軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

560 追 跡 4

「突然の訪問、申し訳ございません。私、ブランデル王国第三王女のモレーナと申します……」

「「「「「「…………」」」」」」

古竜の背中から降りてきた4人の少女を、とりあえず会議室へと案内した国王達。

古竜に『友』と紹介された人間を、謁見の間とかに案内して壇上の玉座から見下ろして話をするなどという真似が、できるはずがない。

あの古竜は、『少々のことでは不快には思わぬ』と言ったのである。

……ということは、『少々』でなければ不快に思う、ということであった。

プライドの高い古竜が、自分が『友』と呼ぶ人間が他の 下等生物(にんげん) に格下扱いされた場合、それを『少々のこと』の範疇だと思ってくれるのかどうか。

……不明なことであれば、余計な危険を冒すべきではない。

それも、国の運命が掛かっているならば、特に。

なので、対等な立場として扱うべく、上から見下ろす形となる謁見の間ではなく、ここ、会議室へと案内したのであった。

会議室とはいっても、別に長机とパイプ椅子とかがある殺風景な部屋ではない。

他国の要人と会議をするための部屋であり、椅子も机も、そして調度類も全て最上級の品々である。そして『会議をする場』であるため、全ての席が上下関係のない並べ方となっており、このような場合に使うには最適の部屋なのであった。

いくら失礼のないようもてなすべき相手ではあっても、さすがに正体の分からない小娘4人を国王より上の立場として扱うわけにはいかないため、他の選択肢はなかった。

「この 度(たび) お伺いしましたのは、王族の一員としまして、この国の王族の方との交流を、と考えまして……」

相手側が固まったまま何も言わないため、仕方なく言葉を続けたモレーナ王女であるが、ここで、国王が疑問の声を上げた。

「……王族との交流?」

そう。普通であれば、ここは『国同士の交流』とかいう言い方になるはずである。

それに、外交官ではなく、いきなりの王女殿下の訪問。同行者は、護衛の少女が、僅か3名。

(いや、古竜に乗っていて、護衛も何もないか。それに、古竜がただの兵士などを背に乗せるはずがない。おそらくあの古竜は、可愛い少女しか自分の背には乗せないのであろう……)

今までそんな話は聞いたことがなかったが、そういうことがないと断言できる根拠もない。

なので、そんなことを考える国王。

地球にも、穢れを知らない乙女しか背に乗せないという幻獣の話がある。そういう発想が湧いても、何の不思議もなかった。

それに、それならば外交の使者として来たのが外交官とかではなく第3王女であったことの説明が付く。

普通、少女の外交官とかはいないし、少女であっても国の代表が務まるのは、王族だけである。

しかし……。

「国同士の交流ではないのですか? 王族との交流というのは……」

問題は、そこである。

ただの言い回しの問題なのか、それとも、何か別の意図があるのか?

「あ、今回私が来たのは、別に国の代表としてではありません。私個人としての旅行であり、この国の同年代の王族の女の子とお友達になれればいいなぁ、と思っただけでして……。

なので、両親にはこの旅のことは話していません」

「「「「「「何じゃ、そりゃあああ~~!!」」」」」」

* *

「……というわけですの……」

「「「「「「…………」」」」」」

思い切りフェイクを混ぜて、事情説明をしたモレーナ王女。

マルセラ達は、王女の護衛という立場であるため、席には着かずモレーナ王女の後方に立って警護の態勢であるが、王宮前の広場に古竜がいるというのに、一行に手出しする者などいるはずがない。

「では、モレーナ王女は『第三王女』としての立場で、国の代表として正式に我が国を訪問されたわけではないと?」

「はい。古竜ケラゴン様の友人、ひとりのただの普通の人間として、同じような立場の同世代のお友達を作りたくて……。

私、うちの国や周辺国では少し有名になりすぎまして、普通に、対等にお話ししてくれる友人がなかなか作れませんの……」

((((((古竜の友人がいて、ただの普通の人間であるものかあああぁ~~!!))))))

国王や大臣達が、心の中で絶叫していた。そして……。

((((((『少し』か? 本当に、有名になったのは『少し』だけなのか?))))))

「……ま、まぁ、それも無理からぬことでしょうな……。で、我が国を個人的に訪問された目的は……」

「はい、この国の王女殿下とお友達になりたくて……。

というか、おられますか、王女殿下。

もしこの国には王女殿下がおられないなら、他国へ行こうかと……」

「おります! おりますとも! 4人おりますっ!!」

必死でそう叫ぶ、国王。

無理もない。古竜に超強力なコネがある異国の王女に、隣国やら敵対国の王女と仲良くなられては大変である。それを阻止するためであれば、 愛娘(まなむすめ) を 古竜(ドラゴン) の 顎(あぎと) の前に差し出すことも、躊躇わない。

ひとりの父親としては最低の行為であっても、国王としての義務の前には、それは押し潰さねばならない感情であった。

それが王族、国王というものである。

高貴な身分には、それに釣り合うだけの義務と献身が求められる。

王族や貴族も、そう楽な稼業ではないのである。

モレーナ王女一行は、国王に娘がいるかどうかどころか、この国の名さえまだ知らなかった。

しかし、国王というものは後継者問題を解消するために正妃の他にも側室を持つものであり、子供の死亡率が非常に高いこのような文明レベルの国においては、王子を3~4人くらい、もしくはそれ以上生ませるのが普通である。

ならば確率的に王女もそれに近い数がいて当然であるので、かなりの高確率で王女がいるものと判断していた。

それに、もし王女がいなければ、公爵家や侯爵家の娘でも構わなかった。

……但し、おかしなちょっかいを出されたくはないので、王子とかは避けるつもりであった。

「では、後でその方々とのお茶会を……」

「分かりました! すぐに用意させます!!」

国王の眼が、血走っている。

そして、しばらく話した後、モレーナ王女一行は大急ぎで準備されたお茶会の席へと案内された。

出席者は、モレーナ王女の他には、この国の王女4人と、護衛という名目の『ワンダースリー』の3人。他には、給仕役のメイド達だけである。

国側からは、護衛は付けられなかった。

モレーナ王女側の護衛は、護衛とは言っても未成年の少女達なので、武力により王女を護るというよりは、お付きの世話係のようなものだとみなされたのかもしれない。

それに対してゴツい男の護衛を付けるのは無粋だと判断したのか、それとも王宮内で護衛を付けるということは相手を信用していないという侮辱行為になると考えたか……。

とにかく、モレーナ王女側は『ワンダースリー』、四王女側はメイド達のみ。

……もしかすると、このメイド達はある程度の戦闘能力がある可能性もある。なので、メイド達が護衛役を兼ねている可能性もあった。

そして、人数合わせのため、という理由をつけてマルセラ達も会話に加わり、4対4、8人での歓談が始まったのであった。

* *

1時間半くらいの歓談の後、お茶会は何事もなく無事終了した。

そして、本日は王宮に泊めてもらうことになり、客室へと案内された一行。

「……3番目かしら?」

「3番目ですね……」

「1番目は、ちょっと年上過ぎますし、野望を 抱(いだ) きそうな感じですよねぇ……」

「2番目も、少し不安を感じました」

「4番目も可愛くていい感じでしたけど、ちょっと幼すぎますからねぇ……」

「消去法で、3番目ですかねぇ……」

モレーナ王女の選択に、全員が賛成した。