軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

725 苦 情 1

【マイル様、マレエット殿から苦情が来ています……】

神殿で私の身代わりをしてくれているマイル001から、ナノネット経由で連絡が来たらしい。

ナノちゃんが、その内容を伝えようとしてくれているのだけど……。

「え? マレエットちゃんから苦情って、何の……、あ、いい。言わなくていいよ!」

そんなの、 アレ(・・) に決まってるよね……。

【シェララ殿の件で……】

「だから、言わなくていいって言ったのに~!」

今、マレエットちゃんからマイル001に連絡が、……それも苦情がとなると、それしか思い付かないよね~……。

「……どこまでバレてるの?」

マレエットちゃんは、神殿にいるのは私ではなくマイル001、つまり替え玉だということは知っているらしい。

ならば、今回シェララさんがマレエットちゃんに会いに行った理由については、どこまで知っているのか……。

【まず、以前お伝えしました通り、神殿にいるのは替え玉であること、マイル様が現在こちらの大陸におられますこと……】

「ふむふむ……」

【そして、シェララ殿がマイル様達から『人間の子供を愛でる趣味を持つ古竜の存在』と『マイル様の知り合いである人間の 少女(幼生体) が向こうの大陸にいること』を教えられたこと……】

「……う、うんうん……」

【そしてマレエット殿の名前を口にしてしまったことと、尋ねてきたシェララ殿にマイル001がその居場所を教えたこと……】

「全部じゃないのおぉ~! しかも、マレエットちゃんの居場所である、アウグスト学院の場所まで教えたって……。

そんなの、私達がシェララさんをマレエットちゃんに押し付けたって思われるじゃないの!」

【いえ、事実、その通りなのでは?】

「うっ……」

確かに、どう見てもその通りだ。

マレエットちゃんは私に懐いてくれていて、私に対して表立って怒るということはない。

……でも、ポーリンさんのような、うふふ、と笑う笑顔の下で 蠢(うごめ) くドス黒い感情が湧かないとは限らないよね……。

「ヤバいですよ、これは……。ナノちゃん、何かいい案はない?」

【自業自得では?】

「それは分かってるって! それを承知で、アドバイスを求めてるの!

いつも言ってるじゃないの、『もっと私達を頼ってください』って!」

【……まあ、言いましたけどね、確かに……。

でも、それはこういう場合のことでは……】

「いいから! そんなの、どうでもいいから!!

私の座右の銘のひとつに、『背に腹はかえられぬ』っていうのがあるの!」

【……】

「だから、何かいい案をお願い!」

【仕方ないですね。では、こういうのは如何でしょうか?】

「うんうん、何?」

【あの古竜の少女を、別の 子供(幼生体) に押し付ける!】

「何ですか、それはああぁ〜〜!!」

【いえ、マレエット殿は古竜に纏い付かれるのがお 嫌(いや) な様子。……ならば、それが嫌ではない者に古竜の執着対象を変えさせれば良いのですよ。

古竜から見て可愛く思えて、古竜との交流を嫌がらない者に……。

そういう人物に、心当たりがあるでしょう?】

「あ……。

そういえば、レニーちゃんは元気で小さくて可愛いし、『古竜の加護がある宿』として宣伝したり、古竜に乗って空の旅、1回金貨1枚、とかで、大喜びで稼ぎまくり……、って、駄目駄目!!

クーレレイア博士も元気で可愛いし、古竜の背から落ちても魔法で身を護れそうで安心だけど、……好奇心旺盛なクーレレイア博士だと、古竜の里に乗り込んで、色々と迷惑を掛けそうだから、ボツかなぁ……。

ルイエットちゃんは……、絶対に駄目!! ルイエットちゃんとシェララさんを一緒にするのは、『混ぜるな危険!!』ってやつだよね!」

【……それには、同意します】

「う~ん……。

リートリアちゃんは、全力で拒否してくるだろうし、他には……、あ!」

* *

ずぅん……。

『来たわよ~!』

「「「「「「ぎゃあああああああ〜〜!!」」」」」」

王宮の中庭に、古竜が着地した。

……言わずと知れた、シェララである。

そして……。

『モレーナって幼生体、いるかしら?』

ここは、マイルの母国であるブランデル王国の王宮である。

まだ一度も古竜が降り立ったことがなく、そのため古竜に対する耐性が全くない……。

……そう。

モレーナ第三王女は、売られたのであった。

マイルとマイル001、そしてマレエットによって……。

モレーナ王女であれば、古竜と友誼を結べることを歓迎するであろう。

ふたりとナノマシン達の意見が、そう一致したので……。

なのでマイルとマレエットは、自分達が王女を売ったとか、シェララを 擦(なす) り付けたとか思っているわけではない。

……良いことをした。

互いに、望んでいる者同士を引き合わせてあげた。

本当に、心の底からそう思っている。

……と、自分自身に思い込ませようとしていた。若干の罪悪感を誤魔化すために……。

* *

「……ケラゴン様?」

『どうして人間達はみんな、この私を雄だと思うのよおおおォ〜〜!!

……って、あなたがモレーナ?』

建物のベランダから大きな声で話し掛けてきた少女に向かって、一応、乙女として抗議はしたが、人間には他種族の者は各個体の見分けがつかないということは既に知っているため、軽く流したシェララ。

「あ、ハイ、そうですが……」

さすが、ケラゴンの背に乗って大陸間を往復しただけのことはある。

古竜も、話してみればそう無体なことばかり言うわけではなく、ちゃんと知的生物として会話できる。そう知ったからか、全身の勇気を振り絞って、堂々とシェララと会話する、モレーナ王女。

王族が、臣民にみっともない姿を見せるわけにはいかない。

おそらく、そう考えてでもいるのであろう。

(……大丈夫! 人間より優れた知性を持つ古竜様が、無茶なことを言われるはずがないですわ!

それも、私を名指しで訪ねて来られたということは、何か特別な理由があるはず。

そして、 王宮(ここ) に来られたということは、私が王族であることもご存じだということ。

あのケラゴン様も、見た目は恐ろしいですけど、温厚で優しいお方でした。ですからこの方も、無茶なことは言われないはずですわ……)

そう考え、懸命に心を落ち着かせようとしていたモレーナ王女であるが……。

『あなた、私の愛し子になりなさい!』

「無茶振り、来たああああァ〜〜!!」