軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

721 えへ、来ちゃった! 7

「すみませ~ん、ザルムさん、おられますか~!」

シェララと共に、古竜の里へとやって来た、マイル。

『『『『『『彫り師人間、キタ~!!』』』』』』

どうやら、ここではマイルはそう呼ばれているようである。

『おお、マイルではないか。

……で、そちらの御令嬢はどなたかな?』

(え? いや、まあ、古竜同士なんだから少女だというのは分かるだろうけど、上流階級の娘だってことが分かるの?

ドレスを着ているわけじゃないし、高価な装飾品も身に着けていないし、金髪の縦巻きロールとかでもないのに……)

どうでもいいことを考えているマイルであるが、同じ種族であれば分かるのであろう。……多分。

「あ、こちら、私達の出身地である東の大陸の氏族長の御令嬢、シェララ様。

この方は、私達が色々とお世話になっている、ザルムさんです」

互いを紹介する、マイル。

シェララを少しでも良く紹介するために、御令嬢扱いである。

すると……。

『おお、遠くから、よくお越しくださいました!』

『むさ苦しいところですが、どうぞこちらへ!!』

わらわらと寄ってきた他の古竜達が、ザルムが返答するよりも早く、横から割り込んで話し掛けてきた。

(……シェララさん、モテるのですか?)

(偉そうに言うわけじゃないですけれど、モテますわね、客観的に言って……。

一応、里で一番の美少女、と言われていますわよ。それに、氏族長の娘ですし……)

(あ~……)

「実は、ザルムさんにお願いがありまして……」

『うむ、いいぞ。マイルからの頼みは、いつも面白いからな!』

「ありがとうございます!

実は、この子、シェララさんに一週間で人間との交流の仕方を教育していただきたく……」

『よし、任せろ!』

『ズルいぞ! どうしていつも、ザルムばかり!!』

『それは俺が引き受ける!』

『いや、俺が!!』

番(つがい) がいないらしき古竜達が、一斉に群がってきた……。

「いえ、教えてほしいのは、『人間との交流の仕方』ですよ。他の皆さんには、教えようがないじゃありませんか……。

日頃から人間と交流されているザルムさんでないと、うっかり人間を握り潰したり、踏み潰したりしないように教育できないでしょう?」

『『『うっ……』』』

マイルの正論に、反論できず黙り込む古竜達。

こればかりは、仕方あるまい。

今まで積み上げてきたザルムの経験と実績の 賜物(たまもの) なので、この楽しみはザルムが受け取るべき当然の報酬であろう。

『よろしくお願いいたしますわ、ザルム様……』

『うむ、任せるがよい!』

『『『『『『ぐぬぬぬぬぬぬ……』』』』』』

悔しさのあまり歯ぎしりする他の古竜達であるが、他氏族の御令嬢の前で、みっともない姿を晒すわけにもいかない。

なので、おとなしく引き下がるしかないのであった……。

* *

基本的には、ザルムに指導を任せ、マイルは側でその様子を見ているだけであった。

普通の古竜には、人間に関する知識はどれくらいあるのか。

それが分からないマイルには、指導のレベルが判断できないからである。

……しかし、ザルムもとんでもない思い違いをしている可能性があるため、完全に任せきりにするには不安が大きすぎ、目を離すわけにはいかない。

古竜のミスは、ひ弱な人間にとっては、文字通り 致命的(・・・) になりかねないため、ここは決して油断してはならないところである。

『……というわけで、マイル殿以外の下等生物には、決して触れてはなりませぬ。

手の平や背に乗せてやる時も、握って乗せようなどとは考えず、差し伸ばした手の平に自分で乗らせるか、腕を伝って背中に登るよう指示するように。

なお、我らの肩や背から落ちれば、飛行中でなくとも地面に当たっただけで簡単に死んでしまいますから、必ず障壁魔法を張っておくことが必要です。

それと、背に乗せて飛ぶ時は風除け障壁が必要ですし、高空を飛ぶ時は寒さと空気の薄さに対する対策が必要です。

マイル殿のように特殊な魔法で対処できるのでなければ、あまり高度を上げてはなりませぬぞ』

他氏族の御令嬢相手なので、言葉遣いが丁寧になっている、ザルム。

そして、それを聞いたシェララの反応は……。

『人間、ひ弱すぎ!!』

シェララが驚いている……というか、人間のあまりの脆弱さと、取り扱いに関する注意事項の多さに、憤慨しているようである。

(……よかった! レーナさんの指示でシェララさんの教育をザルムさんにお願いして、本当によかった……)

そして、レーナの判断に、心から感謝するマイル。

もしシェララがあのまま人間と接触を 図(はか) っていれば、多数の死傷者が出ていたであろう。

……シェララには、全く悪気はなく……。

優しく触れてやろうとして、プチッと潰す。

背に乗せてやろうとして身体を掴み、ぐちゃっと握り潰す。

古竜とヒト種の不幸な事故、あるあるであった……。

『あ、それと、これは人間との接触には関係ないのだが……。

シェララ嬢、マイル殿に飾り彫りをしていただいてはどうかな? そうすれば、より一層、その美貌が引き立つのではないかな?』

『え?』

「え……」

ザルムの突然の提案に、驚きの声を漏らす、シェララとマイル。

シェララは、モテるとはいっても、古竜としてはまだ子供である。

なので、里における『マイルに角と爪を飾り彫りしてもらう順番争い』には入れてもらえなかった。他の子供竜達と同じく……。

しかし、今は里の大人達はいないし、マイルと仲良しである自分が飾り彫りをしてもらうことをここの古竜達にどうこう言われる筋合いはない。

……ということは……。

『素敵な御提案ですわっ!!』

がっぷりと食らい付いたのであった……。