軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

710 招かれざる客 2

「……というわけよ」

「で、今に至る、と?」

押し掛けパーティによる説明が終わった後のレーナとマイルの言葉に、こくこくと頷くクランメンバー達。

マイルは、状況を完全に把握し、理解した。

……但し、把握して理解することと、その内容に納得するかどうかということは、全くの別物である。

「クランの利点は、合計人数が多いという点なんだ。

大勢で依頼を受けてもいいし、依頼内容に応じてメンバーを組み替えてもいい。

だけど、今このクランは2パーティで、合計7人しかいないだろう?

これじゃあ、少し人数が多めの1パーティと変わらないよ。せめて3パーティはいないと、クランの利点が活かせないだろ?」

「「「「「「「…………」」」」」」」

その指摘通りである。

クランとしては、現状は人数不足である。

……もし、このクランが 普通のクラン(・・・・・・) であったなら……。

しかし、このクランは依頼を効率的にこなすためのものでも、新人を育成するためのものでも、そして自分達の勢力を拡大するためのものでもない。

ただ、仲良しの仲間が集まって、楽しくやっていたいだけ。

……そして、色々な秘密が露見し拡散しないよう、合同受注はなるべく仲間内だけで受ける。

場合によっては他のパーティと組むこともあるが、それは護衛依頼とかギルドからの大規模召集とか、その他何らかの必要性がある場合だけである。普段から見知らぬパーティと合同受注をする気など、カケラもない。

それに、現在このクランのメンバーは、女性のみである。

別に『採用するメンバーは、女性のみ』と公言しているわけではないが、それはただ『人員募集は行っていないから、採用条件など告知していない』というだけである。

そんなことは、今の人員構成……女性7人……を見れば、考えるまでもないであろう。

それでも、男性陣は『女性ばかりのクランに入りたい』と思うかもしれないが、女性陣は止めなかったのであろうか……。

男尊女卑の傾向が強く、反対しきれなかったのか……。

あるいは、女性が圧倒的に多いクランであれば、男性陣があまり偉そうにできなくなるかも、という希望に縋ったのか……。

「……でも、それって、ある程度同じくらいの実力がないと駄目ですよね?

ベテランハンター達の集まりに、新米の子供が『仲間になってやろう』なんて言ってきても、ホイホイ入れてあげるわけにはいかないでしょう?

それに、私達があなた達の面倒をみることが、私達にとって何のメリットになるのですか?

ただ、面倒で迷惑なだけでしょう? このクランハウスの買い取り費用や維持費も出すつもりがなさそうな、常識知らずで世の中を舐めていそうな寄生希望の人達のお世話をするなんて……。

私達は、慈善団体じゃありませんよ?」

珍しく、マイルとしては辛辣な言葉が吐かれた。

孤児院を廻ってきた直後なため、世の中を舐めている者達に少し腹が立ったのかもしれない。

他のクランメンバー達も、何時になく厳しいマイルの言葉に少し驚いてはいるが、内容的には全くの同感であるため、うんうんと頷いている。

「なっ……。裏技で登録直後にCランクになったお前達と違って、俺達はFランクから上がってきたんだぞ! まだDランクなのも、登録してからの期間が短いからであって、能力が低いというわけじゃない!

……ハンターとしての実力は、お前達よりも遥かに上だ!!」

……マイルの罠に、引っ掛かった。

そう気付いたクランメンバー達は、苦笑しながら肩を竦めた。

そしてそれが自分達を馬鹿にした仕草だと思った押し掛けパーティの者達は、怒りの表情を浮かべていた。

しかし、さすがに加入を頼みに来たのに相手方にその怒りをぶつけるような真似をする程の馬鹿ではなかったらしく、リーダーの反論に任せるだけで我慢しているようであるが……。

だが、そのリーダーが喧嘩腰では、何の意味もない。

それに、別にクラン側としては、論戦に負けた場合はこの連中の加入を認める、などという義理はない。

ただ、『初対面の相手に対して、喧嘩腰で自分達の勝手な要求を一方的に押し付けようとするような者達とは、一緒にやるつもりはない』、『クランハウスの分担金を払う気のない者は、受け入れない』と言えば済む話である。

クラン側は、無関係の若手パーティ、それも勝手で常識のない、クランをタダで利用しようと考えているだけの者達と関わるつもりなど、カケラもない。

なので、いくら言っても、全くの無駄。何の意味もない、徒労である。

なのに、わざわざ相手をしているのは、……勿論、 アレ(・・) である。

口で言っただけでは諦めず、しつこく何度もやって来そう、というやつ……。

なので、はっきりと思い知らせ、なおかつ同類が現れないように警告の立て看板代わりに利用する。

……ちょっと可哀想な気もするが、こんなのにしょっちゅう押し掛けられては堪らないので、仕方ない。

それに、この図々しい連中にも、少しは『世間の厳しさ』というものを教えてやった方が、本人達のためになる。

そう考えれば、皆の罪悪感など消し飛んでしまうのも無理はない。

「……ほほぅ……」

「「「「「「ほほぅ……」」」」」」

「「「「「「「ならば、『ハンター・バトル』だ!!」」」」」」」

「……え? ハンター、……バトル……?」

何を言われたのか、分からない。

そんな顔で、クランメンバー達に言われた言葉を繰り返した、リーダー。

そして……。

「合意と見てよろしいですね?」

「「「「「え……」」」」」

マイルの宣言に、今度は押し掛けパーティの全員が疑問の声を上げた。

「いえ、先程リーダーさんが言われましたよね、私達が世の中を舐めているだとか、自分達の方が強いだとか……。

別に、あなた達の方が強ければクランに入れる、なんてことはありませんけど、誤解は解いておくべきですし、世の中を舐めているのはどちらかということははっきりとさせておかないと駄目ですよね?」

にっこりと微笑みながらのマイルの言葉であるが、クランメンバー達には、その笑顔の意味がよく分かっていた。

(不愉快3、楽しみ7、ってトコかしらね?)

(いえ、不愉快2、懲らしめてやろう2、楽しみ6、というところですわね、あの顔は……)

レーナとマルセラが、そんな分析をするくらいには……。

「勿論、ここで模擬戦をするわけにはいきませんし、こんなことでギルドの訓練場を借りるわけにもいきません。他のハンター達に戦いの手の内を晒したくありませんし、怪我をさせるのも悪いですしね。

それに、強さといっても、対人戦と魔物相手では得手不得手もありますし、前衛と後衛、戦闘職と支援職等、単純に優劣を比較できませんからね。

なので、戦いではなく、互いの得意技を見せ合っての実力比較にしたいと思います。

……異議はありますか?」

「……あ、ああ、それで構わない……」

自分達から『お前達より強い』と言い出したのである。ここで退くわけにはいかないであろう。

それに、戦いではなく力較べであれば、自分達が怪我をすることも、相手に怪我をさせることもない。

仲間の4人も納得しているらしく、頷いている。

「……では、合意と見てよろしいですね?」

大事なことなので、もう一度繰り返した、マイル。

勿論、ミスターうるちへの敬意を込めて……。