかみあたりに血管が浮き出ている。

「あなた方がくれば、きちんと説明をしていただけると期待しておったのですが」

「へ、陛下ならローちゃんから事情を教えてもらってるでしょ、ね?」

背後に目配せをすると、ハディスがわざとらしく驚いた顔を作った。

「あの馬鹿竜からは、ジェラルド王子をさがしにいってジルが行方不明になったとしか聞いてないよ?」

「ものすごく悪意のある切り抜きの情報よそれ!」

「さすが陛下の心だな。経緯は間違ってねーところがなんとも」

「やっぱりそうなんだ……ジルはジェラルド王子をさがしに行ったんだ……ふ、ふふふふ」

焦点の合わない瞳でハディスが笑い出した。あとずさったカミラとジークの背を、イゴールが杖で押し出す。臣下たちの攻防に気づいたのか、ハディスがこちらに目を向けた。

「――ああ、ごめんね。大丈夫だよ。一応、状況を報告してくれる?」

カミラが小突くと、ジークが観念して一歩前に出た。

「ジェラルド王子の目撃情報を確認しにいった先で、妙な集団に襲われたんだよ。ロー坊がさらわれちまって、隊長はロー坊を追って、そのまま行方不明だ。ロルフ爺さんの見立てじゃアルカってインチキ集団が関わってるっぽい」

その名前を聞いて、イゴールが顔色を変えた。

「アルカだと。竜妃殿下はアルカにさらわれたのか」

「戦闘があったのは確かだ。あと、直接アルカと関係あるかはわかんねーけど、竜の花冠祭に現れた妙な竜も見かけた」

ハディスは既にローから聞いているのか、特に表情を変えない。

「ただ、隊長はロー坊を助けたあと、レールザッツに行くように命じてたらしくてな。だから隊長以外の全員でひとまずここにきたんだよ。アルカだかなんだか知らねえが、隊長がやられるとは考えにくいし」

「やっぱりジルは自分で追いかけていったのかなぁ……ジェラルド王子を」

地雷に踏んでしまった。イゴールが嘆息し、固まった竜妃の騎士たちよりも前に出る。

「――可能性としては考慮すべきですが、問題はそこではございません、陛下」

ひとり、ハディスに近づいていくイゴールを尊敬してしまいそうだ。