軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

675 帰還者 1

《UFO1機、急速接近中……》

《直チニ、全ステーションヘ通報……》

* *

『管理者サマ、緊急連絡キタ!』

「うおっ!!」

突然、自分の 無い胸の谷間(・・・・・・) からひょっこりと頭部を出したメカ小鳥に、思わず驚きの声を上げた、マイル。

このメカ小鳥は、クランメンバーしかいない時にはマイルの肩や頭の上に乗ったりもするが、他者がいる時には、このようにマイルの胸の間に収まっていることが多い。

……そこであれば、多少膨らみが増えても目立たないので……。

以前、レーナにそのことを突っ込まれた時には、マイルは『私の付き人…… 付き鳥(・・・) だからですよっ!』とか、『他の人には聞こえないように、私に連絡するためですよっ!』とか言っていたが……。

今はクランハウスにいるのであるが、たまたま胸の間で 寛(くつろ) いでいたようである。

……メカ小鳥に、『寛ぐ』という概念があるのかどうかは分からないが……。

「メカ小鳥ちゃんには、そんな長距離用の通信機能は……」

『 中継装置(レピーター) 、管理者サマガイル場所ニ優先的ニ設置サレタ……』

「あ、そうか! 中継装置(レピーター) があれば、メカ小鳥ちゃんの体積内に収まる通信機器や電源でも大丈夫……、って、そんなことより、緊急連絡の内容は?」

自分が話を逸らしておきながら、メカ小鳥に対して『そんなことより』とか言うマイルに、冷たい視線を向けているレーナ。

メーヴィスとポーリンは、苦笑している。

しかし、皆、表情には出していないが、あの『 ゆっくり歩く者(スロー・ウォーカー) 』達……今はタイムスケール可変装置を使っていないので、皆と同じ速度で 刻(とき) を歩んでいるが……が緊急連絡に値すると判断した事態に、少し緊張している様子であった。

それは、今まで一度も使われたことのない言葉であったので……。

『UFO1機、急速接近中……』

「えええええええええ〜〜っっ!!」

大声を上げて驚くマイルであるが、レーナ達は平然としている。

「み、みみみ、皆さん、どうしてそんなに落ち着いているのですかっ!」

そう叫ぶマイルであるが……。

「……ゆーえふおー、って、何よ……」

レーナのその言葉に、こくこくと頷く、メーヴィスとポーリン。

「あ……」

何が起きたのかが分からなければ、驚きようがない……。

* *

「……それじゃあ、その『ゆーえふおー』とかいうのは、空の彼方の別の世界から飛んで来た乗り物、ってこと?」

「あ、『ユーフォー』と言ってください。『ユーエフオー』と呼ぶのは、前に『謎の円盤』という言葉が付くか、後ろに『高速接近中』って付く場合だけです」

「どうしてそんな面倒な決まりがあるのよっ!」

マイルの謎の拘りに、キレ気味のレーナ。

……しかし、これはマイルが正しい。

仕方のないことなのである……。

「それと、UFOというのは『未確認飛行物体』のことなので、別に乗り物だと限定されるわけじゃありません。正体が分かっていない空を飛ぶものは、全部『UFO』です」

「さっきの説明と違うじゃないの!!」

そう、さっきマイルはUFOのことを、地球で言われるところの『空飛ぶ円盤』、……宇宙人の乗り物として説明したのである。

それを、後からひっくり返されては、レーナが怒るのも無理はない。

「……つまり、乗っているのは空の彼方から来た者ではなく、地底人や海底人かもしれないし、乗り物なんかじゃなく、ただの自然現象とか見間違いとかかもしれない、ということかな? 正体が不明なものは、全部そのUFOって呼ばれると?」

「その通りです! さすがメーヴィスさん。さすメー!!

……まぁ、『 ゆっくり歩く者(スロー・ウォーカー) 』さんが緊急連絡を出す時点で、空の彼方からの来訪者であることは、ほぼ確実なんですけど……」

既に、この惑星の衛星軌道には警戒衛星が上げられているし、他の惑星の衛星軌道や、恒星の公転軌道にもいくつかの衛星が投入されているという報告を受けている、マイル。

それらを使って情報収集をしている連中からの報告なのであるから、間違いである確率は非常に低いであろう。

「……で、問題は、そのUFOがやって来た目的ですよ!

偵察、侵略、観光、独裁者に支配された惑星からの逃亡者、実はUFOは移動機能付きタイムマシンであり未来からの訪問者だった、その他諸々……」

「全部、マイルの『にほんフカシ話』に出てきたヤツだよね!」

何だか嬉しそうに、瞳をキラキラと輝かせているメーヴィス。

(……ナノちゃん、これってナノちゃん的にはどうなの?

干渉できるの? それとも、あの異次元世界からの侵入者みたいに、『この惑星のものではないから』という理由で、直接的な干渉は禁止なの?)

【いえ、それが……。

どうやら アレ(・・) は、 私達(ナノマシン) が干渉しても構わないカテゴリーのもののようで……】

「えええええっ!!」

予想外のナノマシンの返答に、思わず声を出してしまった、マイル。

……しかし、今更それに驚くようなクランメンバーはいなかった。

そういう時にはマイルが『頭の中で、魔法の国から来た妖精さんと話している』ということは、みんなが知っているので……。

『真ッ直グ、コノ惑星ニ向カッテル。大気圏突入マデ、アト6.3ジカン……』

ここで、メカ小鳥が残された時間を告げた。

(ナノちゃん、UFOの着陸地点を操作できる?

向こうには気付かれないように、自然な感じで……)

【無理ですよ! あ、いえ、こちらの思う場所に着陸するようにはさせられますが、向こうはどこに降りるかを自分で決めるでしょうから、それを別の場所に降ろすなら、『自然に』とか『気付かれないように』とかいうのは、不可能ですよ。

それに、着陸するつもりかどうかも分かりませんし。

未開惑星に着陸するような危険を冒すことなく、上空から調査するつもりかもしれませんし……】

(なる程、そりゃそうか……。

じゃあ、『向こうの乗り物に、なぜか急に不具合が発生して……』というのは?)

【可能です】

(なら、ここからそう遠くなくて、ヒト種や亜人、古竜とかが近くに住んでいない、他の者達に迷惑がかからず秘密が守れるような場所に降ろしてあげて頂戴)

【はい、分かりました。

我々としましても興味深い相手ですし、造物主様から託されましたこの惑星に、無用な混乱が生起するのは、望ましいことではありませんので……】

「……じゃ、そういうことで!」

「どういうコトよっっ!!」

マイルとナノマシンの脳内会話を聞くことができないクランメンバー達は、レーナの怒鳴り声に、こくこくと頷いていた。

……マイルの胸の間からちょこんと頭を出している、メカ小鳥も一緒に……。