軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

703 マイルの休日 5

どしゅ!

マイルが、1匹の首を落とし……。

どしゅ、どしゅ!

どしゅどしゅ!!

駆け付けた見張り役のふたりが、それぞれ1匹ずつ倒し、それに続いて漁を手伝っていた者がようやく抜剣して、残りの2匹を仕留めた。

とりあえず、当座の危機は脱したようである。

「「「「「…………」」」」」

そして、無言のまま立ち尽くす、ハンター達……。

「 下手(へた) 打った……。

……すまん、大失態だ。油断のせいで全滅させるところだった……。

本っ当に、すまん……」

盛大にヘコむ、ハンター達。

「反省会は後です! とりあえず、延縄と 海棲魔物(シーサーペント) の胴体を取り込みますよっ!

急がないと、 海棲魔物(シーサーペント) の胴体が沈んだり流されたりして回収できなくなっちゃいます!」

「……あ、ああ……」

* *

頭部を切断された 海棲魔物(シーサーペント) の胴体部分を甲板上に引き揚げ、延縄も引き揚げた後、海面を監視しながらひと休みする、漁師とハンター達。

「延縄の引き揚げを手伝おうとした気持ちは、理解できます。しかし……」

「分かってる! 自分達の任務、本分を 疎(おろそ) かにしてまでやるべきことじゃなかった。

完全に、俺の判断ミスだった。すまねぇ……」

そう言って、マイルと漁師達に頭を下げる、リーダーとパーティメンバー達。

……勿論、目は海面を見ているし、いつでも剣を抜ける体勢で……。

プロは、たとえ失敗することはあっても、同じ失敗を繰り返すことはない。

同じ失敗を繰り返す者はプロではないし、そういう者は、一人前になるまで生き残らない。

マイルも、それくらいのことは理解していた。

「……前回うまく護衛役をこなした私が延縄の引き揚げを手伝ったということが、判断ミスを誘発したのだろうとは思います。

でも、最初に言いましたよね、今回私は護衛の仕事はしない、って……」

「「「「「…………」」」」」

弁解のしようもない、マイルの指摘。

いや、元々、ハンター達は弁解などしていないが……。

「あ、そんなに落ち込む必要はありませんよ。別に、皆さんの実力不足ってわけじゃないんですから。一度やった失敗を、繰り返さなければいいだけですよ。

今まで、ハンターとしてそういうことは何度もあったんじゃないですか?」

「「「「「…………」」」」」

同じ無言ではあるが、先程とは違い、少し元気を取り戻した様子のハンター達。

このあたりは、他者への心遣いができるマイルの良いところである。

これがレーナであれば、『辛気くさい顔してんじゃないわよ!』とか言って、怒鳴りつけるところであろう。

……レーナとしては、それでも精一杯励ましているつもりなのであろうが……。

「さあ、再開しますよ……、って、どうします?

また延縄をやりますか? それとも、このまま次の 海棲魔物(シーサーペント) が来るのを待っています?」

延縄の獲物と 海棲魔物(シーサーペント) の血がかなり流れたので、いくら内海と外海の境目付近とはいえ、次の 海棲魔物(シーサーペント) が襲ってくるのも、そう先のことではないだろう。

「延縄だ! いつ来るか分からんものを待って時間を無駄にすることはできんし、延縄をやっていても、来る時には来る。これから先のことを考えると、延縄の途中に襲われるという状況での訓練をやってもらわねば困る!」

「「「「「「……確かに……」」」」」」

漁師の老人の言葉に、納得するしかないマイルとハンター達。

「よし、延縄漁、再開だ!」

「「「「おおお〜〜っ!!」」」」

* *

「内海部に入ったぞ。

しかし、内海は 海棲魔物(シーサーペント) があまり入ってこないというだけであって、絶対入ってこない、というわけじゃあない。ハンターの皆さんは、入港するまで気を抜かねえでくだせぇ」

「そうですよ! 家に帰るまでが遠足ですよっ!」

「「「「「『遠足』って何だよ!」」」」」

帰路にて、漁師の老人からの忠告はともかく、それに続いたマイルの言葉は意味が分からず、そう怒鳴り返すハンター達。

怒鳴るのは、甲板上で風に煽られているため大きな声を出さないと聞こえないためであって、別に怒っているわけではない。

海面風と、マイルの風魔法を受けた推進による向かい風との合成風は、かなり強いのである。

そして、特に 海棲魔物(シーサーペント) に襲われることなく、小さな漁港と村が見えてきた。

前回と同じく、桟橋付近には大勢の村人達の姿が見える。

勿論、船には大漁旗と凱旋旗……海の魔物を倒したという勝利旗……が翻っている。

おそらく、既に 女子(おなご) 衆(しゅう) は宴会の準備を始めているであろう。

「今日も、 死(し) に 損(そこ) なったのぅ……」

「そうじゃのう……」

歴戦の漁師モードから隠居モードに戻ったのか、喋り方が年寄り臭いものに戻っている、老人達。

しかし、そんなことを言いながらも、死に損なったことが残念そうな様子は、欠片もない。

ただ、格好をつけて、 言っているだけ(・・・・・・・) なのであろう。

外海での、大物釣り。

海棲魔物(シーサーペント) を狩りまくり。

これで、 滾(たぎ) らない漁師はいないであろう。

いくら年寄りであっても。

……いや、年寄りであるからこそ、更に……。

* *

入港後、大声援で村人達に迎えられ、そのまま宴会場となる広場へと移動する、老人とハンター達。

船や漁具の洗浄は、獲物を全てアイテムボックスに収納した後、マイルが魔法でチョチョイとやって完了。

老人達が、『便利じゃのう……。一艘にひとり、嬢ちゃんが乗ってくれれば……』とか言っていたが、マイルが何人もいては、この世界が大変なことになりそうである。

そのマイルは、一足先に広場の隅の調理コーナーへとダッシュしている。

少しでも早く獲物を届けないと、それだけ調理が遅くなって皆を待たせることになる。

そういうところには気が回る、マイルであった……。

* *

翌日、昼過ぎになってから、ようやく村を出発した、マイルとハンター達。

お酒を飲まないマイル以外は明け方近くまで飲みまくっていたため、それまで誰も起きなかったためである。そして……。

「……」

「「「「「…………」」」」」

ハンターの評価については村人達に聞かせる必要はないため、帰路においてその話をすることにしていた。なので、神妙な態度のハンター達と、同じハンターに対して批評するという行為に何となく気が引けて、言葉を口にするのを躊躇うマイル。

「……いや、これも仕事のうちだ。遠慮なく言ってくれ。

嬢ちゃんがいなければ今回の仕事は失敗……というか、依頼主を含めて全滅していたというのは分かっている。何を言われても文句は言わねぇ……」

「分かりました。では、私もハンターとして、仕事として忖度のない意見を言わせていただきます……」

そしてマイルが、今回の実験結果について話し始めた。