軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

563 魔物はとても強い

「どうしましょうか……」

この辺りで魔物が強いのは、身体能力ではなく頭の良さが原因。

独自の調査の結果、そういう結論に達した『赤き誓い』であるが……。

「ギルドマスターには、言っても無駄ですよねぇ。ここの人達にとっては、あれが普通なのでしょうから、『角ウサギに 嵌(は) められた!』とか『オークやオーガが 二人一組(ツーマンセル) で!』とか言っても、それがどうした、って言われるだけでしょうから……」

「ああ、それが普通なのだろうからねぇ……。それだと、異常だとは認識されないよね……」

「「…………」」

マイルとメーヴィスの指摘に、黙り込むレーナとポーリン。

「でも、どうしてですか? なぜこの辺りの魔物はあんなに頭がいいのでしょうか。

それと、 いつからそうなのか(・・・・・・・・・) ……」

「「「…………」」」

ポーリンの疑問に、誰も答えることができなかった。

そして、マイルがポツリと……。

「大昔に異次元世界からやって来た魔物が世界中に広がり、ヌルいこっちの世界で退化し弱体化したらしい、というのは想像が付きますし、事実、旧大陸の魔物と今回侵攻してきた魔物とは、身体的な能力がはっきりと異なっていましたし、……そして、知能はあまり変わりませんでした。

逆に、ヒト種との戦いがあるこっちの世界の魔物の方が少し知恵を付けているくらいですよね。

ですから、新大陸の魔物が 昔の能力を(・・・・・) 維持している(・・・・・・) 、というのはないと思います。

なので、考えられるのは……」

「こっちに来てから頭が良くなった、ってことね?」

さすがレーナ、理解が早い。

「そして、それはそんなに大昔のことじゃない、と……」

「え? どうしてそんなことが分かるのですか?」

ポーリンの疑問には、メーヴィスが答えた。

「そんなに昔から魔物の頭が良ければ、この大陸のヒト種はとっくに滅びているか、魔物が少ない地域で 細々(ほそぼそ) と生き延びているだけだろうからさ」

「あ、なるほど……」

そう、いくら人間の頭脳には遥かに及ばなくとも、少し頭が良い魔物がたくさん生息していたら、ヒト種は魔物に押され、この大陸での支配権を失っていたであろう。

大きく、強靱な身体。

強大なパワー。

優れた体力。

強い繁殖力。

そして、中には魔法を使う個体も存在する。

そんな魔物達相手に旧大陸ではヒト種が優位に立てているのは、魔物が馬鹿で協調性がないおかげなのである。

なのに、ほんの少しでも魔物達が知恵を付けたら……。

「そして、それは急に起きたことじゃないですよね」

「ああ……」

マイルとメーヴィスが言う通り、もしそれが急に起きたことであれば、当然ながら大騒ぎになったはずであり、そのことがギルドマスターから語られないはずがなかった。

なので、つまりそれは、何十年、何百年という年月をかけて徐々に進み、誰もその変化に気付かなかったのであろう。

そして今もなお、魔物達は少しずつ頭が良くなっているという可能性が……。

「「「「…………」」」」

それに気付いたのか、深刻そうな顔で黙り込む4人。

「……でもまぁ、そう心配することはないですよ!

今まで何とかやってきたのですから、これからも数年や数十年でどうこう、ということはないですよね。

それに、魔物が進化し頭が良くなっても、私達ヒト種もまた、進化し頭が良くなりますからね。

今よりも高性能で優れた武器防具、強固な防壁、そして人口が増えて、ヒト種が魔物を圧倒できるようになりますよ!」

「そうだね。私達はそれを……、未来のヒト種を信じて、今を精一杯生きればいいんじゃないかな」

「……そう言われれば、そうよねぇ。別に、私達が何でもかんでも気にしなくても、それはこの大陸や世界中の、そして未来のヒト種全体に任せりゃいいのよね。私達は、そのうちのひとりとして、自分達が成すべきことだけやってりゃいいのよね。

それに、私達にどうこうできるようなことじゃないし……」

「はい。とりあえずは、当初の予定通り、のんびり行きましょう!」

「「「「おおっ!」」」」

魔物の強さのことについては、一旦保留にすることにした、『赤き誓い』一同。

「……それと、のんびりやるのはいいのですけど、やはりFランクというのは、ちょっと……。

それじゃあ、常時依頼で勝手に狩るのはともかく、通常依頼として討伐系を受けるのは不可能ですよね? 勿論、護衛依頼なんて論外です。

ということは、遠出する時に護衛依頼を受けて移動と稼ぎを同時に、とか、襲われた時には助力するという条件で 無料(ただ) で馬車に乗せてもらって、とかいうのが……」

「できないですね……。そしてそれだと、王都を目指すのに、全部歩きか、お金を払って乗合馬車に乗るしか……」

「「「「…………」」」」

みんな、そんなにお金には困っていないくせに、お金を払って馬車に乗る、ということに、強い抵抗を感じていた。

……そう、今まで馬車は『護衛依頼を受け、お金を貰って乗る』というものであったため、理性では『お金を払って乗ればいいじゃないか』と思っていても、なぜかそれを素直に納得できないのである。

人間、誰しもそういうものである。

「……何か、いい方法を考えましょう。それまでは、しばらくここに滞在する、ということで……」

ポーリンの提案に、こくこくと頷くレーナ達であった。

「……あ!」

「な、何よ、急に……」

突然声を上げたマイルに驚かされて、少々不機嫌になったレーナ。

しかし、それに続くマイルの言葉に固まった。

「レーナさんとポーリンさんの、収納魔法の適性確認をするのを忘れてました……」

「「あ!!」」

今度は、レーナとポーリンが声を上げた。

「そ、そんな超重要なことを忘れていたなんて……。あああああ、商人失格です!」

「ボケてたわ……。ハンターにとって、収納魔法を会得することがどれだけ大きな事か、あれだけ身に染みて分かっていたというのに、一番に確認すべきそのことを忘れるなんて……」

自分で自分が信じられない、というような顔の、ポーリンとレーナ。

「し、仕方ないですよ。新天地にやって来て、バタバタしていましたし、立て続けに色々なことがありましたから……。

とりあえず、明日にでも確認しましょう。

いくら収納魔法とはいえ、宿の中で魔法の実験をするのは危険ですから……」

それは正論であるため、ポーリンとレーナも、渋々頷いた。

本当は、今すぐにでも試したかったのであろう。

しかし、亜空間を制御するという高位魔法を失敗した時に何が起こるか分からない。

ふたりは優れた魔術師であるからこそ、マイルの指摘に反論することができなかったのであろう。

「そんな顔をしないでくださいよ! 怖いですよっ!

とにかく、明日、近くの森に行って確認作業をしましょうよ」

「「…………」」

レーナとポーリンは、明日のことを考えると、今夜はとても眠れそうになかった。