軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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南国王が自分の享楽のために作ったという南の楽園は、夜になっても明るい。きちんと舗装され整えられた通路は等間隔で瓦斯灯が備え付けられており、夜に開店するバーやカジノの軒先で光り続ける洋燈の灯りが路地裏にも届く。

昼間の気温が高いせいだろう。行き交う人々も、昼よりも多い。夜からが本番とばかりに、露店が並んでいる通りもある。

日夜が逆転した、眠らない街だ。

(星が見えないな)

ジルは街が一望できる円塔の上で目を細める。ロレンスが立てた計画通りの場所、時間は計画より少し前だ。

人目につきにくいというだけならば、行動するのは気温の高い昼間のほうがいい。だが夜は観光客やそれこそ表にあまり出たがらない商売人たちが動き始めるので、そこに紛れてしまえば見知らぬ顔も見とがめられない。自分の正体をさぐられたくないからこそ、他人を見ない者も多い。そして夜の宮殿であっても出入りが当然のため、門番に少し金をにぎらせれば通れてしまう。まして、王太子殿下の部下という名目があれば外廷に入り込むのは容易だった。

何よりあちこちに灯りがあるとはいえ、夜は夜。とくに街の中でもひときわ光り輝く宮殿となれば、暗闇も濃くなる。

「見える? 封印の魔法陣」

リックとアンディに助けられて、合流場所の胸壁までどうにかあがってきたロレンスに尋ねられた。

宮殿の内廷部分は外壁に囲まれている。ただの外壁ではない。東西南北に建てられた四つの円塔を核に魔術を展開した、魔術の外壁だ。いざとなれば対空魔術の障壁も展開できる円塔は高所に作られているため、宮殿を見下ろせる。

宮殿は十字型に作られており、中央が屋根のない吹き抜けの中庭になっている。そもそもその中庭は護剣を収める場所であるそこからまっすぐ空に向けて、光の柱ができていた。夜に見ると灯りだと錯覚しそうだ。

だが、近づいてよく見ると、光柱にうっすら魔法陣が透けているのがわかる。

「確かに、封印の魔法陣だ。本当に国璽を封印してるかまではわからないが……ジェラルド様のほうは?」

「今のところは予定通り、南国王と親子の語らい中。具体的には話し合いに応じるまで部屋から一歩も出さないと監視中」

「意外とジェラルド様の言うことには耳を貸すんだな、南国王」

「何をたくらんでいるのか楽しみだからのっている、のが本音だろうね」

「お母様はどうしてる?」

ジルの問いが意外だったのか、アンディが眉をよせた。

「隠れ家でいざというときに自由に動けるように――って話したでしょ」

「そーそー。今回、母様は今の戦力には数えないってことになったじゃんか」

「君の手に負えなさそうな封印かい?」

ロレンスの的確な確認に、ジルは首を横に振った。

「そういうわけじゃない。だが、問題はここからだろう」

「確かに、そんなに難しい作戦じゃないからね……ここまでは」

まず宮殿に入れるジェラルドが手引きをし、ジルとロレンスとリック、アンディを引き入れる。それがここまでの作戦だ。

そしてこれから、ジェラルドは南国王の動向を牽制しながらナターリエを助け出す。同時にジルはロレンスと弟たちの補佐を受けつつ、護剣の封印を破り国璽を取り戻すのだ。

「おそらく一番危険なのは、脱出時だ。リックとアンディはロレンスを護衛して逃げるわけだろう? どこまでできるのかと」

「っんだよ、俺らがアテにならないって話かよ……あのな、俺らはもうクレイトス一周の武者修行終わってるしふつーに家の仕事も請け負ってるんだからな」

「母様からはむしろジル姉のほうをよろしくって言われてるよ。本来リックだけでいいところを、俺までここに駆り出されてるのはジル姉の補佐なんだから」

不満そうな弟たちの声に、ジルは苦笑いする。

「そうだったな。余計な心配か。でも相手はあの南国王だろう?」

「そこはジェラルド王子に期待するしかないなー」

「脱出ってだけならいざとなれば母様は動いてくれるし、なんとかなるでしょ」

シャーロットは戦闘の可能性が一番高い、脱出時に臨機応変に動く形だ。今どこに潜んでいるかは、誰も知らない。ロレンスと弟たちも隠しているということはなさそうだ。

(……やっぱり、お母様がいちばん、手強いな)

ロレンスが懐中時計を見た。

「作戦開始の時間まであと少しだね」

ふうっとジルは深呼吸する。

そして、ロレンスの背後に回りこんで足を払い、膝を突かせて腕を締め上げた。

「なっ……!?」

「ジル姉!?」

「遅い」

弟たちの間合いは把握している。そもそもジルとの戦力差は読めるはずだ。だがそれ以上に、ジルの突然の行動に驚いているのか、啞然としている。

ロレンスでさえ息を殺してこちらをうかがっているのだから、当然だろう。

愛しさと切なさをこめて、ジルは唇をゆがめる。

「わたしを舐めすぎだ、ジェラルド様も、お前たちも――陛下も」