軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

742 次の滞在先へ 2

マイルとメーヴィスは、急停止した。

技量も何も分からない、見知らぬ者が5人も乱入したのである。そこにマイルとメーヴィスが突っ込めば、 味方撃ち(フレンドリーファイア) ……味方の剣が当たる可能性がある。

なので、男達が危なくなればすぐに援護に入れる位置で、剣を構えたまま待機するしかなかった。

レーナ達魔法組も、 呆気(あっけ) にとられてはいるが、果たすべき役割が変わったわけではない。マイル達と同じく、男達が危なくなればいつでも攻撃魔法で支援できるよう待機を継続している。

そしてマイルとメーヴィスが突っ込んだ場合よりも自分達の 出番が来る(・・・・・) 可能性が高くなると思ってか、その顔の真剣度が増しているようである。

この大陸の魔物は、自分達の大陸にいる魔物より強い。

なので、普通のハンター5人ではオーク3頭はかなり厳しいはずである。

……今まで見聞きした情報によれば……。

なので、クランメンバー達は皆、自分達の出番が来ると考えていた。

しかし……。

* *

「御無事ですか、お嬢様方……」

きらり~ん!

白い歯を輝かせ、マイル達に微笑みかける男達。

(この感じ、どこかで見たような……。

……ああ、エルフの里でクーレレイア博士に執着していた、ええと、ええと……)

「リーベルクのこと?」

「あ、そうです、リーベルクさん……、って、どっ、どうして私が考えていることが分かるのですかっ! 今は、口からは何も漏らしていませんでしたよね、私!!」

頭の中で考えていたことにレーナから突っ込まれ、激しく動揺するマイル。

「口に出さなくても、あんたが考えていることくらいお見通しよ!」

「マイルちゃんは、顔に出ますからね……」

「あう……」

レーナとポーリンにそう言われ、ガックリと肩を落とすマイル。

とにかく、マイル達の予想に反して、5人組は強かった。

そう極端に無双したわけではないが、連携の取れた危なげない戦い方で、ひとりが軽い怪我をしただけで、見事に3頭のオークを仕留めたのである。

これがオーガであれば話は違ったと思われるが、この大陸において5人で3頭のオークをそう大した苦戦をすることなく倒せるというのは、かなり強いと言えるであろう。それも、皆、かなり若い方である。

そして、横入りしての獲物の横取り、という様子は全くなく、あくまでも厚意で、危機に陥った少女パーティを救うべく奮闘してくれたようなのである。

……これは、怒れない。

いくら、オークが3頭ともズタボロになっており納入価格がダダ下がりになっていても……。

いや、それどころか、倒したのは彼らなので、獲物の所有権を主張されれば否定できない。

クランメンバー達は一度も攻撃を加えておらず、『戦闘中の獲物を横取りされた』とも言いづらい状況であるし……。

「あ、あの……、あなた方は……」

レーナが憮然とした顔で不機嫌そうに黙り込んでいるため、メーヴィスが代表者として彼らに話し掛けた。

レーナは、話し合いはメーヴィスに任せるべく、意図的に黙っていたようである。

レーナも、自分の見た目や、こういう場面で自分が話すと状況が悪化するということを自覚しているようであった。

「俺達か? 俺達は、か弱き者、そして美しい乙女の危機を見過ごすことができぬ者達。

……人呼んで……」

「「「「「『 鋼(はがね) の勇者』!!」」」」」

「あ~……」

「マイルちゃんとメーヴィスの同類ですね……」

「うるさいですよっ!」

「たはは……」

* *

『鋼の勇者』はメンバーに魔術師がいないようであったため、オークの一撃が 掠(かす) って少し怪我をした者にポーリンが治癒魔法を掛けてやり、負傷箇所は痕跡すら残さず綺麗に治った。

そしてポーリンが最近覚えた『復元魔法』で傷付いた防具まで綺麗に直したものだから、男達は目玉が飛び出るほど驚いていた。

……それは、無理もない。未だかつて、物質を治癒する魔法が使える者など存在したことがないのだから……。

「……で、どうして横入りして私達の獲物を横取りされたのですか?」

「「「「「え……」」」」」

仲間の怪我を治してくれたおとなしそうな少女が、にっこりと微笑みながらそんなことを言ってきたため、思わず間抜けな声を漏らしてしまった5人。

絶体絶命の危機を救ってもらったのである。ここは当然、瞳をうるうるさせて感謝の言葉が紡がれて、『素敵! 抱いて!!』となるはずである。

そう考えていた『鋼の勇者』の5人は、表情だけは自分達が期待していた通りの笑顔なのに、それに全くそぐわない少女の言葉に困惑していた。

「あ~、こんなにボロボロにしちゃあ、買い取り価格がダダ下がりじゃないの……」

「あ、内臓が切れてる……。うわ、胃や腸の中身がぶちまけられちゃってるよ。これは、ちょっと……」

「「「「あ~……」」」」

「「「「「えええええええ……」」」」」

(((((思っていたのと違う! 思っていたのと違うぅゥ〜〜!!)))))

* *

「あ!」

『鋼の勇者』のリーダーが、はたと気付いた。

(ああ! 目の前に3頭のオークが倒れているのだから、自分達も分け前が欲しくて、権利を主張しているのだな! 確かに、この子達にとっちゃあ見逃すには惜し過ぎる獲物だからなぁ……。

まあ、どうせ俺達も持ち帰れるのはほんの一部だけなんだ。ここは、大人として寛容さを見せるべきだな)

「あ、ああ、勝手に割り込んだのは悪かった。……でも、君達が危ないと思ったんだ。援助を希望するかどうかを確認する余裕がなかったので、そこは勘弁してもらいたい」

「「「「「「「…………」」」」」」」

どうやら、悪気は全くなく、良かれと思って助けようとしてくれただけであるらしい。

そうと分かれば、クランメンバー達も相手を責めることはできない。

……考えてみれば、この大陸で、未成年らしき者を含む少女7人がオーク3頭と 対峙(たいじ) していれば、絶体絶命の危機だと思われて当然である。誰が、オークではなく少女達の方が『美味しい獲物だぜ、ヒャッハー!』と考えているなどと思うのか……。

これは、文句を言えば自分達が獲物欲しさに、助けてくれたパーティに言い掛かりを付けていると思われても仕方ない。

事実、彼らには落ち度は全くなかった。

我が身可愛さに少女達を見捨てて立ち去るのが普通であるのに、 逡巡(しゅんじゅん) することなく真っ直ぐにオークに突入してくれたのである。クランメンバー達は皆、これで文句を言えるほどの恥知らずではなかった。

「……で、どうだろう。獲物は折半、ということでは……」

「「「「「「「…………」」」」」」」

……分かる。分かるのである。彼らが気遣って、すごく譲歩してくれているということは……。

普通なら、全てを彼らのものとして、マイル達には背負えるだけの肉を背負わせて、自分達が運んだ分の納入価格の半分か3分の1くらいを荷運び賃として払う、と言われるようなシチュエーションなのである。

明らかに、この連中は 良い人達(・・・・) である。間違いなく……。

(((((((ぐぬぬぬぬぬぬ……)))))))

そして、遣り場のない思いに、皆、そっと 拳(こぶし) を握り締めるのであった……。