軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

679 帰還者 5

「……では、あなたは私達の子孫だと?」

「いえ、途中で分岐したのですから、別にあなた達の子孫というわけでは……。

言うならば、祖先を同じくする親戚同士、という感じですかね?

というか、実家であるこの世界を護ってきた私達が本家で、あなた達は地元を捨てて出て行った分家、という関係かと……」

「…………」

マイル……というか、この惑星の人々を自分より下に見ているらしい少女は、マイルの言葉に、少し不快そうな顔をしている。

自分達が蛮人と同等だと言われたのが不服なのであろう。

そして、マイル達が本家で、自分達が分家扱いされたということも……。

……しかし、さすがにそれを口に出す程愚かではなかったようである。

不幸な誤解により第一級戦闘態勢が発動されてしまい、警報ベルが鳴り響き、次々と隔壁板が下り、遠くから 機械が近付いてくる(・・・・・・・・・) ような音(・・・・) が聞こえ、そしてマイルが必死に『ここにいるのは私だけです!』、『敵対意思はありません!』、『助けに来ました!』と両手を上げて叫ぶことによって、何とか敵対行動を停止してもらったのである。

そして、自分の立場と、この 惑星(せかい) の現状を説明したわけである。

……勿論、マイルの転生のこととか、ナノマシンのこととかは喋っていない。

旧大陸の者達が知っている程度、……つまり、異次元世界からの魔物の侵入や、先史文明が残した遺産であるスカベンジャーやゴーレムのこととかである。

ゆっくり歩く者(スロー・ウォーカー) 達のことには、言及していない。

さすがにマイルも、どんな目的でやって来たかも分からない相手に、自分達の手札を全て晒すほどの馬鹿ではなかった。

なので、旧大陸で少し調べればすぐに分かる程度の情報しか渡していない。

自分からは、相手を納得させるために必要な最低限の情報だけを与え、そして相手に関する情報を得る。

……次は、少女から話を聞く番である。

「この惑星……、この世界の状況は、大体分かりましたわ……」

マイルがここを惑星……球体の星……だということを理解していないだろうと思ったのか、少し言い直した少女。

マイルが、異次元世界から来た魔物との戦いに関しては大幅に省略し、遠くの国でのことを噂話で聞いた、ということにして伝聞形式で話したことや、攻撃衛星のことはただ『天空からの、女神の光』とかいう表現にしたことも、少女の推察に影響を与えたものと思われる。

先程のマイルの説明の中には、明らかにこの世界が球形であることを認識していると分かる発言があったし、この 宇宙船(乗り物) に大して驚いていなかったり、少女の話……大昔にこの世界から旅立った者達の子孫であるということ……に疑問も持たずに、そしてそれが意味するところを正確に理解している様子であることとかに疑問を抱いていないというのは、この少女の頭が悪いのか、蛮人如きの知識についてはあまり気にしていないのか……。

「先程申しました通り、私達は大昔にここから去った者達の子孫ですわ。

そして、文明を失い退化したらしきあなた達蛮人……原住民とは違い、高度な文明を維持しておりますわ」

……先程、ナノマシンから聞いた『この船のコンピューターから得た情報』と違う。

大昔にこの惑星から多方面へと旅立った移民船のうち、科学技術を保ったままのものもあるかもしれない。

……しかし、この少女の祖先達は、そうではなかったようである。

何度も文明が後退し、また進み、と繰り返し、今はたまたま『少し進んだ状態』であるだけ、ということなのであろう。

だが、説明が面倒だったのか、自分達を良く見せようとしたのか、その部分は省略されたようであった。

それでも、ずっと剣と魔法の世界のままであるこの惑星と較べれば、立派なものであるが……。

しかし、それはこの惑星に『ナノマシンによる魔法』というものが存在するせいであろうから、決してこの惑星の住民達が馬鹿であるということではない。

「そして、移住先の整備が終わり安定しましたので、母星の状況を確認するために、調査船が派遣されましたの。

長い旅になりますので、恒星系の重力圏外に出てワープ航法に移行し、超空間に入った後、乗員は 冷凍睡眠(コールドスリープ) で、深い眠りに就きましたわ。そして……」

話の続きを、期待して待つマイル。

「先程、目覚めましたわ……」

「早っ! 話の進展、早っっ!!

大事な部分が、すっぽりと抜け落ちてますよっ!!」

説明には、ある程度の省略が必要である。

……しかし、これはあまりにも省略し過ぎであった。

マイルの叫びも、無理はない。

「そう言われましても、これが事実であり、説明の全てですわよ……。

逆に、私が聞きたいですわよ! 他の乗員はどこですの? 母船は? どうして私ひとりが搭載艇で目的地に着陸しておりますの!!」

(あ~……。 恒星船(スターシップ) にしては小さいと思っていたけど、搭載艇だったかぁ……。

そして……。

ナノちゃん、これって、どういうことかな?)

【この船……搭載艇の 航行記録(ログ) を精査しました。それによりますと、この搭載艇は数百年前にこの星系へ到達、その後この惑星の周回軌道に乗った後、再度離脱。小惑星帯にて長期間待機状態にあったようです】

(それが、どうして今になってこの惑星に降下したの?)

【当時のこの惑星の文明レベルでは乗員の生存及び帰還のための手段の確保は困難であるとコンピューターが判断し、時を待つべく、乗員を 冷凍睡眠(コールドスリープ) させたまま安全な場所で待機していた模様です。

そして、惑星上における高エネルギーの発生……これは、対異次元世界防衛戦の時のものと思われます……を感知し、原住生物の文明レベルが上昇したか、あるいは母船、もしくは母星からの他の調査船が到着した可能性に鑑み、この惑星へと接近し……】

(接近し?)

【システムトラブルにより、惑星の重力に引かれて墜落……】

(たはは……。老朽化には勝てなかったか……。

で、母船が出発してから、何が起こったの?)

【そこは、記録がごっそり失われています】

「肝心な部分がないじゃありませんかあああぁっっ!!」

「ひっ!」

「あ、ごめんなさい! 何でもないです、ただの 独(ひと) り 言(ごと) ですから!」

急に黙り込んで、ぼんやりとして目の焦点が合っていない状態になった原住民の少女の様子を心配そうに見守っていると、突然大声で怒鳴られた。

それは、大抵の者は驚いたり怯えたりするであろう。

それに気付き、慌てて誤魔化そうとする、マイル。

「……し、しかし、調査隊のメンバーとしては、随分お若いですよね……」

そう。マイルが疑問に思うのも、無理はなかった。

この少女は、この惑星の者から見ると、どう見ても15~16歳くらいにしか見えず、とても調査隊のメンバーに選ばれるような年齢とは思えなかった。

「自慢じゃないですけど、私は天才ですからね。これでも、飛び級でソリスラーズを出ておりますのよ!」

「……は、はぁ……」

自慢以外の何ものでもない台詞を聞かされ、返事に困るマイル。

(……多分、『東大の大学院』とか、『博士課程』とかいうような意味なんだろうな……)

そんな固有名を出されても、何のことか分からない。

しかし、おそらく教育機関名か教育課程の名であろうと、納得するしかない。

(しかしそれだと、勉学的な頭の良さはあっても、一般常識や人間関係的なことは、逆に年齢相当以下かもしれないよね……)

そして、レーナ達が聞けば、『オマエが言うかあぁ〜〜!!』と怒鳴られそうなことを考える、マイルであった……。