軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

金蒼学級対抗再戦(2)

ジルたちが試合が始まるまですごすために選んだのは、合宿でも使った裏山の屋敷だ。

今回の騒動にも巻きこまれなかったので、変わらずに使える。もう新しい訓練をするような時間はないが、あちらも同じ条件だ。作戦会議に時間を使うことにして、生徒たちを全員、建物の中で一番広い、一階のロビーに集合させた。

「思い出作りが試合かぁ……そこは普通キャンプファイヤーとかやるんじゃないの? みんなでご馳走用意してさ」

「この状況だ。贅沢はできないだろう」

「いいんじゃね? あの試合、蜂起のぐちゃぐちゃに巻きこまれて、色々言われてんだろ。改めて勝負ってのはありだよ、あり」

「でも相手が竜帝っしょ~?」

学級対抗戦前の作戦会議にも同じように集まったから、生徒たちも慣れたもので、各自好きなところを陣取っている。

ジルも定位置に座った。いくつか机を挟んで向かい合わせに並んでいるソファの中央だ。いちばん生徒たちを見回せる位置である。

「陛下が率いているからって、過度に警戒することはないぞ。相手が金竜学級ということには変わりないからな。しかも今回は相手は竜を使えない、武器も同条件だ」

「前より弱くなっている、ということですね」

「そう考えていい。今回は一応こういう地図ももらってるぞ、簡単だけど」

机の上に大きな地図を広げる。どれどれと覗きこんできた生徒は、学級対抗戦で班長を務めた子たちだ。

「今回は最初の陣地だけ決まってるんですね。真ん中の高台から西側が私たちの自陣か……試合開始前にこの陣地の中に部隊を配備しろってことですよね」

「隊も組み直さないとだなー。今回は竜対策がいらないし。全部攻撃に振り切る?」

「人数って今、金竜学級とうちは同じになったんだっけ」

「……ルティーヤ。級長の意見は?」

副級長にうながされたルティーヤに視線が集まる。だがなかなか答えない。

生徒たちの自主性にまかせるつもりだったジルも、つい口をはさんだ。

「ひょっとして、陛下と敵対するのは気が引けるか?」

「そんなのはみじんもないよ。ただ、試合にのった時点で負けてる気がして気味が悪い。ほんとに普通の試合になるの?」

「陛下は不正をしたりしない。ただ……陛下だからな。何か策を立ててくる。でもそれをやるのは金竜学級の子たちだし、陛下自身はすさまじい策士ってこともない……と、思う」

かつて敵国の皇帝として対峙していたときも、ラーデアでパン屋をやっていたときも、唸るような策ではめられた覚えはない。むしろ何もかも吹っ飛ばしてくるあの巨大な魔力に、必死で策を弄していたのは自分たちだった。

「陛下自身が戦場に出てくるなら論外だが、指揮官としての経験ならわたしのほうが上なんじゃないかとみてる」

「その年齢で先生が上というのも、どうなんでしょうか……」

「陛下は指揮官タイプでも軍師タイプでもない。基本、守られる側の人間だし」

「そもそも皇帝が教官やるのがおかしいっての」

うんうん頷き合っている生徒たちに、パン屋をやっていたと教えるのはやめておこう。妻として夫の評判には配慮したい。

「陛下は金竜学級とほぼ初対面だ。皇帝っていう権威はあるだろうが、信頼関係があるわけじゃないから、どこまで金竜学級が陛下の意図を汲み取って策どおりに動けるか。その辺もあっちが不利なんじゃないかなあとわたしはみてる」

「話だけ聞いてると今回はうちが圧倒的有利だよね。金竜学級は一回勝ってるし、勢いもある」

「けど、今度は金竜学級だってマジでかかってくるっしょ。ノイン級長が強いのはアタシにもわかるよ」

ルティーヤが表情を引き締めた。ジルも頷く。

「そうだな、陛下を気にしすぎて戦う相手を見誤っちゃいけない。でだ、ルティーヤ。勝つための策はないか?」

「――僕らはまず、いつもどおりが大事だと思う。竜帝がちょっと策を立てたからって、金竜学級の奴らの魔力量やら使い方が変わったりはしない。一回負けたうえ竜が使えない分、奇抜なことをしてくるかもしれないけど、あくまでこっちは冷静に対応すべきだ」

「うん、わたしも同じ意見だ」

現場の指揮官になる子と方針が一緒なのは、安心感がある。笑顔になったジルからさっとルティーヤが目をそらす。相変わらず素直じゃない子だ。

「と、とりあえず前回のであっちがどんな隊を組んでたか、思い出すだけ思い出そう。全員竜に乗ってたんだから、編制はそう変わらないんじゃないかな」

「前衛、どんな面子だったか覚えてる~?」

「待ってメモ、紙持ってきて。みんなで付き合わせたほうが効率いいよ」

呼びかけ合い、生徒たちが自主的に動き出す。いい学級になったな、とジルはにこにこしてしまう。

(陛下が金竜学級に変なこと教えないか心配だけど……)

「あ」

「どしたよ、ジル先生」

「……陛下の授業、受けたかった」

しん、と微妙な沈黙が広がる。ぱんと手を叩いたのは、女子だ。

「はいのろけ禁止~~! みんな話、続けるよー」

「べ、べつにのろけじゃない!」

「センセ、そういうのは今夜聞くから。ものすごく聞くから」

「だからのろけじゃないって! だって気にならないか!? 竜帝の軍事作戦会議だぞ! なあルティーヤ!」

「ならない」

冷たく切り捨てられ、しょんぼりする。

まあまあと他の生徒になだめられながら、作戦会議は続いた。