軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

694 要 望 2

「とにかく、そういうわけで、再度メーヴィスさんをエストリーナ王女……を始めとする4人の王女達に会わせないと、許してもらえないという状況になっておりますのよ……」

「増えてるよっ! エストリーナ王女だけじゃなかったのっ!!」

悲痛な叫びを上げるメーヴィスから、そっと視線を外すマルセラ。

これで、エストリーナ王女だけがメーヴィスと再会したなどと他の王女達にバレれば、ただでは済むまい。それくらいのことが分からないマルセラではなかった。

それに、王女達だけがこっそりとメーヴィスに会った、などということが貴族家息女達に知られれば、大騒ぎになることは確実である。

多少のことであれば、『王女殿下なのだから』で済まされるであろうが、こればかりは、非難が殺到して、ただでは済むまい。

なので……。

「……多分、王女達だけでなく、他の貴族家の方々にも会っていただきませんと、王家の評判に関わりますわ……」

「ええっ! それじゃあ、貴族家の息女達にも会わなきゃならないの?」

驚くメーヴィスから、再びそっと視線を外すマルセラ。

「……いえ、その、御息女の皆様だけではなく、御婦人方も、年配の方々も、まだ幼い子供達も、そして貴族家の方々だけでなく、平民の秘書官、文官の方々や、使用人の方々も……。

つまり、幼女から老婆まで、あらゆる身分、あらゆる年齢層の女性達、ほぼ全てが……」

「何だよ、そりゃああああぁ〜〜!!」

堪らず悲鳴を上げたメーヴィス、愕然、呆然であった……。

* *

「……で、メーヴィスが自室で寝込んでいるわけだけど……、どうすんのよ、コレ!!」

「いえ、どう、と言われましても……」

レーナに怒鳴られても、どうしようもない。

なので、困り顔をするしかない、マルセラ。

あの作戦は、みんなで相談し、考えたものである。

……勿論、レーナも賛成し、案を出した。

なので、レーナには他者を責める資格はない。

しかし、そうは言っても、メーヴィスの苦境の原因を、エストリーナ王女との交流があったマルセラ達のせいだと思ってしまうのも、無理はない。

レーナ自身も、決してマルセラ達が悪いと思っているわけではないのであろうが……。

「とにかく、根本的な解決策を考えなきゃ駄目ですよね。

物語の世界なら、こういう場合に主人公達が取る作戦は……」

こういうことには頭が回るマイルの発案に期待する、みんな。

「……メーヴィスさんが死んだことにする……」

「「「「「却下!」」」」」

即座に、全員に否定された。

「そんなの、万一バレた時が怖いし、今後メーヴィスが貴族絡みの場には一切出られなくなっちゃうでしょ!

現状なら、たとえバレたとしても、『国元では無茶ができないから、自分のことを誰も知らないこっちでハンターごっこを楽しんでいる』と言えば、何とか言い逃れできなくもないのに……」

「それに、メーヴィスが死んだなんてことにすると、王女様、気落ちして当分の間使い物にならなくなりますよ。そこを悪党につけ込まれたら……。

失恋して落ち込んでいる女性を狙うのなんて、ナンパ野郎の 常套手段(じょうとうしゅだん) じゃないですか……」

「……あ、なる程……」

レーナとポーリンの説明に納得して頷く、マイル。

「それで、あまりおかしな策を 弄(ろう) するのではなく、年に数回程度、顔を出してあげれば良いのではないかと思うのです。

そうしょっちゅうではなく、ごくたまに、何かそれらしい理由がある時にだけ……。

なるべく、王女殿下達以外の御令嬢方とは触れ合う機会が少なく、それでも御令嬢方が文句を言いづらいイベントとかで……」

おそらくクランメンバーの中で最も頭がいいと思われる、オリアーナからの発言である。

皆、期待に満ちた目で、オリアーナの言葉の続きを待っている。

オリアーナは、ここで『具体的なことは、御自分で考えてください』などとは言わない。

こういう言い方をした時には、必ずその具体策も提示するのが、オリアーナなのである。

「これをご覧ください」

そう言ってオリアーナがテーブルの上に広げたのは……。

「……お城での行事予定表?」

その紙片に書かれているタイトルを口にした、レーナ。

「あ、あんた、これってまさか……」

「機密文書とかじゃありませんよ。ただの、王都民に向けた告知の高札を書き写しただけです」

オリアーナの言葉に、安堵の表情を浮かべる、『赤き誓い』の3人。

……メーヴィスは、自室のベッドで 臥(ふ) せっている。

マルセラとモニカは、オリアーナがヤバい橋を渡るようなことはしないと知っているので、平気な顔をしている。

……というか、オリアーナがこれを書き写していた時に一緒にいたので、驚くはずがなかった。

そして、その紙片に書かれている項目のひとつを指で指し示した、オリアーナ。

そこに書かれているのは……。

『第四王女、テレス殿下御誕生日』

「これが、国家的な大きなイベントではない、直近の王族関係のイベントです。

王族とはいえ、第四王女ですし、成人されるお祝いでもありませんし、まだ幼いですから、婚約者探しというわけでもありませんから、王宮のイベントとしては比較的小さなものです。

ですから、メーヴィスさんがずっと主役である第四王女の側でお相手をしていてもそうおかしくはありませんし、いくらメーヴィスさんを独占していても、幼い第四王女に文句を言える者はいませんし、……そして婚約 云々(うんぬん) の話が出るような年齢ではありません。

これを以って、言われた通りメーヴィスさんを連れてきた、ということにして、ノルマをこなしたということに……」

「「「……天才ですかっ!!」」」

オリアーナに対して称讃の言葉を捧げる、『赤き誓い』の面々。

マルセラとモニカは、そんなことはとっくに知っていたので、特に大きな反応はない。

「……って、事実、天才でしたね……」

オリアーナが、エクランド学園で平民特待生、それも商家の娘とかではなく、小さな村の貧しい農民の子であったことを思い出し、そう呟いたマイル。

それは、まともな教育を殆ど受けることなく特待生試験に合格したということであり、尋常な能力ではなかった。

……文字通りの、『天才』である。

「それで行きましょう!

第四王女様に贈る誕生日プレゼントとか、色々と考えましょうね。

私達がお祝いするのだから、素敵なお誕生日にしなくっちゃ!!」

前世ではお友達の誕生会には呼ばれたことがなく、今世では『赤き誓い』のみんなの誕生日には4人でご馳走を食べるだけであったマイルが、変に張り切っている。

そして今、ここには『赤き誓い』の良心、常識人でありストッパー役のメーヴィスがいない。

……そのことに、何となく不安がこみ上げてくる、クランメンバー達であった……。