軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

714 困 惑

『……息災であるか?』

「いらっしゃいませ、ザルム様!!」

「「「「「「…………」」」」」」

王宮にやって来た古竜ザルムを歓迎するテレス王女と、微妙な表情の人々……。

いや、古竜が王女殿下を気に入り、友誼を深めてくださることは、国としては非常にありがたいことである。

他国との関係においても、魔物の 暴走(スタンピード) とかの大災害においても、心強いことこの上ない。他の古竜との間に問題が発生しても、国家存亡の危機に至ることなく取りなしてもらえる可能性もある。

実にありがたいこと。大歓迎すべきことである。

……それが、こんなに頻繁に訪問されるのでさえなければ……。

あの、テレス王女の誕生日。

あれ以降、とても頻繁にやって来るのである。古竜ザルムが……。

もう、2~3日に一度くらいの頻度で……。

数カ月に一度くらい来てもらえれば、ありがたい。

他国への誇示や、何か大きな問題が発生した時に助言や手助けが期待できるので……。

……しかし、2~3日に一度。それは、明らかに多過ぎである。

もう、王都の者達は見慣れた日常の風景として、驚くこともない。

そして、古竜を不愉快にさせてはならないと毎回懸命に対処する王宮の者達にとっては、かなりの負担となっていた。

テレス王女は、いい。

ザルムに懐き、姉姫や兄達と一緒に空の旅を楽しんだり、色々なお話を聞かせてもらったりと、古竜との交流を満喫している。

……だが、大臣や役人達は……。

「最上級の牛の補充はどうなっている?」

「はっ、何とか10頭を確保しました!」

「それじゃあ、1カ月も保たんぞ……。早く別の業者と話を付けろ!!」

わざわざ来てくれた古竜様を、持てなさないわけにはいかない。

なので、肉質が柔らかくて美味しいと古竜様が褒めていた牛を、毎回丸々1頭献上しているのであるが、……こう頻繁に来られては、国営牧場で育てている牛の数にも限りがある。

おまけに、ザルムは時々、他の古竜を連れてくるのである。

『自分も人間の幼生体と話してみたいから、どうしても連れて行け』と言われて断れなかった、とか言って……。

さすがにザルムも申し訳なさそうな様子であったが、人間側が文句を言えるはずがない。

それに、複数の古竜が王女と懇意になってくれるというのは、ありがたい。

……とてもありがたいことなのである……。

特に、第三王女と第四王女の大躍進で影が薄れてしまった第一王女と第二王女を気に入っていただけて、そのふたりにも加護を貰えれば……。

そう考えると、上のふたりの王女の幸せを願う国王夫妻や臣民達は、全力で古竜達を接待せざるを得ない。

そしてそれが、とても大変なのである……。

何せ、古竜はデカい。

接待に必要な食べ物も飲み物も、膨大な量となる。

そして、下手に飲食物や接待の内容……子供達のダンスや歌、鱗の隙間の掃除とか……が気に入られすぎると、更に訪問頻度が増したり、ザルムについてくる古竜の数が増えたりするのである。

……しかし、だからといって、接待の手を抜くわけにもいかない。

この状況であれば、軍事費を削減して、浮いた分を古竜の接待費に回しても問題ないかも、と考えはしても、いきなり大量の兵士を解雇するわけにもいかない。

こんな状況の……古竜がしょっちゅう王都に遊びに来る……国に攻め込もうなどという自殺願望の強い国はあるはずがないが、この状況がいつまで続くか分からないし、元兵士である大量の失業者が国中に溢れることなど、許容できるわけがない。

「……いったい、どうすれば良いのだ……。

この状況が、ありがた迷惑、というものなのか……」

「「「「「「…………」」」」」」

国王陛下の言葉に、黙って俯く、家臣一同であった……。

* *

「テレス、ほら見ろ、人がゴミのようだ!」

「兄様、そんなことを言ってはいけません!!」

そして、今日もザルムの背に乗り、兄と一緒に大空の散歩をするテレス王女。

(あああ、暗黒面に堕ちかけた兄を 諌(いさ) める、テレスちゃん! 健気(けなげ) で、可愛いィ〜〜!!)

毅然としたカッコいい姿を見せながら、心の中で悶えている、ザルム。

そして、里に帰った後、また皆にその感動を話すものだから、益々興味をそそられた他の古竜達がテレスに会いたがるのである。

悪循環、……と言うには、人間側にもメリットがあるので、何とも言えない……。

そして、ザルムが話す様々なことを聞き続けているテレス王女が、既に普通の人間……貴族や王族を含む……の知識範囲を大きく逸脱した知識量となっており、また、魔法についても色々と教えられているということに気付いている者は、まだひとりもいなかった。

テレス王女は、王族なのである。

悠久の昔から、美男美女、そして優れた身体能力や魔力量が多い者達をその血統に取り込んできた、王族……。

なので、遺伝的な基礎スペックは高かった。

そして、何やら面白いことになっているらしいと気付いたナノマシン達が、次のナノネットの高視聴率ヒロイン誕生かと注目し、群がり、……必然的に、魔法の威力が増大する。

人間達が言うところの、『魔法の精霊の御寵愛を受けた』という状態である。

それらが露見した時、この国の独身貴族達の婚活市場は、いったいどうなってしまうのか。

第一王女と第二王女は、無事、幸せを掴めるのか。

この状況を知った時、責任を感じたメーヴィスが、また寝込むのか。

全ては、もう少し先の話である……。