軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

663 帰 省 13

孤児達を孤児院へ連れて行き、院長以下の従業員と子供達に紹介し、今後のことを指示したレーナは、2台の荷馬車と馬達を孤児院の財産として引き渡し、そのまますぐに出発した。

今回は馬車の御者席に乗っての領地入りであったため、すぐに代官邸に情報が回る。

こういう時は、 一撃離脱(ヒットアンドアウェイ) である。

戦術の基礎については、マイルとメーヴィスから色々と教わっている。

そして、無事、再度国境を越えることができたレーナは、ようやくひと息吐いていた。

「とりあえず、早急に収納魔法の確認をした方がいいわね。

何となく、だいたいのことは分かるんだけど、正確な容量とか、生き物を入れられるか、入れた生き物は中で生きているか、食品の傷み方はどうか、その他諸々……」

勿論、マイルの 収納(・・) については、その性能をかなり詳しく知っている。

しかし、それが普通の収納魔法とは全く異なるものであることも当然知っているため、レーナはそれを基準として考える程の馬鹿ではない。

事実、メーヴィスが会得した収納魔法は、食品の傷みが停止したりはしないし、入れておいた料理は冷める。

普通の収納は、ごく一瞬であれば、生き物を入れても死なない。

しかし、長時間入れておくと、生物によって時間の違いはあるものの、その大半は死ぬ。

これは、生成された亜空間には空気がないためであるが、『空気を一緒に収納する』とか、『定期的に空気を入れ換える』という発想に至らないため、その原因は不明とされている。

息苦しくても、水中でもないのに 空気がない空間(・・・・・・・) というものがきちんと認識されていないのであろうか……。

とにかく、そのため、賊を殺す気がなかったレーナは、賊そのものを収納することなく、武器や防具だけ収納したのである。

マイルと『ワンダースリー』の収納は時間が経過しないため問題ないらしいということは知っているが、メーヴィスと、一応亜空間は開けるポーリンの収納はごく普通のものであったため、自分のも別に特別製ではないであろうと考えたのは、当然のことであろう。

また、レーナが『ワンダースリー』による収納転移を皆の中で一番怖がっていたのも、そのあたりのことに詳しかったためである。

無知な者は怖がらず、知識がある者は怖がる。当たり前のことであろう。

あのモレーナ王女の『収納護衛兵』においても、最初は皆怖がり、希望者はゼロであった。

王女が皆の前で何度も説明し、動物実験を繰り返すことによって、ようやく勇気ある志願者が現れたのである。

それがまさか、体感時間ゼロで給金が貰える上、出番があれば特別報酬が貰えるとして大人気となるとは、当時は誰も想像すらしていなかったそうであるが……。

一応、王女達の能力は普通の『収納魔法』ではなく、女神から与えられた特別な能力だということになっているらしい。

あれを収納魔法ということにするのは、色々と問題があったのであろう……。

* *

「……というわけで、実家に顔を出して、家族とのひとときを過ごして参りました。

再び西方の大陸へ行くまで、」

「「「殿下のお側に……」」」

「……」

自分の前で 跪(ひざまず) き、声を揃えてそう申告した『ワンダースリー』を黙って見下ろす、モレーナ第三王女。

「…………」

「あの、殿下?」

「………………」

「でっ、殿下、どうなさいました?」

無表情で反応のないモレーナの様子に、次第に焦りの表情を浮かべ始めるマルセラ達。

それぞれの実家に顔を出した3人は、楽しいひとときの後、話の内容が縁談とか婚約とかになり始めた途端、直ちに逃げ出したのである。

自身が貴族家当主であり親と対等の立場であるマルセラは、両親からの縁談の強要をある程度拒否することができなくもない。

しかし 女準男爵(バロネテス) という名誉称号を貰っただけの平民であるモニカとオリアーナにはそんな立場はないし、平民である両親には、下級貴族や大商人からの軽い圧力にすら到底抗えるわけがなかった。

……なので、たくさんの縁談の内容を、両親が伝書鳩のように伝え始めた時点で、慌てて逃げ出したのである。

聞いてしまえば、色々と困ったことになる。

しかし、聞いてさえいなければ、どうということはない!

そういうことにして、『赤き誓い』と落ち合って西の大陸へ戻るまでの間、王宮に籠もろうと考えたわけであるが、……モレーナ王女の様子がおかしい。

「……どういうことですの?」

「はい?」

「私とエストさんの収納転移システムを使って戻ってきたのは、マルセラさん、あなただけですよね? なのに、どうして3人揃っておりますの?」

「……あ」

「「「あああああああっ!」」」

「 失敗し(シクり) ましたわああああぁ〜〜っっ!!」

慌てるマルセラ達を、冷ややかな眼で見る、モレーナ王女。

「……いえ、まぁ、勿論知ってはいましたけど……。

明らかに私達よりも女神のお覚えめでたきあなた達が、私達に与えられている能力をいただいていないわけがありませんわよね。

ええ、分かっていましたわよ、そんなことだろうと……」

「あ、いえ、あの、その、……あはは……」

「「あはははは……」」

ここは、笑って誤魔化すしかない。

そう思い、引き攣った笑い声を溢す、『ワンダースリー』の3人であった……。