軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

586 その頃…… 3

「やめろ!」

「おい、『果てしなき旅路』、その申し出を受けるな! 蹴れ!!」

皆に言われるまでもなく、少年達はそんな申し出を受けるつもりなど全くなかった。

自分達だけであっても、全滅必至なのである。なのに、素人同然である新米の未成年の少女3人を護って、など、Bランクハンターが3人くらいいなければ、到底不可能である。

あからさまな嫌がらせ、妨害行為にカチンと来たマルセラ達であるが、今までにも、こういうことは何度もあった。なので、これくらいで引き下がるつもりは毛頭なかった。

「受けていただけますの? それとも、無関係の方達からの嫌がらせの言葉に 臆(おく) されましたの? オークやオーガ如きで?」

少年達を奮起させようと、わざと煽るような言い方をしたマルセラであるが……。

「……ごめん、無理! オーク1~2頭ならともかく、オーガは絶対に無理!!」

そう叫んで、だっ、と逃げ出した、『果てしなき旅路』のメンバー達。

「え……」

そして、せっかく選んだ獲物に逃げられ、呆然とするマルセラ達。

「嬢ちゃん達、そりゃ無理だ。アイツらを悪く思わないでやってくれ。

アイツらには、せいぜいはぐれオーク1頭がいいとこだ。群れのオークやオーガとなると、全滅か、ひとりふたりが逃げ延びられるかどうか、ってとこだろう。それも、ハンター引退は確実な重傷と、一生引きずる、仲間を死なせたという心の傷を負ってな……。

いくら頑張っても、無理なものは無理なんだよ。

嬢ちゃん達も、少しはハンターのランクと魔物の強さの力関係を調べてからそういうのを持ち掛けてくれや。

アイツらは常識的な判断をして逃げたけど、可愛い女の子の前でカッコ付けようとして受けるような馬鹿もいるだろうからな。

ソイツらも嬢ちゃん達も全滅、って未来が目の前にちらついて、胸くそが悪くなるぜ……」

「え……」

居合わせたハンターのひとりからの忠告に、ぽかんとするマルセラ達。

「……そんな 大事(おおごと) ですの? オークやオーガ数頭程度で……」

自分達の攻撃魔法であれば、一撃。

物理攻撃であっても、Cランクの剣士や槍士であれば、そこそこ戦えるはず。

なので、魔術師3人とバランスが取れた4人パーティの合同であれば、オーク5~6頭、オーガ2~3頭くらい、被害ゼロで片付くはず。

それが『ワンダースリー』にとっての常識なのであるが……。

「どこの高ランクハンターだよ! そんなの、Bランク以上の奴らにしかできねぇよ!」

「「「え……」」」

マルセラ達、愕然。

「オークやオーガは、大抵2~3頭で行動してやがるからな。

オーク3頭なら、うちのパーティと嬢ちゃん達が合同で、嬢ちゃん達全員がかなりの攻撃魔法が使えるというなら、やれないこともない。

だが、オーガ2頭は駄目だ。

たとえ倒せたとしても、こっちに怪我人か死人が出る。そんなのは受けられないだろうが……」

「「「えええええっ!」」」

あまりにも予想外の説明に、驚く『ワンダースリー』の3人。

「……まぁ、使えますけどね、かなりの攻撃魔法を、3人共……」

「「「「「「使えるんかいっ!!」」」」」」

居合わせたみんなに突っ込まれたが、それはスルーする『ワンダースリー』。

「……でも、オークやオーガは、巣の近くでもない限り、大抵は単独行動なのではありませんか?」

オリアーナが、不思議そうにそう尋ねたが……。

「いや、そんなことはないぞ。

……う~ん、お前達、狩りに出る前にここの2階で魔物についての勉強をしろ!

いくら攻撃魔法が使えたって、何も知らないんじゃ、初日で全滅するぞ。 角ウサギ(ホーンラビット) の角で胸を貫かれたり、顔に貼り付いたスライムに鼻と口を塞がれて窒息したりして。

5~6歳の子供でも、油断を衝けば屈強な兵士を殺せるんだ。低ランクの魔物でも、油断したり舐めて掛かれば殺されるぞ」

「「「……」」」

確かに、その忠告は正しいだろう。

しかし、『ワンダースリー』は新規登録したばかりなのでFランクなだけである。

本当は、全般的にはCランク下位、攻撃能力だけであればBランク上位くらいの能力があった。

……だが、マルセラ達がそれを口にすることはない。

どうせ信じてはもらえないであろうし、信じられたら信じられたで、色々と面倒なことになる。

また、敵は油断させておくべきであり、余計な情報は与えない方がいい。

大容量の収納魔法のことを隠さずに使用する場合には、特に。

「「「…………」」」

何だか、自分達の経験や常識に反する話を聞かされ、わけが分からず困惑するマルセラ達。

話の基準となるものが全く異なるため、理解も擦り合わせもできない。

マルセラ達がこの辺りの魔物について正しく認識しない限り、どうしようもなかった。

「……分かりましたわ。2階で勉強させていただきますわ」

ここのハンターに、2階で勉強しろと言われたのである。

ならば、そうすればここのハンター達が魔物達に対してなぜ、どれくらい脅威であると考えているのかが分かるはずであった。

このあたり、マルセラ達は理性的に判断するよう心掛けており、変に反発したりはしない。

ベテランや先輩の意見や忠告は、真剣に受け止める。

……それに従うかどうかは、また別問題であるが、今回は有益なアドバイスであると判断したようであった。

「……お、おぅ……」

普通、自分の力を過信している若者は、おっさんからの忠告など無視するものである。

なので、おそらくムキになって反発するだろうと思っていたのに素直に忠告を聞き入れたマルセラに、少し戸惑った様子の先輩ハンター。

しかし、若者を、それも可愛い少女の魔術師という貴重な宝を無為に死なせることを回避できたとなれば。しかも、それが自分の忠告のおかげで、となると、悪い気はしない。

『コイツらは、俺が育てた!』というやつである。

老害扱いされて嫌われるだけなのを承知で憎まれ役を買って出ての、この結果。

嬉しくないはずがなかった。

「……まぁ、困ったり分からないことがあったりすれば、何でも聞いてくれや……」

そして、『ワンダースリー』が2階へと移動した後、そのハンターは『攻撃魔法が使える、貴族の美少女魔術師トリオ』争奪戦で大きくリードできたことを褒め称えるパーティメンバー達から背中をどやされ、他のハンター達からは怖い眼で睨み付けられるのであった……。

* *

「何ですの、これは!」

ギルド支部の2階で新人用の資料を読んでいたマルセラが、思わず声を上げた。

「推奨戦力、 オーク3頭一組(スリーオークセル) に対し、Cランクハンター10人以上……」

「Cランク3人でオーク1頭を抑え、余剰人員で急所を、ということでしょうか?

とにかく、これが意味することは……」

「「「オーク1頭を怪我することなく倒すには、Cランクハンターが3人以上必要、ということ……」」」

「弱すぎますわ、ここのハンター達!」

「「しいぃ〜〜っ!!」」

慌てて、人差し指を口に当て、マルセラに黙るよう指示するモニカとオリアーナ。

いくら人が少ないとはいえ、2階も無人だというわけではない。担当のギルド職員と、数人の地元ハンター達がいるのである。

そしてマルセラの言葉はしっかりと皆の耳に届き、怖い顔で睨まれた。

「……悪かったですわ……」

さすがに、今のは失言が過ぎた。

それを自覚し、素直に謝るマルセラ。

他のハンターや職員達も、自分達の力を過信した新人が勘違いすることには慣れているため、別に本気で怒ったわけではなさそうであった。

しかし、何も態度に表さずにスルーしては新人への教育上良くないので、一応怒ってみせただけのようである。

普通は、それでも『何だよ、文句でもあるのかよ!』とか言って突っ掛かってくる若者も決して少なくはない中、ちゃんと反省して謝罪するというのは、まだマシな方であった。

……しかも、相手は可愛い少女である。

皆、右手首だけを少し動かし、謝罪を受け入れたということを示した。

結局、どの業界においても、美人と美少女はお得なのであった……。

「……では、このあたりのCランクハンターだと、私達の国とは違い、オーク1頭を討伐するのに数人掛かりでないと駄目だと……」

「マルセラ様、さっきのよりは幾分マシですけど、そんなに変わりませんよっ!」