軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

741 次の滞在先へ 1

予定通り、最初に立ち寄った町を出発した一行。

町の者達も、王都から旅に出た 稼げるパーティ(・・・・・・・) がこんな場所に居着くはずがないと分かっているため、居着いてほしいとは思っていても、出発を黙って見送るしかなかったようである。

最初に滞在していたのは、王都から徒歩6日の距離にある町であった。

勿論、それまでの間に町がなかったわけではなく、王都からあまり離れていないので滞在する意味がないため、町の様子だけ見て通過したり、1泊だけで依頼を受けることなく出発したりで、初めて数日間滞在したのがその町であっただけである。

……ポーリンの足と体力、そして精神力が限界だったので……。

そういうわけで、次に数日間滞在するのも、6日くらい後になる予定である。

ポーリンが、歩き慣れてもっと保つか、逆に完全には回復していなくて早く潰れるかによって、数日は前後するかもしれないが……。

「さて、次からの滞在先は、そう簡単には王都のギルドに依頼を出せない距離になりますよね。

難度の高い依頼であっても、町のギルド支部で何とかするか、近隣の町に応援を要請するか、あるいは領主様に願い出て領軍を出してもらうか……。

でも、他の町のギルド支部に依頼するのは色々と大変だし、領軍はなかなか出してもらえない。

ならば、高難度の依頼や面白い依頼、珍しい依頼があるかも……」

「塩漬けの依頼や、『赤い依頼』とかが潜んでいるかもしれないわよ」

マイルの楽観的な言葉に釘を刺すレーナであるが、 そういう依頼(・・・・・・) を求めて旅に出たのであるから、何の問題もない。

「それに、依頼が出されていなくても、事件は起きるからね。

そういうのをギルドを通さない自由依頼として受けてもいいし、後からギルドに申請して、事後依頼として処理してもらうという方法もあるし……」

マイルとレーナの言葉に、そう補足するメーヴィス。

メーヴィスは、困っている者がいるのに『依頼を受けていないから』とか、『タダ働きは御免だ』とか言ってスルーすることができるような者ではない。

なので、相手がお金を持っていなければ、たとえ依頼料が小銀貨1枚であっても受けるに違いない。

そんな安値で受けられては、手数料が少なすぎてギルドから文句が出るであろう。

まあ、それも事後処理ではなく、ギルドを全く介さない自由依頼ということにすれば、問題ないのであるが……。

いつもは強気の態度であるが本当はマイル以上にお人好しでチョロいレーナだけでなく、あのポーリンですら、その辺りはかなり甘い。

駆け出しの頃でさえそうだったのである。お金に困っておらず、出世欲やら承認欲求やらからも解放された今は、もう自由奔放、やりたい放題である。

( クラン(うち) が依頼を受けるかどうかの判断基準は、ふたつだけです。

面白くて、楽しいかどうか。

……そして、困っている人達の助けになるかどうか!

目的のためならば、手段は選ばない。

そして、手段のためならば目的を選ばない!

それが我ら……」

「あ、『 ワンダースリー(わたしたち) 』は違いますわよ?」

「えええええっ!!

……というか、どうして私の頭の中の言葉にマルセラさんの突っ込みが……」

「さっきから、口に出してるわよ!

そして、私達もそんなことは考えていないわよっ!!」

「そう考えているのは、マイルちゃんだけですよね……」

「たはは……」

「が〜〜ん……。

あ、ちなみに、どのあたりから口に出していました?」

「『クランが依頼を受けるかどうかの判断基準は』、ってあたりかしらね」

「最初からですか、そうですか。……ありがとうございました……」

* *

滞在していた町を出てから、5日目。

ポーリンは、まだ大丈夫のようであった。

慣れてきたのか、それともただ痩せ我慢をして平気な振りをしているだけなのか……。

クランの移動速度が自分の能力によって決まる、というのは、かなりのプレッシャーだと思われる。なのでポーリンが無理をするのが理解できるマイル達は、それについては何も触れない。

励ますのも余計プレッシャーになるであろうし、無理をするなと言うのも、それはそれで何だかポーリンの努力を馬鹿にしているように取られるのではないかと気になり、結局、ポーリンの判断に任せるしかないのであった。

そういうわけで、まだ次に滞在する町を決めないまま進み続け、ちょっと狩りでもしようかと街道から離れて森の中を進む一行。

マイルのアイテムボックスの中には旧大陸で狩った獲物が大量に入っているが、ギルド支部に納入する獲物はなるべく近場で狩ったものにするよう努めているのである。

レーナ達はあまり気にしないのであるが、マイルが『魔物の生息数を調査している人がいたら、数が合わなくなって迷惑を掛けるかも』とか、『どこで狩ったか聞かれて、適当なことを言うと付近住民の危険度見積もりが不正確になるかもしれないから』とかの、レーナ達が考え過ぎだと言うような理由でそう主張するものだから、それに合わせてやっているのである。

別に問題になるようなことではないし、狩りをせずにいつもアイテムボックスの中のものを納入するだけというのも味気ないので、それに反対する者はいない。

……それに、何やかや言っても、クランメンバー達は皆、マイルには甘かった……。

「前方100メートル、オーク3!」

「高額買い取り用に、綺麗に狩るわよ! 魔法は万一に備えてホールド、前衛が一撃で首を落としなさい!」

「「「「「「了解!!」」」」」」

いつものように、先頭に位置する上に一番身長が高く、目も良いメーヴィスが最初に獲物を発見し、レーナが戦闘指揮を執る。

ここ、新大陸ではオーク3頭というのはかなりの強敵らしいが、『赤き誓い』と『ワンダースリー』にとっては大した敵ではない。……特に、奇襲を受けたわけではなく、こちらが先に発見した場合には……。

勿論安全のためマイルが探索魔法を使ってはいるが、危険がない限り、マイルはその情報を全て提供したりはしていない。……それでは、皆の練度向上を妨げてしまうからである。

マルセラ達にも、自分達の訓練のために探索魔法を使うのは良いけれど、魔法抜きでの索敵訓練も 怠(おこた) らぬよう指導している。

そして皆が草木に身を隠しながら静かに接近し、……まだ前衛のふたりが突入を開始するより先に、オークに気付かれた。

まあ、当たり前である。突入開始まで魔物や野獣に気付かれないなど、あり得ない。

しかし、獲物が自分から近付いているからか、オーク達は突進してくることなく、そのままの位置で待っていた。

なので、魔術師組は足を止め、前衛……メーヴィスとマイルは戦闘地点が魔術師組の待機位置から少し離れるよう、そのまま進み続ける。

そしてメーヴィスがマイルにタイミングを合わせるために合図した。

「…… 抜剣(ばっけん) ! 突入よ~い……、突にゅ」

「危ない! 援護する!!」

「「……え?」」

メーヴィスの掛け声を遮り、男の声が響いた。

そしてそれに続き、マイル達の前方、オーク達との間に横合いから飛び出してきた、男達。

「任せろ! 絶対に護ってやる!!」

少女達の危機を救わんと、 颯爽(さっそう) と現れた、20歳前後の5人の男達。

普通の少女であれば、『素敵、抱いて!』と即落ちしそうなシチュエーションである。

そしてクランメンバー達は、心の中で呟いていた。

(((((((あ~……)))))))