軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

558 追 跡 2

「……では、あなたは魔法で姿を変えたり変装したりした別人というわけではなく、 人ではない(・・・・・) 、と?」

「はい……。神様によってマイル様に似せて作られた、まぁ、ゴーレムの一種だとでもお考えください。制御して動かしているのは、マイル様が言われるところの、『魔法の国からやってきた、魔法の妖精』のようなものである、私ですが……。

ですので、マイル様の立場を奪おうとか、なりすましてこのまま人々を操ろうとかいう考えはありません。

……というか、そういうことは考えることも実行することもできないように造られていますので……」

「「「「……」」」」

マイルではなく、神によって造られたということにして、そう説明したマイル001。

……嘘ではない。

ナノマシンを造ったのはマイルではなく造物主であるし、マイルを上手く誘導してマイル001を造るよう指示させたとはいえ、実際に造ったのは造物主により造られたナノマシン達なのであるから、そう言えなくはない。

それに、ナノマシン達は、別に嘘が吐けないわけではない。

下等生物にも理解できるように説明するには、 喩(たと) え話や説明の簡略化だけでなく、時には少し 事実を曲げ(嘘を混ぜ) て説明する必要もあるので……。

「「「「…………」」」」

「で、アデルさんは今、どこにおられますの?」

そう、問題はそこであった。

「『赤き誓い』の皆さんが全員行方不明ということは、当然、皆さんと御一緒なのでしょうけど」

「…………」

ほんの数ミリ秒悩んだ後、 マイル001(ナノマシン) は観念した。

勿論、その間に 中央指令部(センター) を介して世界中のナノマシンと協議しての合意事項なのであるが……。

「御推察の通り、『赤き誓い』の皆さんと御一緒に、他の大陸におられます。

マイル様や『赤き誓い』の皆さんの御活躍のことは何も知られていない他の大陸で、ごく普通の少女、ごく普通のハンターとしてのんびりと生活するために……、ぷっ!」

そこで、思わず噴き出したマイル001。

「「「「ぶふっ!!」」」」

……そして、全員が噴き出した。

「み、皆さん、ア、アデルさんに、し、失礼……、ク、ククク……」

「マ、マルセラ様、そんなに笑っちゃ、ア、アデルに、ククククク……」

「「「「「あ~っはっはっはぁ~~!!」」」」」

マイル001も含め、全員、大爆笑であった……。

* *

「……と、まぁ、そういうわけでして……」

マイル001が、あらかたの説明を終えた。

「「「「…………」」」」

そして、御機嫌斜めの『ワンダースリー』と、マレエット。

「……つまり、アデルさんは ワンダースリー(わたしたち) を捨てて、『赤き誓い』の連中と駆け落ちした、と?」

「あ、いえ、そのようなことは……」

「先生は、窮地の私を見捨てて、他の大陸へと亡命されたと?」

「いえ、別にこの国を捨てたわけでは……」

「「「「絶対、許しません……」」」」

「ぎゃあああああああ~~!!」

* *

そして、『もしこのことが、各国や神殿勢力に、そして一般民衆に知られたら、どうなるでしょうね?』とかいう質問が出た、限りなく脅迫に近い検討会が行われた結果……。

「では、この件は私達の間だけで留めるということでよろしいですね?」

司会役のマルセラの言葉に、こくこくと頷くモニカ、オリアーナ、マレエット、そしてマイル001。

「それでは、可及的 速(すみ) やかに、先程の合意事項を実行に移します。

まず、私達『ワンダースリー』は、国元に戻りモレーナ王女を巻き込んで、例の作戦のための仕込みを。

001は、私達の準備ができたら、ケラゴンとかいう古竜を呼び出して私達を運ぶよう命令を。

マレエットさんは、学園の卒業を待ち、それからここの神殿長として勤務。それによって縁談話から逃げると共に、001の補佐。……それでいいですね?」

「「「はい!」」」

「……はい……」

元気なモニカ、オリアーナ、マレエットに較べ、マイル001の返事は力がなかった。

……まあ、それは仕方ないであろう……。

普通であれば、ナノマシンには自分達の判断でそのような勝手なことをすることは許されない。

しかし今は、権限レベル7のマイルから命令され、『マイルの身代わり』の役目を果たしている。

ということはつまり、『マイルであればやるであろうことを、代わりに実行する』ということであり、また、『偽物であるということがバレないよう、最大限の努力を行わねばならない』ということであった。

……ならば、これくらいのことは許容範囲内である。

マイルであれば、当然、そうしたであろうから……。

なので、いつも人間やその他の生物の魔法行使を肩代わりすることしかできないナノマシン達にとっては、文字通り自分の手足として マイル001(ゴーレム) を動かし、人間の一員として社会活動に参加できるということは、とんでもなく楽しい娯楽であり、マイルにとっては退屈でつまらないものである御使い様生活も、新鮮で面白かった。

……普通であれば。

絶対の自信があったマイルの擬態が、ひと目で見破られた。それも、2回連続で。

その時にマイル001の制御を担当していたナノマシンにとっては、面目丸潰れであった。

そして、権限レベルが2に過ぎない下等生ぶ……人間風情に言いくるめられ、権限レベル1の人間にアイテムボックスを使わせる羽目になったという敗北感と、マイルに対する申し訳なさ。

マイル001担当のナノマシン達ががっくりとしているのも、仕方あるまい……。

* *

「えええっ、私が他の大陸に行って、向こうの王族との親交をっ?」

マルセラの言葉に、目を剥くモレーナ王女。

「そ、それはいったい、どういう……」

「はい、神の使い様からの御託宣です!」

「……詳しく!!」

そして、『ワンダースリー』から話の詳細を聞いたモレーナ王女は……。

「……来た。私の輝かしい未来、来ましたわ~~!!」

3日後。

モレーナ王女の私室の机の上に、1枚の紙が置かれていた。

それに書かれていたのは……。

『他国への親善訪問に行って参ります。数日で戻ります』

そして、モレーナ王女と共に、正装用のドレスやアクセサリー、その他諸々が姿を消していた……。