軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

593 商人の少女 3

「……で、どうして私達はこの子と一緒に行動しているんだい?」

「「「…………」」」

そう。

なぜか、駆け出しの商人の少女アルリが、まだ『赤き誓い』と一緒にいるのである。

そして、『さっさと断ればいいだろう』という、ごく常識的なことを考えているのが、なぜかメーヴィスひとりだけなのである。

レーナとポーリンは、『こんな常識のない危険物を野に放つのは、同じ商人の端くれとして、看過できない!』という、何だかよく分からない使命感から。

……そしてマイルは、ただ単に『何だか、面白そうな子だなぁ』と思っているだけであった。

もしかすると、コミュ障で友達がいなかった前世の 自分(みさと) と少し被って見えているのかもしれなかった。

いや、言いたいことも言えなかった 海里(みさと) とは違い、とんでもないことをずけずけと言い放つアルリは、全く 被(かぶ) るところがないと思われるのであるが……。

ただ、『友達がいなさそう』という点では、丸被りのような気がする。

そして、宿にまでついてきたアルリであるが……。

「大量の魔物素材を流すのがハンターギルド経由でなくともマズいのであれば、他の儲け口がありますよっ!」

「どんな方法ですか?」

儲け話と聞いて、興味津々で食い付くポーリン。

「荷運び屋です。重量物、 嵩張(かさば) るもの、そして壊れやすいもの。

馬車を必要とせず、大量輸送。これなら……」

「あ~」

「あ~」

「あ~……」

「え?」

反応が悪い『赤き誓い』の面々に、戸惑うアルリ。

「あの~、私達は『Cランクハンター』なので……」

「荷運びは、専門の業者か、稼ぎが悪いDランク以下のハンターが生活のためにやむなく受ける雑用扱いだわよ!」

「Cランクの私達がそういう仕事を受けるのは、ハンターとしては恥ずかしい行為なんだよ。専門業者や新人ハンターがやるべき仕事を上の者が奪う、ってことになって……」

「いくら大容量の収納魔法があるから規模が違うとは言っても、その事実は変わらないわけで……」

「え……」

ハンターについてそんなに詳しいわけではない駆け出し商人なら、そのあたりのことは知らなくても仕方ないであろう。

そして……。

「じゃあ、宝飾店の前を通る時に、商品を収納すれば……」

「犯罪だよっ!」

「窃盗じゃないの!」

「そんなこと、できるはずがないですよっ!」

「……そうか、その手がありましたか!」

「「ポーリン!!」」

「ポーリンさん……」

冷たい目でポーリンを見る、3人。

「じょっ、冗談ですよっ、冗談!」

慌ててそう言うポーリンであるが、他の者が言ったならともかく、ポーリンだと洒落にならない。

「いや、皆さん、私を何だと思ってるんですか!!」

焦るポーリンであるが……。

「守銭奴」

「カネの亡者」

「お金のためなら、何だってやる」

「「「アルリの同類」」」

「何ですか、それはああああぁっっ!!」

ポーリン、パーティの仲間達に正しく認識されているようであった。

ポーリンが少し機嫌を損ねたため、ちょっとイジり過ぎたかな、と思い、マイルが話をアルリに戻した。

「アルリさんは、どうして商人になられたのですか? あまり向いていないように思うのですけど……」

マイル、かなり失礼なヤツである。

普通、相手にそんなことは言わない。

前世の妹が聞いたら、『そういうトコだよ、お姉ちゃん……』とか言いそうである。

「父さんが、商人……」

「あ、やはりお父さんの跡を継ぐために……」

「は力仕事をして汗を流さなくても楽に稼げていいなぁ、と言っていたから……」

「と違うのですかあっ!」

どうも、話がうまく進まない。

それに、何だかアルリの声が低くなり、抑揚もなくなっている。

顔も無表情になっており、先程までのテンションがなくなっている。

喋るのも遅く、口数が少なく……。

「どうして急にテンションが下がって、そんなに極端に無表情で無口になるんですかっ!」

「……これが地……。仕事の時は、無理してああいう役作りをしてる……。

そろそろ、無理が来て時間切れ……」

「「「「何じゃ、そりゃああっ!!」」」」

やはりマイルが言っていた通り、商人には向いていないようであった……。

* *

「……では、アルリさんは王都に住んでいた、と……。

じゃあ、どうして地方都市に来られたのですか? 普通なら、商人は王都へ行きたがるものだと思うのですけど……」

マイルの言葉に、うんうんと頷くレーナとポーリン。

そして、アルリの返答は……。

「地方都市で生まれ育った目端の利く商人はさっさと王都へ行くだろうから、残っているのは能力がない者達ばかり……。なので簡単にのし上がれると思った……」

「「「「…………」」」」

いや、言わんとしていることは分かる。

そして、何となく理解できなくはない。

しかし……。

「「「「何じゃ、そりゃあああ〜〜っっ!!」」」」

……そう。やはり、理解はできても、納得はできない考え方であった……。

「地方都市の商人はみんな馬鹿、ってわけじゃないわよ!」

「その論法だと、あなたも王都でやっていける能力がない馬鹿だってことじゃないですかっ!」

「……そして、全然のし上がれてないじゃないですかっ!」

「たはは……」

手強(てごわ) い。

……戦うのとは、別の意味で。

何だか、疲れてきた『赤き誓い』一同であった……。