軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

635 本格始動 8

ゾロゾロと、7人揃って街を歩く『赤き誓い』と『ワンダースリー』。

可愛い少女達がそんなに大勢で歩くと、メチャクチャ目立ち、注目を集める。

なので、普段はあまり全員揃って出掛けることはない。ギルドへ行く時も、時間差を設けて別々に行くくらいなのである。

しかし今日は、互いに食べられないもの、苦手なものの確認や、食材費にどの程度の予算を割くか、……つまり『食事の質』を決めるために、全員揃って市場へと向かっているのであった。

ハンターとしての仕事は、お休みである。

「さすがに、この人数だと声を掛けてくる人はいませんね」

マイルがそんなことを言っているが、当たり前である。

いくら少女だとはいっても、7人。

それも、剣士ふたりに、魔術師5人である。しかも、明らかに全員がハンターらしき装備を身に着けている。

前衛職がふたりと、ハンターが務まるほどの貴重な魔術師が、5人。

しかも、魔術師の内の3人は、 杖(スタッフ) と短剣……ナイフとかではなく、全長35センチくらいある、『短い剣』……の両方を持つという、魔術師としては重装備の部類である。

魔術師達の得意分野によっては、相手がベテラン兵士や熟練の傭兵でなければ、3倍以上の敵を瞬殺することができるくらいの戦力である可能性すらある。

しかもその魔術師達は、防御力が低いと自覚している自分自身への攻撃、もしくはその予備動作に対しては、容赦なく全力で反撃する。

それも、普通の魔術師のように 杖(スタッフ) を振り回すのではなく、短剣を振り回しながら……。

そんなのに絡もうとするチンピラや下級ハンターは、いない。

なので、割と気楽な感じで歩いていた一行であるが……。

「ああっ、竜巫女四姉妹さまっ!」

「「「「「「「何か変なの、キタ~!!」」」」」」」

突然、通り掛かりの4人連れの男達に声を掛けられた。

「ごめんなさい。私達が対処しますわ……」

申し訳なさそうに、『赤き誓い』の4人に向かってそう謝罪するマルセラであるが……。

「船と乗員、乗客の命をお救いくださり、まことにありがとうございましたっ!!」

その男性と連れの3人は、マイル達『赤き誓い』に向かって、深々と頭を下げたのであった。

「『 ワンダースリー(わたしたち) 』じゃなくて、マイルさん達の方ですかっ!!」

「「「「あはは……」」」」

* *

4人の男達には、お忍び……全然忍んでいないが……なので騒がないように、とお願いして、感謝の言葉を受け取った後、そそくさとその場を後にした一行。

「……あれ? 確かにマルセラさん達もケラゴンさんに乗っていたから『竜巫女』と呼ばれて自分達のことだと勘違いされたのは分かりますけど、あの人達、『四姉妹』って言ってましたよね?

なら、マルセラさん達のことじゃないと分かったのでは……」

マイルが、そんな突っ込みを入れたが……。

「王女転移システムのブランデル王国側のゲート役、モレーナ第三王女も乗っていたから、4人でしたわよ……」

「あ、ソウデスカ……」

実はマイル、モレーナ王女とは一度会っているのだが、勿論、名前を覚えていたりはしない。

……というか、あの時には名前を聞いてすらいなかったので、あの時の王女様のことだとは気付いていなかった。

そして、以前マルセラから『王女転移システム』について聞いた時にも、今回と同じく、そのことには全く気付いていなかったのである。

「まあ、私達がケラゴンさんに乗っているのを見られたのは、あの船に乗っていた人達だけですからね。

あの4人は、あの時に私達が倒した 海棲魔物(シーサーペント) を売ってかなり儲けて、そのお金で一生の思い出にと周辺国を旅して廻っているそうですから……。

あの時の船がこの国に寄港したというわけではないので、他の乗員や乗客の皆さんに出会う確率は、かなり低いでしょう。

なので……」

「次に私達を竜巫女と呼ぶ者に出会ったとすれば、今度は『 ワンダースリー(わたしたち) 』関連ですわよね……。

それも、おそらくは王宮内で近くから私達を見たことのある貴族か王族、もしくは王宮勤めの者……。

中庭でケラゴンさんに乗り降りした時は、一般の王都民からは距離があったから私達の顔の判別はできなかったでしょうし、皆の視線はケラゴンさんの方に向いていて、あの状況で私達の方を注視していた方なんかおられないでしょうからね」

「え? それじゃあ、見つかると面倒事に……」

「……は、あまりならないと思いますわよ」

レーナの心配を、そう言って軽く 払拭(ふっしょく) するマルセラ。

「ケラゴンさんの御威光で、モレーナ王女と、その護衛である私達に手出しするような方はおられないと思いますわ。

いくら私達を手中にすれば古竜との繋がりが、とか考えましても、一歩間違えれば、古竜を怒らせて国が滅びますのよ? そのような、全てを失うかもしれない危険を冒す者がいまして?

今現在、失うものなど何もない者がイチかバチかの一発勝負に賭ける、というならば、まだ分からないでもありませんわ。

しかし、既に十分なお金と地位と権力を持っている者が、それをほんの少し増やすというだけのために、古竜を馬車馬代わりに使ったり、友達扱いするような者を怒らせたり、敵に回したりする危険を冒すとでも?

自分だけでなく、家族、親族、一族郎党、そして国そのものが滅び、貴族にとって何よりも大切な お家(・・) が滅び、血筋が絶える。

古竜の機嫌を損ねるというのは、そういうことですのよ?」

そんな者、いるはずがない。

「もしいても、せいぜい御機嫌を取って取り入ろうとか、そういう感じですよね。

……まぁ、そういうのも結構 鬱陶(うっとう) しいですけど……」

マイルの言葉に、うんうんと頷く一同。

権力を笠に着て突っ掛かってくる者も面倒であるが、擦り寄ってくる者もまた、面倒であった。

前者は、力によるゴリ押しには力で、ということで、プチッと潰せば良いが、へりくだって擦り寄る者には、そういうわけにもいかない。

何も悪いことをしていない者を、鬱陶しいからといって潰せば、それは暴君だ。

なので、言葉で拒絶するしかないのであるが、……そういう連中が、言葉で拒否されたからといって、そう簡単に諦めるわけがなかった。

「「正面から喧嘩売ってくれれば……」」

「いいんですけどね」

「いいんだけどね」

語尾以外はハモった、ポーリンとレーナ。

このふたりは、特に強く ソレ(・・) を望んでいるようであった。

レーナはうんざりしたような顔で。

……そしてポーリンは、なぜか、やけに楽しそうな顔で……。

((((ポーリンさんには、気を付けよう……))))

そして、その邪悪な笑みを見て、そう心に誓うマイルと『ワンダースリー』であった……。