軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

556 検 証 2

「「「「ぜえぜえぜえぜえぜえ……」」」」

「な、何だったのよ、ア、アレは……」

何とか角ウサギの群れから逃げ切り、息を切らしたまま、ようやく声を出したレーナ。

「な、何だと言われても、角ウサギの群れ、としか……」

それに答える、メーヴィス。

「その前に、私とマイルちゃんに、何か言うことがあるでしょう!」

激おこのポーリン。

「「ごめんなさい……」」

そして、素直に謝るレーナとメーヴィス。

そう、先程のは、トレイン行為……大量のモンスターのヘイトを取り、連れまわす行為である。

しかもそれを他者がいるところへ連れてくるという、最低最悪の行為であった。

更に、無警告で自分達だけ走り去るという、普通のパーティであれば信頼関係にヒビが入ってもおかしくない行為。

相手が角ウサギであったから。

いざとなれば、みんなが本気になればどうとでもなるから。

そんな甘い考えでやっていいことではない。

もしも相手がオーガの群れであったなら。

もしもマイルが普通のCランクハンターであったなら。

地球では、たとえ銃に弾が込められていないと分かっていても、戦闘時以外は決して銃口を人間に向けてはならないという厳しい 規則(ルール) がある。

世の中、間違いというものはいつでも生起し得る。たとえ弾倉が取り外されていても、銃の薬室内に弾が残っている可能性がある。その場合、いつ暴発してもおかしくない。

それと同じで、いくら相手が角ウサギであろうが、そしていくら仲間が強かろうが、世の中、やっていいことと悪いことがある。

……そして、ポーリンは体力がなく、足が遅く、近接戦闘能力があまりなく、そして紙装甲であった。もし数十匹の角ウサギの一斉攻撃を受ければ、魔法で相手を全滅させきれずに何匹かの攻撃を受け、致命傷を負った可能性も皆無ではないのである。

それは、本気で怒るのも無理はなかった。

「済まない。騎士として、あるまじき行為だった……」

「ごめんなさい……」

「…………」

メーヴィスとレーナのあまりのヘコみ具合に、それ以上責めるのはやめたポーリンであるが、さすがに『もういいです』とか『許します』とかいう言葉を掛ける気にはならなかったのか、ただ黙り込んだだけであった。

「そ、それにしても、いったい何があったんですか!」

珍しく、マイルが気を利かせて話題を変えた。

そして、助かった、とばかりに、それに食い付くメーヴィス。

レーナは、このメンバーの中で一番ハンター歴が長く指導的立場だという自負があっただけに、まだ立ち直れていない様子である。

「あ、ああ、それが、怪我か何かで逃げ足が遅い角ウサギを追いかけていたら、……大量の角ウサギに待ち伏せされていて……」

「逆襲された、ってわけですか……」

「「…………」」

* *

気を取り直して、検証作業を再開した、『赤き誓い』。

「どうして、ゴブリンが剣や槍を持っているのよ!」

「倒したハンターが持っていた武器を奪って使っているのでしょうね」

「そんなこと、言われなくても分かってるわよっ!」

* *

「どうしてオークが、 三人一組(スリーマンセル) で戦うのですか!」

* *

「なぜオーガが 二人一組(ツーマンセル) で戦うのですかっ! ロッテですか、お口の恋人ですかっっ!!」

* *

そして、体力はともかく、精神的にかなり疲れ、げっそりとした顔で街へと戻った『赤き誓い』。

「「「「…………」」」」

無言でギルド支部に入り、納品窓口で狩った獲物を換金し、黙って宿へと向かった。

その様子に、他のハンターやギルド職員達も、『赤き誓い』に声を掛けることはなかった。

* *

とりあえず夕食を摂り、その後、部屋でパーティ会議を開いた『赤き誓い』。

「何なのよ……」

「あり得ないよ、あんなの……」

「おかしいですよ……」

「でも、事実は認めなきゃ……」

「「「「魔物達の頭が、良すぎる!!」」」」

そう、なぜか全ての魔物達が、非常に 賢(かしこ) かったのである。

わざと怪我をしているかのように振る舞う 囮(おとり) を使い、待ち伏せをする角ウサギ。

木の棒とかではなく、人間から奪った武器を使うゴブリン。

三人一組(スリーマンセル) や、 二人一組(ツーマンセル) のロッテ戦法を使うオークやオーガ。

攻撃力や防御力に優れた魔物に人間が勝てるのは、魔物達が馬鹿であり、戦術も連携もなくバラバラで力任せの攻撃しかできないからである。

……それが、知恵を付け、連携し、戦術を使いこなすとなれば……。

しかも、人間の武器を奪い、使用するとなれば……。

「身体が旧大陸の魔物達と大差なくても……」

「普通のハンター達が苦戦するはずだよ……」

「まぁ、私達ならば油断しなきゃ問題はないですけど……」

「ここの、Cランク以下のハンター達は……」

『引退する者や負傷者、死亡者等も増えて、ジリ貧なんだよ』

4人の脳裏に、ギルドマスターの言葉が 過(よ) ぎる。

ハンターの減少。

それは魔物の間引きが不十分になることを意味し、その結果として起きることは……。

((((スタンピードの発生……))))

問題は、簡単ではなかった。

もしそれがここだけの話であれば、『赤き誓い』がしばらく滞在して上位の魔物を狩り、間引きすれば済む。そのうちまた増えるにしても、それまでに新人を育成するなり軍に 出張(でば) ってもらうなり、増加速度を遅らせる手段を講じればいい。

しかし……。

もし、頭のいい魔物というのが、ここだけの存在ではなかったら?

もし、この大陸中の魔物が、全て頭が良かったら?

もし、それが繁殖し、世界中に広がったら?

「「「「ヤバい……」」」」

新天地で楽しくやるはずが、何だか雲行きが怪しくなってきた。

そう思い、黙り込む4人であった……。