軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

617 クラン 1

「な、なる程……。そうすれば、レニーちゃんのところに気軽に顔を出せるし、マレエットちゃんが意に染まぬ婚約を強制されたりしないように見張ることもできますね……」

マイルはまだ、マレエットちゃんがその対策としてマイル001に相談に来たことを知らない。

マルセラ達はそのことを知っているが、喫緊の用件ではないため、まだその件は話していなかったのである。

「そうすると、 旧大陸(むこう) での移動手段が弱いですねぇ……」

「え? どういうことよ?」

マイルの呟きに、疑問の声を掛けるレーナ。

「あ、いえ、大陸間を一瞬で移動できても、その後、転移先であるブランデル王国の王都からティルス王国の王都や皆さんの領地、御実家等に移動するのに、それぞれかなりの日数が掛かりますよね?

それって、何だか時間を無駄にするみたいで、嫌というか、負けたような気分というか……」

「「「あ〜〜……」」」

『ワンダースリー』の3人は、ブランデル王国の王都に転移すれば、皆、実家まではそう遠いわけではない。

マルセラは、自分や親の領地までは数日掛かるが、王都には実家の王都邸がある。

実家も男爵から子爵に陞爵したし、マルセラが自分だけの王都邸を用意する必要はないと判断したため、実家とマルセラの両方の子爵家王都邸を兼ねた、そこそこ立派な物件を確保したのである。

子爵になっても貧乏性が抜けないマルセラ一家であったが、さすがに子爵家としての体面を保つ必要性は理解していたようである。

オリアーナは実家がある村まで定期馬車で数日だし、モニカの実家である商家はマルセラの実家、つまり親の領地にある。

まぁ、全て王都から数日で行ける圏内である。

……しかし、『赤き誓い』の方は、そうではない。

ティルス王国の王都を中心として、各方面に散った場所にある、それぞれの領地。

国の 端(はじ) っこにある、マイルの神殿と領地。ブランデル王国にあるアスカム侯爵領(旧アスカム子爵領)。

旅の途中で仲良くなった、『女神のしもべ』や各地の知り合い達。面倒を見た各地の孤児院。

『赤き誓い』の4人は、旧大陸に戻った時に顔を出したい場所が多く、そしてそれらの距離が離れすぎていた。

なので、せっかく大陸間を一瞬で移動できても、『ワンダースリー』の転移先がブランデル王国の王宮内、モレーナ第三王女の部屋に限定される以上、 旧大陸(むこう) での移動に時間が掛かりすぎるのである。

勿論、『ワンダースリー』によってマイル達が転移するのは、『ワンダースリー』が王宮から出てからこっそりと、ではあるが……。

「う〜ん、何かいい案がないかなぁ……」

マイルが思いつく『速く移動できる手段』は、ないわけではなかった。

空を飛ぶ。

クルマを造る。

……ナノマシンは『禁則事項です!』と言うであろうが、『 ゆっくり歩く者(スロー・ウォーカー) 』に頼めば、禁則事項など関係なく乗り物を製造してくれるはずである。

既に、金属等は地下鉱脈から採掘して製錬しているであろうから、以前のように金属不足で困っているということはないはずである。

(でも、街道をクルマで飛ばして、というわけにはいかないよねぇ……。飛行機は、滑走路がないし……)

マイルがそう考えて乗り物案は断念したが、当たり前である。

「ケラゴンさんに頼むのも、たまにタクシー代わりを頼むのはともかく、お抱え運転手みたいにしょっちゅうお願いするのは、さすがに申し訳ないよねぇ……」

普通、古竜をアッシー君として使う人間は存在しない。

マイルが『水平方向に落ちて』先行し、他の者はアイテムボックスを使って、というのも、マイルが『赤き誓い』のメンバーにはマルセラ達のような ズル(・・) はさせずにちゃんと独力で正規の収納魔法を会得させようとしているため、ボツである。

「乙女の時間は短いのです、移動で無駄に日数を潰すことはできません!

あああ、どうすれば……」

「馬車や馬は、今の私達なら購入費や維持費は大した問題じゃないけれど、使う機会が少ないからずっと牧場に預けっぱなし、というのは、馬に申し訳ないからねぇ。

馬も、仕事もせずにずっと牧場でゴロゴロして一生を終えるために生まれてきたわけじゃないのだから……」

「いえ、それ、馬にとってはメチャクチャ幸せな一生なのでは……」

「「確かに……」」

メーヴィス、皆に自分の考えを完全否定され、さすがに少しムッとしている。

「スカベンジャーに輿を担いでもらい、あの高速シャカシャカ歩きで街道をばく進……」

「「「却下!」」」

目立ちすぎるし、恥ずかしすぎるし、ハンターや兵士が『少女達が魔物に攫われている』と勘違いして斬り掛かってきそうである。

「マイルさん、それはまた後で、皆さんだけで御相談くださいな……」

「……あ、ごめんなさい……」

完全に話が脱線して本題が全然進まないため、さすがにマルセラから物言いが付いた。

「とにかく、クランの件、お考えくださいな。悪い話ではないと思いますわよ」

「「「「…………」」」」

確かに、マルセラが言う通りではある。

しかし、皆で相談もせずに即答できるようなことではない。これもまた、後で皆でじっくりと相談することとなった。

「では、明日は王都とこの辺りのことについて色々と御説明しますわ。

特に、魔物が異常に頭が良い、ということとかを……」

「「「「あ、やっぱり!」」」」

まだ王都とこの町のことしか知らないだろうと思っていた『ワンダースリー』が、既にそのことを知っている。

……さすがだと感心する、『赤き誓い』の4人であった。

「明後日には、一緒に王都へ引き返しましょう。

……で、申し訳ないことがありまして……」

「え? どうかしたのですか?」

俯いて、困ったような顔をするマルセラと、あ、というような顔で視線を逸らすモニカとオリアーナに、不思議そうにそう問うマイル。

「先程の説明では省略したのですけど、ケラゴンさんにこの大陸にお運びいただきました時、人目に触れない場所に降ろしていただいて歩いて王都に来たのではなくてですね、あの、その……」

いつもはっきりと物事を言うマルセラらしくない態度を疑問に思うマイルであるが……。

「そのまま王宮の庭に降りまして、色々と騒ぎに……。

そして私達の姿を見た方も、かなりの人数に……。

ですので、私達と一緒ですと、ほんの少し目立って注目されるかもしれないのですわ……」

「何じゃ、そりゃあああ〜〜!」

「それは、目立つとかいうレベルの話では……」

「あ、あはは……」

呆れる、レーナ、ポーリン、メーヴィス。

そしてマイルは、マルセラの肩をポンポン、と軽く叩いた。

「うっかりさんですねぇ……」

「マイルさんだけには言われたくありませんわよ!!」

マルセラの言葉に、うんうんと頷くモニカとオリアーナであった……。