軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ようやく泣き止んだルイエットが、眼を擦り、マイルの方を向いた。

「あなたが、私と同じような苦労をしてきたことは、よく理解できますわよ。

知的レベルの低い者達の中で味わう、孤独感! あなたも、色々と苦労したのでしょう?

文明レベルは大きく異なりはしても、私達はある意味、同志ですわ! お互い、助け合いましょう!」

助け合う、とは言っても、この世界で何不自由なく普通に暮らしているマイルとルイエットでは、どちらが多くのメリットを得られるかは、自明である。

しかし、ルイエットには悪気はなく、本当にそう思っているようであった。

確かに、この世界のことを何も知らないルイエットであるが、搭載艇の設備や自分の知識を活用すれば、この世界で財を築くのは容易そうである。

この世界のことに詳しい、誠実なパートナーがいてくれれば……。

そしてマイルは、お金には困りそうにないスキルを持っていて、……明らかに、お人好しである。

この世界で最初に接触した原住民がマイルであったということは、非常に幸運であった。

そう考えるルイエットであるが、それがマイルとナノマシンによって仕組まれたということには、勿論全く気付いていない。

……というか、マイルとナノマシンが干渉していなければ、搭載艇は地面に激突して爆散、クレーターとしてその痕跡を残すのみであっただろう。

「あの~……、ルイエットさん……」

「何かしら?」

マイルが自分の提案を受け入れて、仲間になってくれるのかと、期待に満ちた目のルイエット。

「私と一緒に来られませんか?」

「……え?」

その言葉は、ルイエットが望んでいた『了承の返事』である。

……しかし、ルイエットが考えていたこととは、少し違う。

ルイエットは、この搭載艇を拠点として活動するつもりだったのである。

ここを活動拠点として近傍の町を調査し、ある程度調べたら搭載艇で遠くへ移動し、また調査を行う。

快適な生活ができ、そして自分にとって唯一の心の拠り所であるこの搭載艇から離れるつもりなど、皆無であったのだ。

「ひとりでここにいても、どうしようもありませんよね? 近くには人も住んでいないし、魔物がいるし、食べ物もこの船に積んであるものしかないし……。

とりあえず、ある程度の事情が理解できている私と一緒でないと、ひとりで町まで行くことも、宿屋に泊まることも、必要なものを買うことも、何もできないですよね?」

いきなりのマイルの提案に驚いた、ルイエットであるが……。

(……急な申し出に驚きましたけれど、考えてみれば、確かにその通りですわ……。

マイルさんのお申し出、そう悪くないかもしれませんわね……。

ここが人里から遠く離れているとなると、ここを拠点にするのは、あまり良くはないかもしれませんわね。

他の乗員達と離れてひとりになったとはいえ、私は調査隊の一員なのですから、皆と合流できるまで任務を続行せねばなりませんわ。

ということは、調査や情報収集のためにこの惑星の原住民達と交流しなければならないのですけれど、……何も分からず、現地通貨も持っておらず、若く美しい女性がひとりというのは、あまりにも危険、かつ困難が予想されますわね……。

となりますと、私のことを理解してくださり、そしてお人好しのマイルさんを仲間にすることは、任務遂行のための必須事項ですわ)

ルイエットは、仲間達とはぐれてから既に数百年が経過しているということを、まだ把握していないようであった。

普通、 冷凍睡眠(コールドスリープ) から目覚めた者は、真っ先にそれを確認すべきであろうに、搭載艇のメインコンピューターにそれを確認していないというのは、 如何(いかが) なものか……。

目的地に着いてすぐに解凍されたと思い、それに何の疑問も抱いていないのであろうか。

また、ある程度の時間が経過していても、仲間達もまた母船で 冷凍睡眠(コールドスリープ) に入っているのであれば時間の経過は大した問題ではないと考えているのか……。

そして、自分のことを『若く美しい女性』だと考えているのは、 些(いささ) か自己肯定感が高すぎであった。

あのレーナですら、魔法の天才を自称してはいるものの、自分の容姿については言及することがないというのに……。

まあ、確かに、ルイエットが美人であることを否定する者はいないであろうが……。

(原住民であるこの子を、ガイド役兼世話係にすれば、色々と便利ですからね。

現地通貨は、レプリケーターか工作機械で作った簡単な道具か宝石でも売れば、どうにでもなるでしょうし……。

さすがに、通貨そのものを造るというのは、犯罪行為ですからね。

いくら未開の文明圏とはいえ、それは許されませんわね)

ルイエットは、そのあたりには厳格であった。

「……そうですわね……。私も、ひとりで行動するには情報量が不足しておりますし、様々な危険もあるでしょう。

とりあえず、町まで案内していただきましょうか……」

ルイエットの返事に、安心してにっこりと微笑むマイル。

「あ、搭載艇はどうしましょう……。もし原住民に見つかって、壊されたり内部を荒らされて略奪されたりしますと……」

「あ、私が収納魔法の中に入れておきますから、大丈夫ですよ。いつでも、すぐに取り出せますから」

「…………え?」

自分の呟きに対するマイルの返答に、ぽかんとするルイエット。

「……ええと、その……、は、入りますの?」

「はい!」

「……」

「…………」

「………………」

「どうかしましたか?」

「…………」

「あの……?」

「あり得ませんわあああぁ~~!!」

* *

「はぁはぁ……」

「お、落ち着かれましたか?」

飲み物のお代わりを出して、なぜか突然興奮したルイエットが落ち着くまで待っていたマイルが、そう確認したが……。

「そう簡単に落ち着けるものですかっ! こんな大きなものを亜空間に格納して持ち歩けるなんて、敵地に武器や爆発物とかを持ち込み放題、禁輸物資の密輸し放題じゃないですかっ!

文明が進んだうちの母星でも、テロや犯罪、やり放題ですわよっっ!!」

「あ……、それは確かに……」

ポーリンであれば、ご禁制の品には手を出さないにしても、輸出入時の税金逃れくらいには使いそうである。

レーナやメーヴィスは、そういうことはやらないであろうが、ポーリンだけは……。

「こっ、この世界では、そんな馬鹿げた亜空間格納をできる者が、ゴロゴロ転がっていますの!」

「……あ、いえ、そんなことは……」

マイルの返答に、少しホッとしたかの様子の、ルイエット。

「私の身近では、他に3人しかいませんよ」

「ぎゃあああああ〜〜!!」

思わず悲鳴を上げた、ルイエット。

「マスメディアも交通機関も発達していないこの世界で、普通の民間人の少女が身近で3人も知っている! 自分を含めると、4人!!

それって、あちこちに大勢いるってことじゃないのおぉ〜〜!!」

「あ……」

それは確かに、マイルの説明の仕方が悪かった。

マイルの身近にいるのが、この世界に存在する全数だという説明が入っていないのだから……。

しかし、マイルも別に世界中の魔術師を調べて回ったわけではないので、そう断言することもできないのであるが……。