軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

574 塩漬けの依頼 7

無限の肉製。

肩を叩けば、お肉がひとつ。

打ち出の小槌が、自分達の群れのボスに忠誠を誓った。(誓ってない。)

もう、群れの全ての狼が大はしゃぎである。

洞穴の外で見張りをしていた狼達も全て戻ってきて、大宴会。

……狼はお酒を飲まないし、酔って説教話をすることもないため、その行動の全ては、ただひたすら『喰うこと』に集中された。

そのため、さすがのマイルもそんなに膨大な量のブルーレアオーガ肉を用意していたわけではないので、品切れ。

いったん洞穴の外へ出て、アイテムボックスから取り出した 生(・) のオーガやオークを、レーナが火魔法で外側だけを軽く 炙(あぶ) り、 急遽(きゅうきょ) 増産することとなった。

……洞穴から出たのは、あんな場所で火魔法を使うと酸欠で死んでしまうからである。

マイルがそう言うまでもなく、レーナとポーリンもそのことは知っていた。火魔法が使える魔術師の常識らしい。

メーヴィスも、『魔法を使った戦術』の勉強で、知っていた模様。

魔物の肉は、売るほどある。

あの、『アルバーン帝国絶対防衛戦』が終わった後、膨大な量の魔物の死体を見て、その大半が肉や素材を利用できることなく腐り、あの荒野が病原菌や寄生虫の巣窟となることを危惧したマイルが、そのかなりの量をアイテムボックスに収納したのである。

……主に、美味しいものとか、高く売れそうなものを中心として……。

なので、食肉としてどこでも確実に売れるオークやオーガだけでなく、ヒッポグリフやマンティコア、地竜、ワイバーン等を始めとして、様々な種類の、膨大な数の魔物がマイルのアイテムボックスに収納されているのであった。

あの戦いでは狩らなかった新種の 角ウサギ(ホーンラビット) も、その後、暇な時にかなりの数を狩っている。

新種は肉に歯応えがあるかも、とか、旨味が増しているかも、とか考えたマイルが、研究や調理の実験のため、大量に欲したためである。『魔物料理は、 角ウサギ(ホーンラビット) に始まり、 角ウサギ(ホーンラビット) に終わる』とか言って……。

そのため、魔物の在庫は充分あるが、マイル達はそれらをハンターギルドや商業ギルドで売ることはない。

そんなものを売りまくれば、魔物の間引き数を計算してコントロールしている専門家や研究者達の努力が台無しになってしまう。

……最初に売った、異世界から来たヤツではなく旧大陸の在来種の1頭は、確認作業のためなので、例外である。

また、『ワンダースリー』も、あの時にマイル達に言われて、同じく大量の魔物をアイテムボックスに収納している。

少しずつ売れば一生安泰な数であるが、やはり、真面目にやっている者達に迷惑を掛けないように売り捌くのは難しく、今は『赤き誓い』と同じく、アイテムボックスの肥やしになっている模様である。

とにかくそういうわけで、アイテムボックスの中に無限に近い肉があり、魔法でいくらでも水が出せるマイルがいれば、この群れはいくらでも大きくなれるのであった。

腹一杯肉を喰って満足したのか、狼達は洞窟に戻り、白い狼は最初にいたあたりにちょこんと座った。

……どうやら、そこが定位置であるらしい。

そして……。

ぽんぽん!

「……え?」

ぽんぽん!

マイルの方を見ながら、自分の隣の地面を前脚で軽く叩いた。

「ここに座れ、ってことですかっ! 妾ですか、愛人ですかっ!

……いえ、可愛いもふもふは嫌いじゃないですけど、お肉目当ての政略結婚は嫌ですよ、群れには入りませんよっ!!」

そう怒鳴るマイルに、レーナがひと言。

「……マイル、あんたの生涯ただ一度のプロポーズかもよ? お受けした方がいいんじゃないの?」

「がおお~~ん!!」

吠えるマイル。

「……マイルちゃんなら、狼の群れの中でも、ちゃんとやって行けそうですね」

「うん、私もそう思うよ……」

ポーリンとメーヴィスにトドメを刺され、がっくりと地面に両手をつくマイル。

それを見て、自分達の仲間になる決心をして四つ足で行動することにしたのだと思い、ますます盛り上がる狼達。

……もう、ぐだぐだであった……。

* *

「……とにかく、意思の疎通ができないと、どうにもなりませんよっ!」

「いや、そんなの、最初から分かってたじゃない!」

「いえ、マイルちゃんなら、狼とでも意思疎通ができそうな気がしますけど……」

「ああ、思考レベルが同じくらいだからね」

「うるさいですよっ!」

みんなに言われ放題のマイル、激おこである。

「……それで、どうすればいいかと……」

気を取り直したマイルは、そう言って思案するが、良い方法は思い浮かばない。

「誰か……、いえ、 何か(・・) に通訳を頼んではどうですか?」

「え? ……あ、そうか!」

ポーリンの提案に、なる程、と手をポンと叩くマイル。

ポーリンも、神様の国からやって来た謎の 生物(ナノマシン) のことは、マイルから聞いて知っている。なので、そう提案したのであろう。

しかし……。

(ナノちゃんに通訳してもらうのは、何か、負けたような気がして嫌だしなぁ……。

……そうだ、翻訳魔法を使えば! いちいちナノちゃんに通訳してもらうのではなく、私が狼の言葉をそのまま理解できるように……)

【……無理! 無理ですよっ!

我々が介在して、脳波を解析して通訳することは可能ですが、直接狼の言葉が理解できるようにするなんて、そんなの、マイル様の脳みそを弄ってナノチップを埋め込みでもしない限り、無理ですよ!!

そして造物主様であればともかく、我々には生物の脳みそを弄る権限がありませんし、たとえ権限があったとしても、そんなのできませんよっ!

そんなことをしなくても、普通に、我々が通訳しますよ!】

(うっ……。それは嫌だ……)

いちいちナノマシンに通訳してもらうのも嫌だが、脳みそを弄られたりチップを埋め込まれたりするのは、もっと嫌である。

そして、再び考え込むマイル。

(……そうだ、ナノちゃん以外で、通訳できそうな者を呼べば……)

【え?】

「古竜を呼んで通訳をお願いしましょう!」

「「「えええっ!!」」」

マイルの提案に、驚きの声を上げるレーナ達。

【え~~っっ!!】

そして、悲痛な叫び……マイルにしか聞こえない……を上げる、ナノマシン。

「……また、あんたはそんなとんでもないコトを……」

「古竜って、狼の言葉が喋れるのかい?」

「何だか、不安しかありません……」

そして、大丈夫なのかと、心配そうな3人。

「古竜は、ヒト種と話す時はちゃんとヒト種の言葉を喋っていますけど、他の動物や魔物と話している時は、別にその生物が喋る言葉を使っているわけじゃないらしいのですよ。

あれは、相手の思念波……、相手が考えていることを魔法で直接読み取ったり、自分の考えを送り込んだりしているのです。

でないと、声帯の構造が全く違うのに、色々な生物の聴覚に合わせて発声したりできませんよね。

私達人間も、もし小鳥の言葉が理解できたとしても、あの鳴き声を出せるわけじゃないでしょう?

それに、そもそも、他の動物や魔物達が、私達と普通に喋れる程の複雑な言語を持っているはずがありませんし……。

古竜が人間と話せるのは、 そのように造られた(・・・・・・・・・) からですよ」

「「「なる程!」」」

そう、古竜は『造られた時』に人間の言葉が発声できるよう声帯の構造を調整されたが、別に他の生物とも喋れるような万能のものではなかった。

そのあたりのことは、マイルは以前ナノマシンから聞いていた。

そして……。

【えええええええええ~~っっ!!】

せっかくの自分達の出番が古竜に掻っ攫われそうなこの状況に、悲痛な叫びを上げる、ナノマシンであった……。