軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

650 収納魔法 2

「あ、ポーリンさん、足元に金貨が……」

「えっ!」

ドサドサドサ~!

訓練のため収納に入れていたたくさんの小石が、ポーリンの前に溢れ出た。

「あ……」

ポーリンの気を散らすために色々と話し掛けて訓練に協力しているマイルであるが、やはり大きく動揺すると亜空間の維持が崩れるようである。

レーナは、邪魔をしなくても維持に苦労しているため、まだこの訓練を行うところまで行っていない。

「「むむむむむむむ……」」

頑張るふたりであるが、まだ、先は長そうである。

そしてふたりの後ろでは、『ワンダースリー』の3人が訓練をしている。

レーナから、『座学だけの参加だと思っていたのに、どうしてあんた達が収納魔法の実技訓練にも参加するのよ!』と突っ込まれていたが、マルセラ達も、本当の収納魔法を自力で会得できるかもしれないこんな機会をみすみす 逃(のが) すような馬鹿ではない。

なので、『少しでも容量が大きくなれば、と思いまして……。ホホホ!』とか言って誤魔化し、レーナ達の特訓に便乗していた。

実は、マイルはナノマシン達に『「ワンダースリー」の収納魔法の訓練には、アイテムボックス用に専属となっているナノマシン達は協力しないように』と指示している。

借り物の力であるアイテムボックスのみが使えることを良しとせず、自力で収納魔法を会得しようとしているのである。

そこにナノマシンが 忖度(そんたく) しては、意味がない。

『ワンダースリー』は、全員の権限レベルが2である。

それだけでも、一般の者達に較べれば、充分なアドバンテージなのである。

しかし、レーナとポーリンもそれは同じなので、この点においては、ふたりに対して後ろめたい思いをせずに済む。

堂々の、対等な勝負である。

……しかし、そうなると、魔法に関する才能の差でレーナとポーリンには大きく後れを取り、マルセラ達はまだ亜空間を開くことさえできていない。

ここは、創意工夫ではなく、天性の才能とセンスが要求されるところなのであろうか……。

さすがに、初日で会得、というほど甘くはなかったが、それでも何かの切っ掛け、突破口の手応えを感じたのか、レーナとポーリンの目は、少し自信を取り戻したかのように見えた。

* *

「皆さん、一度、帰省しませんか?」

「「「「「「え?」」」」」」

クランハウスでのティータイムに発せられたマイルの突然の言葉に、驚くクランメンバーの6人。

「いえ、ハンターとしての仕事も安定してきましたし、レーナさんとポーリンさんの収納魔法の訓練もかなり進展がありました。

このあたりで、休暇を兼ねて、一度旧大陸の様子を見に戻ってはどうかと……。

万全の態勢を整えてやって来た『ワンダースリー』の皆さんや、身代わりに任せてきた私とは違って、レーナさん、ポーリンさん、そしてメーヴィスさんは、かなりいい加減な状態でバックレて来ちゃったんですよね?」

「「「うっ……」」」

どうやら痛いところを突かれたらしい、3人。

長期間不在にしていても、救国の大英雄であるレーナ達の領地をどうこう、とか考える者はいないであろうし、もしいたとしても、周辺の領主達どころか、国中が、そして周辺国全てが兵を出して叩き潰すであろう。

それが分かっていて、おかしなことを考える者がいるはずがない。

なので、皆が安心して新大陸に来られたわけであるが……。

やはり、たまには領主が判断し決裁せねばならないこともあるし、あまり国や領地の者達を心配させるわけにもいかないであろう。

……ただ、問題は……。

「領地邸に顔を出したら、捕まっちゃうわよ!」

「毎日、お見合いさせられるよ……」

「アランが私の爵位を狙っているかも……」

さすがポーリン、自分の弟のことをよく理解していた。

「とにかく、見つかったら捕まって、逃げられなくなっちゃうわよ!」

「……同じく、」

「「「いさかじゅうぞう!!」」」

そして、自分の持ちネタの普及状況に、うんうんと嬉しそうに頷く、マイル。

「ヒットアンドアウェイで行きましょう!

素早く目的を果たし、素早く離脱。……何とか、なるなる!」

「「「…………」」」

少し不安ではあるが、領地や家臣、領民達のことも心配であるし、メーヴィスとポーリンは久し振りに家族にも会いたかった。

そしてレーナも、自分の領地で面倒をみている孤児院のことが気にかかっていた。

なので、仕方なくマイルの提案を受け入れたのであった……。

* *

「……本当に、大丈夫なんでしょうね?」

心配そうなレーナに、もう何度目かになる説明を繰り返す、マルセラ。

「ええ。まず、私が王女転移システムで国元に戻りますわ。

実家に顔を出す用事ができたからと申しまして……。

そして、皆さんにモニカさんかオリアーナさんのアイテムボックスに入っていただき、向こうの王都の目立たない場所で私が取り出します。

そして皆さんの用事が終わりましたら、私がまた王女転移システムで移動しまして、その後また皆さんにモニカさんかオリアーナさんのアイテムボックスに入っていただきます。

最後に、モニカさんとオリアーナさんも、御自分のアイテムボックスに入っていただきます」

もう何度も打ち合わせ済みであるが、マルセラの再度の念押しに、こくりと頷くモニカとオリアーナ。

もし何かあったとしても、みんなで王女転移システムを使うこともできるし、いざとなれば、またケラゴンに運んでもらうこともできる。

ただ、全員が王女転移システムを使うと、マイルを含む『赤き誓い』全員が他の大陸に行っていることがモレーナ王女にバレてしまうため、それは何かとてもマズいことが起きた場合にしか使わない、最後の手段である。

「では、行って参りますわ」

そう言って、ひとりで王宮へと向かう、マルセラ。

門番と話して、第三王女殿下のところへ話を通してもらい、王女殿下にこの国でどういう活動をしていたかを根掘り葉掘り聞かれ、母国やモレーナ王女のことを聞かれ、その他諸々で、とにかくすぐに転移させてはもらえないであろうことは、容易に予想できた。

下手をすると、夜通し話をさせられて、転移は翌日になる可能性もある。

そして、転移した後も、今度はモレーナ王女相手に同じことが繰り返されると思われる。

……とんだ貧乏くじである。

しかし、平民であるモニカやオリアーナにその役が務まるはずもなく、『ワンダースリー』のリーダーとして自分がやらざるを得ないことを納得しているマルセラ。

……納得してはいる。してはいるのであるが……。

(これから、大陸間を移動する度、ずっと私がこれを担当しなければならないのですか……)

あまりマルセラだけが移動していると怪しまれるであろうから、時には3人全員が『王女転移システム』で移動する必要があるが、その時も、やはり説明役はマルセラが務めるしかあるまい。

……仕方ない。『ワンダースリー』の中で、貴族なのも、王女殿下相手に上手く誤魔化して説明できるのも、マルセラしかいないのだから……。

(マイルさんやメーヴィスさんにお願いすることができれば……。

あのおふたりなら、001に頼んで共用のアイテムボックス使用権を与えてもらうことも……、って、いえいえ、これ以上マイルさんや001にズルをお願いするわけには参りませんわ!!)

そして、プルプルと頭を振って余計な考えを振り払い、城門へと向かうマルセラであった……。