軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

712 招かれざる客 4

「じゃあ、続いて、私達『ワンダースリー』が参りますわね。

マイルさん、新しい標的をお願いしますわ」

「はい!」

レーナの攻撃魔法で標的が跡形もなく消し飛んでしまったため、マルセラの要望により新しい標的を設置する、マイル。

「……では、皆さん、『 魔神丸(マシンガン) 』ですわ!」

「はい!」

「はいっ!」

あの、対異次元世界侵略者絶対防衛戦の時に使った決戦魔法を使用するというマルセラの指示に、モニカとオリアーナが応え、3人でガッチリと体勢を組み……。

「ワンダー……」

「パルス……」

「「「 魔神丸(マシンガン) !!」」」

モニカが魔力の 銃身(バレル) を形成し、オリアーナがその銃身をコントロールして狙いを定め、そしてマルセラが魔力を供給し……。

パパパパパパパパパッ!!

粉々に砕ける標的。抉られる後方の土壁……。

「やめっ! やめえぇ〜〜っっ!! 土壁が抜かれます、弾が外へ出ちゃいますうぅ〜〜!!」

マイルに制止され、射撃をやめて皆のところへ戻ってきた、『ワンダースリー』。

そして、クランメンバー全員が、それぞれ自分の収納魔法から椅子を取り出し、腰掛けた。

……ポーリンの分は、マイルが自分のアイテムボックスから取り出して、素早く渡していた。激しく動揺している押し掛けパーティの者達には、気付かれてはいないであろう。

「なっ! ぜ、全員が、収納魔法持ち……」

愕然とする、押し掛けパーティの面々。

勿論、ここへ押し掛ける前に情報収集はしているので、両パーティにそれぞれひとりずつの収納魔法持ちがいることは知っていたであろう。

大容量の収納魔法持ちは、それだけでCランクになれる。

しかしそれは本人だけであり、収納魔法持ちをひとり抱えているからといって、それだけでパーティ全体がCランクになれるわけではない。

なので、昇級の秘密は別にあると考えていたのであろうが、そこに、この『全員が収納魔法持ち』アピールである。

稀少な収納魔法持ちがふたりもいるというだけで、驚くべきことである。

……なのに、クランメンバー全員が……。

もう、 蒼褪(あおざ) め、脂汗を流し、呼吸が速く浅くなっている5人は、今にも倒れそうな様子である。

「あ、収納魔法が使えるのはふたりだけ、ということにしていますから、このことは内緒ですよ。

……というか、他のハンターの秘密や得意技を漏らした者がどうなるかくらい、ご存じですよね……」

念の為にと、そう忠告をしておくマイル。

そんなことをすると、秘密を漏らされた当事者からの報復だけでなく、それを聞いた者達からも、『ハンターとしての最低限のルールも守れない奴』、『信用できない連中』として相手にされなくなる上、依頼者からも『あのパーティには受注させないでくれ』と言われたりして、……まぁ、まともな依頼は受けられなくなって、詰む。

それくらいのことは、ハンターとしては誰でも知っている常識である。

……しかし、この連中は、その『常識』があるかどうかすら疑わしいため、念押ししたマイルであるが、連中の顔色が更に悪くなったので、さすがにそれは知っていたようである。

「では、次は皆さんが見せてください。私達より強いということを証明できる技を……」

分かっているくせに、そう言ってにっこりと微笑む、マイル。

そして、他のクランメンバー達も、微笑んだ。に〜〜っこり、と……。

そして、膝をガクガクさせていた押し掛けパーティの5人は、次々とへたり込み……。

「「「「「すみませんでしたあぁ〜〜!!」」」」」

全員、頭を下げて謝罪した。

そして、何とか立ち上がると、一目散に逃げ去っていった……。

「実力に見合わないランクになった者は、すぐに死んじゃいますよ……」

逃げ去る者達を見ながら、ぽつりと、マイルがそう呟いた。

あの、対異次元世界侵略者絶対防衛戦の後、活躍したハンター達のうち、一部の者達は昇級したけれど、昇級しなかった者も大勢いる。

それは、その者達があまり活躍しなかったからではなく、無理に昇級させるとすぐに死んでしまうからであり、本人達もそれがよく分かっているから、文句が出ることはなかった。

……そう。

自分の力も分からず、ただ早く昇級したがるだけの者など、自分達は絶対に昇級させてはいけない者なのだと、自ら触れて廻っているのと同じなのである。

なので、マイル達はこの連中がしばらくは昇級できないように、そしてここに押し掛ける同類が現れないように、しっかりと 警告を発するつもり(・・・・・・・・・) であった。

本人達には、嫌がらせだとしか思われないかもしれないが、それは、その者達を死なせないための、精一杯の心遣いなのである。

わざわざそんなことをしても、恨まれるだけで、何のメリットもない。

死にたい者は、勝手に死ねばいい。余計な口出しをしたり、関わったりする必要などない。

……しかし、まあ、それがマイルであり、それが『赤き誓い』と『ワンダースリー』なのである。

* *

「……というようなことが、あったぞな……」

「「「「「「…………」」」」」」

渋い顔の、ギルドマスター以下、ハンターギルド支部の幹部達。

……そう、マイル達が、例の『押し掛けパーティ』の件をギルド首脳部に報告したのである。

なので、会議室でその全容を聞かされたギルド側の者達が、揃ってこういう顔をしているのであるが……。

「……それは、確かに押し掛けた連中が悪い。

しかし、そんな連中が真似をしたがるような 昇級の仕方(ズルいやりかた) をした者達にも、責任があるんじゃ……」

思い切り、嫌みを言うギルドマスター。

そして、揉め事に巻き込まれたくないからか、口は出さないものの、ほんの少しだけ……マイル達に見咎められない程度に……首を縦に動かす、幹部達。

「いえ、それとこれとは話が違いますよ! じゃあ、何ですか? 連中がBランクパーティのところに押し掛けて、Bランクになれる方法を教えろ、自分達をクランに入れろ、クランハウスにタダで住ませて面倒見ろ、なんて要求しても、自分達がBランクになったのだから仕方がない、と?

女性ばかりのクランに男性が押し掛けても、黙って受け入れろ、と?

それがギルド上層部の意見だと、他のハンター達に告知しても構わないと?」

「……あ、いや、そういうわけでは……」

「では、いったいどういうわけなのですか?」

「…………」

不機嫌状態のマイルと口論して、勝てる者は少ない。

マイルは基本的に温厚で優しく、お人好しである。

但しそれは、相手が善人であるか、もしくは幼女かケモミミである場合は、である。

……幼女かケモミミであれば、多少の悪事は許容される。

そしてマイルは、少し抜けたような雰囲気を纏ってはいるが、決して馬鹿ではない。

……それどころか、頭が良く、ムキになった時には結構口も回る。

到底、ギルドマスターが勝てるような相手ではなかった。

オマケにマイルの後ろには、毒舌ポーリンと、貴族的な嫌みと皮肉に満ちた会話ができるマルセラが控えている。

圧倒的な戦力差であった……。

* *

「勝ちました!」

「ギルドマスター達が気の毒になる程の、ワンサイドゲームでしたわね……」

「たはは……」

ギルドからの帰り道、ふんす、というような顔で右腕を天に突き上げ勝利の雄叫びを上げるマイルと、少し相手に対して同情気味の言葉を漏らす、マルセラとメーヴィス。

他の者達は、苦笑いである。

今回、マイル達に乗り込まれたギルド側は、別に大きな過失を犯したというわけではない。

なので、いい迷惑であったろうが、昇級に関することであり、また若手ハンターの暴走であることから、ギルド上層部の監督不行き届きであるとしてマイル達からのクレームの対象となったわけである。

マイル達も、ちょっと悪いかな、と思わないでもなかったが、ハンター全員に対して警告することができる立場なのはギルド上層部だけなので、ちょっと泥を被ってもらうしかないかな、と考えたのである。

……いい迷惑であった……。

まあ、そういうわけで、実力が伴っていない者の昇級は阻止すること、そしてクランやパーティに押し掛けて強引な要求をしないよう貼り紙等で告知すること、という要求を呑ませたわけである。

……ギルド側の皆からの、『お前達がそれを言うのか!!』というような視線には、気付かない振りをして……。

そして更に、実名は出さずに『このような、押し掛け事件があったぞな……』という顛末をそれとなく噂として流すことにより、事件の再発防止を図ったのである。次にやったら、今度は実名で話を広めるぞ、という警告を、噂話の末尾に付けることによって……。

そしてそれらに効果があったのか、今のところ、同様の押し掛け事案は生起していないようであった……。