軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

702 マイルの休日 4

「出航よ~い! 係留索(もやい) 解(と) け~!!」

船長の指示で、 係留索(もやい) が解かれ……。

「外洋殴り込み船、第二次攻撃隊発進ですよっ!」

普通の漁師はとっくに引退した、もう 人生の元は取った(・・・・・・・・) 、老人達。

……そして、死ぬ気なんかカケラもない、ハンター達。

全員、やる気に満ちた目をして、笑っている。

そう。まるで、こう言っているかのように……。

我らは無敵! 我らの 技(わざ) に、 敵(かな) う者なし!!

「風よ吹け! 我らを外洋へと 導(みちび) き 給(たま) え!」

早起きして見送ってくれている村の人達に、モタモタしている姿は見せられない。

なので、マイルが風魔法で、帆に風をはらませる。

「……よし、出撃ですよっ!!」

* *

「そろそろ、比較的安全な内海部から出るぞ! 外洋、 海棲魔物(シーサーペント) の生息域だ!」

老人達の口調が、年寄り言葉ではなくなっている。

若い時の気分に戻っているのか、それとも、命の遣り取りの場では『~じゃ』などと言ってる場合ではないのか……。

とにかく、皆、きりりと顔が引き締まっている。

「まずは、 延縄(はえなわ) で普通の……、いや、大物を獲るぞ! 海棲魔物(シーサーペント) が現れたら、すぐに対 海棲魔物(シーサーペント) 戦の態勢にシフトする。 頼(たの) んますよ、ハンターの皆さん!」

「おおっ!」

「「「「任せとけ!!」」」」

(……うん、良い感じだ……。

今回、私はあまり手出ししない。ちょっと危ないかな、と思った時に、少しアシストする程度だ。

次回からは私抜きでやらなきゃならないのだから、私に頼った戦い方じゃあ、意味がないからね。

……では、ミッション・スタート!)

* *

一度やったことなので、老人達の延縄漁をスムーズに手伝うマイル。

ハンター達は、さすがに漁を手伝うことはなく、いつ 海棲魔物(シーサーペント) が海面を割って襲い掛かって来てもいいようにと、それぞれの武器に手を掛けて、警戒に当たっている。

今回のマイルは、問題が起きない限り、戦いには手出ししないつもりであった。

また、マイルは勿論探索魔法を使っているけれど、それによる探知結果を皆に伝えることはない。

……それでは、 実験(・・) にならないので……。

今回はあくまでも、マイルがいなくてもハンター達による護衛が問題なく機能するかどうかの確認のための試験航海であり、問題点を洗い出すためのものなのである。

海中に延ばした延縄を、すぐに引き揚げるマイルと老人達。

前回の教訓で、延縄はあまり長くせず、幹縄から出ている枝縄の数も減らしてある。

大物がたくさん掛かると、引き揚げられなくなってしまうので……。

今回はマイルがいるが、マイル抜きだと、前回と同じくらい獲物が掛かると引き揚げられない。

前回はメーヴィスもいたし、大物は甲板上に引き揚げず、船尾に寄せたところでそのまま収納したのである。いくらベテラン漁師とはいえ、体力の衰えた老人達だけでは限度というものがある。

今回、引き揚げだけは、漁獲量に直接影響するためマイルが手伝っているが、老人達も、マイルがいない時には幹縄を短くしたり枝縄の本数を減らしたり、海に投入してからすぐに引き揚げるとかで色々と調整するであろう。あまり引き揚げに時間が掛かると、獲物がサメや 海棲魔物(シーサーペント) に食い千切られてしまう。

なので、実験には影響しないと考えて、今回はマイルも引き揚げを手伝うことにしたのである。

「よし、入れ食いだ! 引け、引けええぇ〜〜っっ!!」

船長の号令で、懸命に縄を引く、老人達とマイル。

そして……。

「「「「「おおおおお〜〜っ!!」」」」」

次々と、船尾から引き揚げられる延縄、大量の獲物付き!

今回は、大物であってもマイルの『海中のものを収納する』という卑怯技は使わず、人力だけで取り込んでいる。

……ここで卑怯技を使っては、マイル抜きの時にどうしようもなくなってしまう。

なので懸命に船内に取り込もうとする老人達であるが、……さすがに、寄る年波には勝てないというか、何というか……、かなり苦戦している。

「……チッ、しょうがねぇなぁ……。

おい、ふたり程、両舷の見張りをしていろ。僅かな兆候も見逃すんじゃねぇぞ!

他の者は、ちょいとばかし手伝ってやれ」

何と、ハンターのリーダーが、依頼任務外の手伝いをする気になったようである。

しかし……。

(う~ん……。良かれと思っての協力の申し出なのだろうけど……。

いきなり海面から 海棲魔物(シーサーペント) が飛び出してきたら、延縄を引いているハンターは即座に対応できないのでは……)

マイルが考えている通り、離れた場所から海面上に頭部を出したまま近付いてくるならいいけれど、前回のように、海面下に潜ったまま接近して、船の直下から浮上してきた場合、即座に対応できるのは見張りをしているふたりだけであろう。

……それでは、護衛が5人いる意味がない。

(延縄の引き揚げ要員を増やすか、何かいい方法を考えないと……。

少なくとも、護衛のハンターを延縄漁に使うのは駄目だよねえ。

とりあえず今回は、私がいるので教訓収集のため口出しはしないけど……)

そして、数度目の延縄引き揚げの最中に……。

どばしゃあああぁ〜〜!!

「「「「「「うわああああぁ〜〜っ!!」」」」」」

突然、海面を割って上空へと伸び上がる、 海棲魔物(シーサーペント) の身体。

その数、左右両舷合わせて5つ。

それら全てが、船上の獲物にそれぞれ狙いをつけて、一斉に襲い掛かってきた。

「しまった!!」

護衛ハンターのリーダーが叫ぶが、手遅れである。

5匹の 海棲魔物(シーサーペント) 達は、武器を持って離れたところにいる見張りのふたりではなく、船尾に固まっている無防備な集団に向かってその頭部を振り下ろした。獲物を咥え、海中へと引きずり込むために……。

漁師の老人達は勿論、手伝っていた3人のハンターも、中腰で縄を掴んだ体勢で、しかも延縄や老人達が邪魔ですぐに剣を抜き放つこともできず、対応が遅れた。

己の任務を疎かにして余計なことをした者が迎える、自業自得、当然の報い。

……しかし、まだ諦めるわけにはいかない。

彼らは、護衛依頼を受けたハンターなのだから!

剣を振りかざし、慌てて船尾へと駆け寄る、見張り役のふたり。

延縄から手を離し、剣を抜くためのスペースを確保すべく飛び 退(すさ) る、3人のハンター。

迫る 海棲魔物(シーサーペント) の5つの 鎌首(かまくび) 。

(((((間に合わねえええぇ〜〜!!)))))

がいん!

「「「「「……え?」」」」」

がいん! がいん! がいん! がいん!

「「「「「えええええええ?」」」」」

老人達に届く手前の空中で、まるで何かに弾き返されたかのように動きを止めた、 海棲魔物(シーサーペント) 達。

そして響く、マイルの言葉。

「 格子力(こうしりょく) バリアの勝利です!!」

「「「「「何じゃ、そりゃああああぁ〜〜!!」」」」」