軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

735 『ワンダースリー』の里帰り 8

あれから、更に数件の依頼を受けた、『ワンダースリー』。

さすがに、ハンター資格維持のための受注が他パーティとの合同であり、しかも結果的には戦闘に参加したものの、自分達は見学者であり付き添いのみとして受けたものとあっては、少し 体裁(ていさい) が悪かったようである。オマケに、常時依頼であったし……。

なので、通常依頼を数件受注したのであるが、すぐに終わるものであまり面倒ではないものを選んだため、ごく普通の、大したことのない依頼ばかりとなった。

そのため、自分が依頼した簡単な仕事のために あの(・・) 『ワンダースリー』がやって来たのを目にした依頼人が目を剥き、大騒ぎになってしまったのは仕方のないことであった。

マルセラ達は、もっと自分達のネームバリューを自覚すべきである。

これでは、マイルのことを言えないであろう……。

そして迎えた、新大陸への帰還の日。

「では、王女殿下、よろしくお願いいたします」

今日は王女とその護衛……今はその任から離れているが……としての立場なので、先日のハンター仲間として会った時のような言葉遣いではない。

「…………」

そしてマルセラの言葉に、無言のモレーナ王女。

別に、『ワンダースリー』に対して怒っているというわけではない。

先日の件を隠れ護衛から国王に報告されてしまい、こっぴどく叱られてしまったのである。

そして命じられた、しばらくの期間の外出禁止、勉強時間の増加、そしてお小遣いの減額……。

凶作対処の時の大儲けやエストリーナ王女との個人貿易……密輸……により稼いでいるモレーナ王女にとってお小遣いの減額は何ともないが、外出禁止と勉強時間の増加は痛かった。

そのため、むくれているだけである。

『ワンダースリー』には何の責任もないことであるが、まあ、不機嫌なのは仕方あるまい。

なので、マルセラ達も苦笑するだけである。

……実は、モレーナ王女に対する外出禁止は、王女教育がないお休みの日はモレーナ王女が毎回さっさと外出してしまうため、それを寂しく思った国王夫妻が『少しは家族との時間を』と考えて、これ幸いと命じたものである。

しかしそんなことには気付いていないモレーナ王女にとっては、ただ不満が増すばかりであった。

親の心子知らず、というヤツであった……。

そして、ずいっと包みを差し出すモレーナ王女。

エストリーナ王女への手土産である。

不機嫌ではあっても、そのあたりの心遣いは忘れないようであった。

「……では、エストさんによろしくお願いしますわ。

それと、私にも楽しめることを何か探してきてくださいまし!」

『ワンダースリー』ばかりが楽しいことをやっている。自分は王女教育やら腹に 一物(いちもつ) ありそうな貴族相手に作り笑いを浮かべながら嫌々相手をさせられているというのに……。

それは、やさぐれた顔でこういう要求が口をついても仕方あるまい。

それが分かっているため、マルセラからはこう返事するしかなかった。

「分かりました。何か良い気晴らしのタネを探してみますわ……」

あくまでも、『探してみる』だけである。

何の確約もせず、『努力目標』に過ぎない言葉を口にしただけ。

まあ、それでモレーナ王女の心が落ち着くなら、問題ない。

「では、収納しますわよ。

面白いこと、くれぐれも頼みますわよ。でないと私、そろそろキレてしまいますわよ。

……収納!!」

* *

「ありがとうございます!」

「「ありがとうございます!!」」

エストリーナ王女にアイテムボックスの中から取りだしてもらい、マルセラに続き頭を下げるモニカとオリアーナ。

「これ、モレーナ殿下からです」

マルセラが差し出した今回の手土産を、にっこりと微笑みながら受け取る、エストリーナ王女。

大した金額のものではなく、ちょっとした食べ物に過ぎないが、こういう気遣いが良好な人間関係を構築するのであろう。

そしてそのまま辞去しようとした『ワンダースリー』であるが、エストリーナ王女に引き留められてしまった。

「……で、母国でどのようなことを? モレーナ様の御様子は 如何(いかが) でしたか?」

退屈して面白いことに飢えているのは、どこの王女も同じらしかった。

これが王子であれば、側近達と一緒に狩りに行くとか、木剣で模擬試合をするとか、城下町に繰り出すとかの遊びもできるであろうが、王女は身体に僅かな傷が付くことも許されないため、殆ど籠の鳥である。

モレーナ王女は、例外である。

そこそこの戦闘力があるし、あの対異次元世界侵略者絶対防衛戦での実績があるし、アイテムボックスの中に護衛兵士1個分隊を入れているし……。

そして、大聖女モレーナ王女は、多少の傷があろうが婚約者に困ることはない。……絶対に。

それどころか、もし怪我をして傷が残れば、それは勲章扱いされるであろう。

……殆ど、高ランクハンター扱いである。

まあ、多少の怪我をしても、マイルから医学知識を教わった『ワンダースリー』の面々による治癒魔法であれば傷跡も残さず綺麗に治るであろうが……。

しかし、エストリーナ王女は同じ大聖女であっても、戦闘力皆無のか弱い少女である。

……しかも、未成年。城外に遊びに出ることなど、許されるはずがなかった。

更に、今では四女のテレス殿下と並んで、国威を示す2本柱のひとりである。

到底、自由な行動が許されるような立場ではなかった。

それに、エストリーナ王女はモレーナ王女のことを敬愛している。そのモレーナ王女の様子を、本人からではなく第三者の立場から語って欲しいと思うのは、無理もないことであろう。

まだ、モレーナ王女からの要求……数時間、喋り続けることを求められる……に較べれば、ずっとマシ。そう考え、溜息を 吐(つ) きつつ話し相手になることを了承する、マルセラであった……。

* *

「えええええええええっっ! モレーナ様が、ハンターの真似事を!!」

「え? モレーナ王女、そのことは話されていませんでしたの? 失敗しましたわ!

い、今の話は聞かなかったことに!」

てっきり、仲良しのエストリーナ王女には話しているであろうと思い込んでいたマルセラ、大失敗である。

……まあ、本人はバレていないと思っているらしいが、実際には母国では殆どの者が知っているし、こちらの国で知られても、どうということはない。古竜を乗り回す王女なのである、今更ハンターの真似事をやっていると知られても、大して変わるまい。

マイルがよく言っている、アレである。『90度のお湯にいくら90度のお湯を注ぎ足しても、水温は90度のままで変わりませんよ!』というヤツ……。

モレーナ王女がモレンとしてこの国でハンター活動を行うことはあり得ないし、モレーナ王女伝説のエピソードがひとつ増えるだけである。そしてこの国でどんな話が広まろうと、それが大陸を渡って母国に伝わることはない。

……何の問題もない。安心である。

しかし、マルセラは念の為に、もう一度言っておいた。

「今の件は、誰にも、……モレーナ殿下本人にも、決して言わないでくださいまし!」

そう、大事なことなので、2回言っておいたのであった……。

* *

「……というようなことがありましたの……」

「「「「…………」」」」

クランハウスに戻り、夕食後にお茶を飲みながら帰省中の話をした、『ワンダースリー』一同。

勿論、最後のエストリーナ王女との件も包み隠さず話している。

いつまた『赤き誓い』がエストリーナ王女と会うことになるか分からないのである。情報は共有しておかなければならない。

……それはいい。それは理解できる。

しかし……。

その『モレーナ王女』とやらにはなるべく会わないようにしよう、と心に決めた、『赤き誓い』一同であった……。